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192-衆-本会議-8号 平成28年11月01日

○とかしきなおみ君 自由民主党のとかしきなおみです。(拍手)
 質問に入る前に、まず、改めまして、三笠宮崇仁親王殿下が薨去されましたことに、謹んで哀悼の意を申し上げます。
 さて、私は、年金制度改革法案について、自由民主党・無所属の会を代表して質問させていただきます。
 我が国の年金制度は、若い世代の皆様に保険料を払っていただき、それに税金部分をあわせて高齢者世代を支えるという助け合いの仕組み、賦課方式で成り立っています。
 戦後、今の高齢者の方は、御両親を自宅で支えていました。日本は昔からこういった世代間の支え合いを大切にしてきた国であります。その後、経済が発展していく中で、支え合いの形は変わり、社会全体で現役世代が高齢世代を支える仕組みとなりました。今の年金制度は、この世代間の支え合いを体現したものであります。
 年金は、五十年、百年という非常に長い期間で運営する制度です。これを将来世代に責任を持って引き継ぐためには、誰からも信頼され、支持される、安定した年金制度であるべきです。その観点から質問をいたします。
 最初に、先日、ある新聞に、年金の水準を示す物差しである所得代替率の記事が載っておりました。政府試算では所得代替率が高く算出されているといった内容でありましたが、その後、訂正記事が掲載をされました。
 国民の皆様の中には誤解をしている方もいらっしゃると思います。そこで、正確なところをお伝えすべく質問いたします。
 平成十六年の改正法により、この年金の水準の計算方法と、その計算方法に基づく水準は将来にわたって五〇%を保障すること、これを少なくとも五年に一度は検証するということを政府は決めたわけであります。つまり、国会が決めた計算方法と目標に従って政府は計算し、目標が達成できるか検証しているわけです。
 直近の検証作業は平成二十六年に行われたと承知していますが、総理からその結果を改めてお知らせください。
 次に、短時間労働者の皆様の厚生年金への適用拡大についてお尋ねします。
 ことしの十月から、既に一定の条件に当てはまる大企業の短時間労働者の皆様が厚生年金の対象となっており、これにより将来の年金水準も大きく改善します。この適用拡大は、まさに将来の所得確保につながるものであり、現役世代の安心につながるものであると評価します。
 一方で、百六万円の壁といった言葉が飛び交っております。人口が減少する中でも社会全体の活力を維持していくためには、働きたい人が働ける社会を目指す必要があります。そうした観点からも、一度適用になれば年収の上限を気にせず働ける被用者保険の適用拡大は重要です。
 今回の適用拡大の方向性について、厚生労働大臣の見解をお聞かせください。
 次に、年金額改定ルールの見直しについて、国民の皆様に正確にお伝えするという観点から質問をいたします。
 少子高齢化が進む中で、将来の年金制度はどうなるのだろうか、自分は年金をもらえるのだろうかという不安の言葉も聞かれます。このような不安に応えるためにも、老後の柱となる年金制度をどの世代にも安心できる仕組みとすることが大切です。
 その観点から、今回の改正は、責任ある与党として、若い世代に対してもしっかり対応していると考えています。今回の改革法案は、世代間の公平を確保し将来の年金水準が下がらないようにすることで、若い世代の信頼を醸成するためのものであり、将来年金水準確保法案であります。しかし、一部の野党は年金カット法案だとレッテル張りをしています。
 ところが、驚くことに、批判ばかりを繰り返している旧民主党が政権与党のときに示した年金制度案は、賃金が物価よりも低下した場合には賃金に連動して引き下げられるということになっており、まさに、今回政府が提案しているデフレ経済下における年金改定の方法を先取りしてくださったと言えるのではないでしょうか。
 加えて申し上げますと、その年金制度案では、年金額を賃金に連動して引き下げる場合には、賃金のマイナス分に加えて、十五歳から六十四歳までの人口減少に一定の係数を乗じた分をさらに引き下げるという、政府が示している年金額改定ルールよりもさらに強烈に下げる仕組みとなっております。
 今回政府が提案している法案を年金カット法案と民進党の方はおっしゃいますけれども、民主党時代に提案した案の方がはるかに年金カットとなるわけであります。この矛盾にどのように民進党の方々がお答えになるのか、私はぜひ伺いたいものであります。
 そもそも、安倍政権では、今までに実現できなかった規模とレベルの賃金上昇を実現させています。にもかかわらず、一部の野党は、仮定の話を持ち出して、あたかもすぐ年金が減るといった誤解を与えるような数字を提示しています。
 これを聞いた若い人たちはどう思うでしょうか。やはり年金制度は信頼できないといった、誤った情報に基づいて判断してしまうことがあるかもしれません。年金を支える若い世代の方の信頼こそが年金制度を安定させる上で必要であり、このような誤った事実を喧伝するような議論は直ちにやめて、冷静な議論をするべきであります。
 そこで、厚生労働大臣に伺います。
 今回の年金改革法案が、世代間の公平を確保し、若い世代の安心と年金制度への信頼も確保するものであることを御説明ください。
 その一方で、年金を受給している世代への目配りも重要です。若い世代が支払った保険料が現在の制度を支え、逆に、高齢者世代の御理解のもと、若い世代の安心や信頼が生まれると思います。
 今の現役世代の賃金に応じて改定するという年金額改定ルールの見直しは、低所得、低年金の方に最大六万円の福祉的給付を行った後で実施することになっています。これは非常に重要なポイントです。この福祉的給付も含め、年金受給世代の皆様にどのような配慮を政府は行っているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
 次に、年金積立金の運用についてお伺いします。
 ことしの四月から六月までで大きな損失が出ており、国民の中にも不安の声がありますが、これは短期的な評価損であり、自主運用を開始してから十五年間のトータルで見ますと、実に四十兆円の運用益が出ています。しかも、安倍政権になってからは、アベノミクスの成功を受け、二十七・七兆円の運用益となっています。
 年金積立金の運用は、長期の時間軸で見ていくことが原則です。一部の野党は、足元の短期的な運用損だけを取り上げて不安を殊さらにあおるような主張を繰り返していますが、こうした姿勢は到底受け入れられません。
 何よりも重要なことは、短期で上下する運用益を議論するのではなく、国民からお預かりした積立金を適切に運用し、長期的に収益が上げられるよう、GPIFのガバナンス体制をより強化していくことであります。
 そこで、長期的に見て年金積立金の運用状況がどのようになっているのか、また、今回の法案によってGPIFをどのように変革し、国民の安心と信頼を得ていこうとしているのか、厚生大臣に伺います。
 最後に、いま一度申し上げますと、少子高齢化が進む中においても、誰もが安心できる年金制度を将来の世代に引き継いでいくことが大切です。今回の年金改革法案について、その内容がどのように国民の皆さんの信頼を築き、将来世代の年金を確かなものとしていくのか、その全体像と意気込みを改めて総理に伺います。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) とかしきなおみ議員にお答えをいたします。
 平成二十六年財政検証についてお尋ねがありました。
 日本の年金制度は、平成十六年改正において、将来世代の負担を過重にしないため、将来の保険料の上限を固定し、その範囲内で年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入しました。
 これにより、制度を持続可能なものとするとともに、少なくとも五年に一度、人口や経済の長期の前提に基づき、おおむね百年間という長期的な給付と負担の均衡を図るための財政検証を行っています。
 平成二十六年の財政検証においては、日本経済が再生し、高齢者や女性の労働参加が進めば、将来の所得代替率は五〇%を上回ることが確認されています。また、この所得代替率は、法律に規定された方法で適切に計算されています。
 安倍政権は、まさにデフレ脱却、賃金上昇を含む経済の再生や一億総活躍社会に向けて全力で取り組んでまいります。
 なお、御指摘の、所得代替率が高く算出されているという新聞記事については、その後訂正されたものと承知しています。
 年金改革法案の見直しの内容と意義についてのお尋ねがありました。
 現在継続審査中の年金改革法案は、いわば将来の年金水準確保法案であり、中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大、国民年金の産前産後期間の保険料免除、年金額改定ルールの見直しなどを内容としています。
 平成二十六年までは、本来よりも高い水準の年金が支給されていた中で、少子高齢化による人口の構造の変化を踏まえて年金水準を調整するマクロ経済スライドが発動されなかったことにより、今の年金の所得代替率が上昇し、その分、マクロ経済スライドによる調整が長期間になり、結果として、マクロ経済スライドが完了した時点での基礎年金の給付水準が約一割低下しました。
 このため、年金額改定ルールの見直しについては、マクロ経済スライドの調整期間の長期化を防ぎ、将来世代の基礎年金の給付水準を確保するため、マクロ経済スライドの未調整分を先送りせずに、できる限り早期に調整し、賃金に合わせた年金額の改定により、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする見直しを行うこととしたものであります。このような改定ルールの見直しを行うことが責任ある対応であると考えます。
 ただし、年金額改定ルールの見直しに当たっては、低年金の方にも十分配慮します。
 まず、少子高齢化による人口の構造変化を踏まえて年金水準を調整するマクロ経済スライドについては、賃金、物価がプラスのときに発動し、また、マクロ経済スライドによって、前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮の措置は維持します。その上で、未調整分を繰り越して好況のときに調整する仕組みを導入します。
 そして、賃金が下がった際に賃金に合わせて改定する見直しについては、実際の適用は、低年金、低所得の方に対する年最大六万円の福祉的な給付を平成三十一年十月までにスタートした後の平成三十三年度からであります。これによって、年金と相まって、今まで以上に高齢者の生活を支えます。
 もとより、安倍政権では、デフレ脱却、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでいるので、賃金が下がるということを前提としているわけではありません。
 今回の法案を初め、不断の改革に取り組むことで、将来にわたって所得代替率五〇%を確保し、高齢世代も若い世代も安心できる年金制度をしっかり構築していきます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

○国務大臣(塩崎恭久君) とかしきなおみ議員にお答え申し上げます。
 まず、適用拡大の方向性についてのお尋ねがございました。
 短時間労働者の就業調整を防ぎ、労働参加を支援するとともに、所得や年金を確保していくためには、被用者保険の適用拡大を着実に進めていくことが重要でございます。
 この十月から、大企業で働く約二十五万人の短時間労働者を対象に被用者保険が適用されており、さらに、今回提出している法案は、中小企業などで働く約五十万人の短時間労働者についても適用拡大の道を開くものでございます。
 さらなる適用拡大については、この十月の施行から三年以内に検討することが法律で定められており、適用拡大の施行状況、個人の就労実態や企業に与える影響などを見ながら、引き続き取り組んでまいります。
 年金改革法案による信頼確保についてのお尋ねがございました。
 年金は、限られた財源を世代間で配分する分かち合いの仕組みであり、本法案は、世代間の公平を確保し、将来世代の年金水準を確保するためのものです。
 安倍政権は、賃金上昇を含む経済再生に全力で取り組みますが、将来、不測の経済状況が生じて賃金が下がったときにも、将来の基礎年金の水準がこれ以上下がることがないよう、改定ルールを見直すものです。
 この見直しによって、若い世代が将来受け取る年金の水準が確保され、若い世代の年金制度への信頼が高まることで、安心して今の高齢者の年金を支えていただけることになり、年金の持続可能性も高まると考えております。
 年金受給世代の方々への配慮措置についてのお尋ねがございました。
 今回の年金額改定ルールの見直しは、マクロ経済スライドについては、賃金や物価がプラスのときに発動をし、前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮措置を維持し、賃金が下がったときに賃金に合わせて年金額を改定する見直しについては、低所得、低年金の方に最大年六万円の福祉的給付を平成三十一年十月までにスタートさせた後の平成三十三年度から導入をいたします。
 さらに、低所得の高齢者への対策については、年金の受給資格期間を二十五年から十年に短縮する措置に関する法案を先ほど本院で御可決いただきました。あわせて、医療、介護の保険料の負担の軽減を行うなど、社会保障制度全体で総合的に低所得の高齢者を支えてまいります。
 年金積立金の運用などについてのお尋ねがございました。
 平成十三年度の自主運用開始以降、年金積立金の累積収益は約四十兆円と、長期的に見て、年金財政上必要な収益を十分に確保しております。国民の皆様には御安心をいただきたいと思います。
 今回の法案は、GPIFのさらなるガバナンスの強化を図るため、これまで制度的には執行の責任者である理事長が一人で意思決定も行っていた仕組みを改め、合議制の経営委員会を新たに設け、法人の重要な方針を決定するとともに、執行部がこの方針に基づいて適切に業務を行っているかを経営委員会が監督することなどの改革を盛り込んでいます。
 今後とも、国民から一層信頼される組織体制の確立に取り組んでまいります。(拍手)
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