190-衆-厚生労働委員会-6号 平成28年03月16日
○堀内(詔)委員 本日は、質問をする機会をいただきまして、ありがとうございます。自由民主党の堀内詔子です。
今回の質問は、雇用保険法等の一部を改正する法律案が議題であります。まずは、雇用保険制度が日本の働く方々を守る制度として果たしてきた重要な役割について確認させていただきたいと思います。
我が国は、敗戦の焦土の中、復興に向け、厳しいインフレと社会不安の中にあって、生きんがためにも職がない、そういった状況のもと、失業問題が国を左右する極めて重要な政策課題でありました。昭和二十二年、その苦難の中で、失業保険制度が創設されました。
それから、幾多の時代の変遷に沿ってこの法律は順次拡充を重ね、今では、育児休業や介護休業の際の給付、自分磨きのための訓練を受けるための教育訓練給付なども創設され、失業のみならず、出産、子育て、介護など、働く方々の一生涯を通じた困難を乗り越えるため、雇用に関する広範囲で総合的な機能を有する保険制度として確実に進んでまいりました。
この雇用保険制度は、強制加入であります。四千万人以上の働く方と事業主とが保険料を拠出し、支え合う制度です。
近年、いわゆるアベノミクスの経済成果が現実のものとなってきつつあります。雇用保険の受給者が減少を続けております。平成二十六年度の受給者数は約四十七万人となっているとともに、積立金の残高も六兆円を超える最高水準にあるとお聞きしております。
これらを踏まえ、これまで一・〇%の負担を〇・八%に、労使ともに保険料負担を引き下げることとしています。このことは、これまでの政府の経済政策のいわば果実であり、心から歓迎したいと思っています。
一方、少子高齢化が進展する中で、高齢者の方や女性の活躍は喫緊で大切な課題であります。その際、転職や子育て、介護などに直面する働く方お一人お一人をしっかりサポートするため、雇用保険制度はさらに制度の充実を目指していくべきと考えます。
今回の改正における雇用保険制度の見直しの趣旨及びその内容について、お伺いしたいと思います。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
今回の雇用保険制度の見直しは、少子高齢化の進展に伴いまして労働人口が今減少する傾向の中で、高齢者や女性の方々を初め働く方々がその希望に応じて就業促進や雇用継続を図って、国民一人一人が活躍できる社会、これをつくっていきたいということで法整備させていただきました。
その内容といたしましては、重点的なものが四点ございます。
まず一つ目が、高齢者の雇用が進展しているこの状況を踏まえまして、六十五歳以降に新たに雇用された方への雇用保険の適用を拡大するということ。
そして二番目に、介護を理由とする離転職を防止するために、介護休業給付の給付率を引き上げるということで、これを四〇%から六七%に引き上げていこうと考えております。現在、介護休業給付、これを受けていらっしゃる方は九千六百人いらっしゃいます。
そして、三番目のポイントは、早期再就職のインセンティブを強化して、再就職手当を拡充していこう、このように考えております。
そして、この四番目なんですが、これはなかなか議論していただけないんですけれども、円滑な求職活動を支援するために、面接に際して子供の一時預かりを利用する場合の費用を支援する求職活動支援費、これを創設させていただいております。子育て中の方にも求職活動に積極的に取り組んでいただけるような環境を整えていこうと考えております。
今回は、育児・介護休業法、男女雇用均等法等においても、働く女性の就業支援や離職防止のためのさまざまな措置、これを組み合わせることによりまして、雇用保険制度の改正とあわせて、希望する方が働き続けられる環境、これをしっかりと整えていきたい、このように考えております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございました。
現在、三百六十万人もの六十五歳以上の方々が働いておいでです。雇用する企業の負担やハローワークの機能強化など、特に、高齢者のニーズも踏まえ、多様な就業機会を確保するため、シルバー人材センターがより一層多くの働く機会を提供することが重要だと考えております。
今後の六十五歳以上の方は、御自身の生きがいのためにも、健康で御長寿でいていただくためにも、従来より一層雇用の場を必要とされていると思います。これからの六十五歳以上の方々の雇用対策の方向性について、お伺いします。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
意欲ある高齢者の方が、年齢にかかわりなく、そして活躍することができる場、生涯現役社会、これを実現することが何よりも重要だと考えております。人口が減少していく中で、我々の国の成長力を確保していくためにも、これはとても大切なことだと考えております。
先ほど委員にもお話しいただきましたけれども、六十五歳以上の雇用者の数は、現在、平成二十七年で三百六十万人と、これは平成二年のときは八十一万人でして、ここからすごく勢いよく伸びておりまして、平成二十六年、三百二十万人ということで、一年余りで四十万人も伸びているということで、高齢者の皆様の活躍の場をどれだけ提供できるかというのが、我が国の力を伸ばしていく上では大きな力となってまいります。
これまでも、企業に対して、希望者全員の六十五歳までの雇用確保措置、これを義務づけるとともに、高齢者雇用の積極的な企業への支援、これをやっていこうということで、高齢者が働き続けることができる環境の整備を今までも進めてまいりました。
今回の法律の中では、六十五歳以上の方への雇用保険の適用の拡大、そして、先ほどお話に出ました就労時間規制の緩和によるシルバー人材センターの業務拡大、これに取り組んでまいります。
また、このほかには、ハローワークに高齢者向け求人専用の求人開拓員を置くことによる再就職支援の強化、これにも取り組んでいこうと考えております。
現在、実は、高年齢者総合相談窓口、これは平成二十七年で七十七カ所、全国的にもう既に設置されておりますけれども、平成二十八年度より、この名前を、今仮称でございますけれども、生涯現役支援窓口というふうにさせていただきまして、六十五歳以上の高齢者の再就職支援を重点的に取り組んでいこうと考えております。
ということで、六十五歳以上の高齢者の雇用、就業支援を充実させて強化していきたい、このように考えております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
今回の改正で、ますます高齢者の方々が元気で輝く社会がつくられることを祈っております。
続きまして、女性の方々についての問題です。
近年、働く女性の数はふえてきておりますが、出産、育児により離職する女性は約六割もいると言われております。出産、育児を経て、子育てをしながら仕事を続けたいという希望をお持ちの方が働き続けられる環境をつくっていくことは、女性活躍推進や少子化対策にとっても非常に大切な問題となってきております。
育児休業を取得する方もふえてきてはおりますが、育児休業を取得して継続就業している方の割合は、正規職員の方が四三%に対して、パートや派遣といった非正規雇用の方は四%と低い現状にあります。この現状の改善のためには、特に有期契約労働者の方が育児休業を取得しやすくしていくことが必要であると考えております。
今回の改正では、有期契約労働者の育児休業の取得要件を見直しておりますが、改正の趣旨と見直し内容についてお伺いいたします。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
育児休業は、育児を理由とする離職をすることを防ぎ、働き続けることができるようにすること、これが大切な制度であります。
現行の要件のうち、実は、子供が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることという要件については、これは労政審の方で、事業主にとっても労働者にとっても非常にわかりにくいという御指摘を受けました。有期契約労働者の育児休業の取得が進まない一因ではないか、こういう指摘も受けましたので、ここを今回改善していくことにいたしました。
ということで、子供が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることという要件を廃止させていただきまして、育児休業は原則として一歳まで取得できる権利であることを踏まえ、休業から復職した後、一定期間、六カ月の雇用継続の可能性のある方、すなわち、一歳六カ月までの間に労働契約が終了することが明らかではない者であれば育児休業の対象とするということにさせていただきました。
一歳六カ月までの間に契約が更新されないことが確実でない方については育児休業を取得することができるように、このように配慮をさせていただきました。
このような取り組みによりまして、有期契約労働者の方々が安心して子供を産み育てながら継続就業できるような環境をこれからも積極的につくっていきたいと考えております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
働く女性のうち約六割、五六・三%の方が非正規雇用となっている現状を見ますと、今回の改正は大変意味があるものと思います。
また、お母さんになっても女性が働き続けられるようにするためには、単に制度があるだけでなく、制度を利用しやすい職場の雰囲気づくりがとても大切になってきていると思います。そのためには、妊娠、出産、育児休業を取得したことなどにより、いわゆるマタニティーハラスメントなどの精神的負担が女性にかからないようにしていくことが重要です。
今日まで、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法によって、妊娠、出産、育児休業を取得したことなどにより事業主が不利益な取り扱いをすることははっきりと禁止されていましたが、今回の改正では、それに加え、いわゆるマタニティーハラスメントの防止のための取り組みを事業主に義務づけることとしています。どのような効果を期待しているのでしょうか。
○香取政府参考人 御答弁申し上げます。
今先生御案内いただきましたように、妊娠、出産、育児休業等を理由とする事業主による解雇でありますとか、あるいは降格といった不利益取り扱い、これはもう既に法律で禁止をされております。
ですが、これもまた先生お話がありましたように、近年は、こういった事業主ではなくて職場の同僚ですとかあるいは上司ですとか、そういった方々からいわゆるハラスメントの行為があって職場の環境が非常に害される、そのことで就業継続が困難になったり、あるいは育児休業を取得することがいわば控えられるといったような事例があって、これが大変問題になっているということです。
今回の改正では、こういったことのために、妊娠、出産、育児休業等をした者の就業継続が困難とならないように、上司、同僚からの嫌がらせについてもこれを防止しようということで、いわば職場の環境をきちんと整えるという意味において、事業主が一定の防止措置を講ずるということを義務づけるということにいたしました。
もとより、一億総活躍社会の中では、妊娠、出産、子育てをしながら働いている方々、男性も女性もそうですが、そういった方々が就業継続できる環境をつくっていくということは極めて重要なことでございまして、その意味では、職場環境を害する行為、いわゆるマタニティーハラスメントはやはり非常に大きな問題になります。したがいまして、この防止措置をきちんと講ずることによって職場環境の改善を図っていくということを私どもとしては期待しているところでございます。
これにつきましては、法案成立後に、事業主に対するさまざまな指針等による指導も含めて徹底をしてまいって、こういった方々が就業継続しやすい職場環境というものを整備してまいりたいと思っております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございました。
マタニティーハラスメントの経験がありますかとお尋ねしますと、約二割の方が経験しているとの調査結果があります。それを雇用形態別に見てみますと、正社員の方が二二・三%となっている一方、派遣労働者の方は四五・三%となっています。このように、派遣労働者の方がマタニティーハラスメントの経験率が高くなっているという現状があります。
派遣労働者の方についても、派遣元、派遣先とマタニティーハラスメントが起こらないようにしていくことが重要と考えております。どのようにその実効性を確保していくのでしょうか、お伺いいたします。
○香取政府参考人 今先生御指摘いただきましたが、昨年、労働政策研究・研修機構におきまして調査をいたしました。
その調査結果によりますと、今先生お話がありましたように、雇用形態別の不利益取り扱い等の経験率を見ますと、派遣労働者は他の雇用形態に比べて非常に高い、四五%強の方が経験をされているということで、派遣の方についての就業環境の整備というのはかなり重要だということで、今般の改正案では、先ほど申し上げた上司、同僚からの嫌がらせを防止する措置、これについては、雇用している派遣元だけじゃなくて、派遣先の事業主にもこれを義務づけていくということ、それから、育児・介護休業法に基づいて行われております育休等の取得を理由とする不利益取り扱い、これにつきましても派遣先にも適用するということで、派遣労働者についても通常の直用の労働者と同じような措置を講じるということを盛り込んだところでございます。
この点に関しましては、二十八年度の予算案の中で、全国マタハラ未然防止対象事業、こういう名前の事業を私どもは盛り込んでおるんですが、この中で、事業主の方でありますとか人事担当者の方に対して説明会など集中的な広報を行うということで、法案成立の後、ちょっと集中的な啓発活動をやろうと思っております。
それから、さらに、本年四月から、各都道府県に置かれております労働局の組織の見直しを予定しておりまして、この中で、雇用環境・均等部という新しい組織を設けることとしております。
この組織を中心として、マタハラ等のハラスメントについての相談対応を行う、あるいは問題のある企業に対する指導、あるいは個別の問題についての紛争解決援助というものを労働局の中で一体的に行うという形で、こういったことが未然に防げるように、ハラスメント対策を総合的に進めていくということで取り組んでまいりたいと思っております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
子供と母を見守る地方自治、子供と母親を支え理解してくださる職場、子供とお母さんに優しい家庭と家族、利益追求という企業の宿命の中でも必ずこの考え方は伝わり、広がっていくものと確信しております。
次に、介護と仕事について質問を移らせていただきます。
人は年を重ねる中で、父や母の介護をしながらも、離職しないで済むようになってくれたらいいな、そういう働く方々の願いの声は大変大きなものがあります。今回は制度を大きく改正したと伺っております。
一方、介護はいつまで続くのか本当に先が見えないことや、介護の原因、疾患の程度、家族の状況など、人はそれぞれの事情を持っていらっしゃいます。さまざまであることから、仕事と介護を両立していくためには、柔軟に対応できるような制度が必要であると考えますが、今回の改正ではどのように対応しておられますでしょうか。
○香取政府参考人 介護休業制度でございますが、介護休業制度は、介護保険制度という公的な介護の制度があるということを前提に、御家族の方が休んでみずから直接介護をやり続けるということをいわばサポートするということではございませんで、介護保険その他さまざまな公的サービスを利用しながら、自分の仕事の継続と介護を両立させることができるようにということで準備をした制度でございます。
お話ありましたように、家族によって状態も違いますし、要介護される方の状態も違う、あるいは働き方も違うということで、介護サービスの利用の仕方や働き方についてはかなりそれぞれ状態が違うということもありますので、仕事と介護を両立させるという意味で用意しておりますこの介護休業制度側は、できるだけそういった多様なニーズに対応できるように、できるだけ柔軟なものにするということで、今般、かなり大きな見直しを御提案しております。
一つは、現在、介護休業は通算九十三日ということになっておりまして、一回とると、そこから九十三日ということになっているんですが、介護期間が長期化している、あるいは介護保険を使いながら介護をやり続けるということで、これを分割して取得する、介護が終わるまでの間で分割して使うことができるようにということで、三回まで分割してできるようにするということにいたしました。
それと、介護休業のほかに、年間五日、介護休暇というのがとれるんですが、これは今、一日単位ということになっておりますが、これも半日単位でとれるようにする。
あるいは、選択的措置義務というのがございまして、介護のために、短時間勤務でありますとか、あるいは柔軟な働き方でありますとか、先ほどの九十三日の休業とは別に、事業主側が何がしかの措置を講ずるという義務がございますが、これにつきましては、従来、この九十三日の間の代替措置だったものを、三年間の間に取得できるという形で延ばすということにいたしました。
もう一つは、介護が終わるまでの期間については残業の免除をする、申請によって残業の免除ができるという措置を講ずるということで、措置をいたしました。
これらの措置につきましては、いずれも労政審で議論いたしましたが、事業主側でいろいろな雇用管理等で対応できる範囲内でということでお願いしましたが、かなり今回は使用者側も理解を示していただきまして、かなり大幅な内容の改正ができたかというふうに思っております。
今後は、この制度をうまく使いながら、介護サービス等とあわせて、できるだけ多くの方々が介護離職をしないで、介護サービスを利用しながら就労を継続できるようにということで、我々も取り組んでまいりたいと思っております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
ただいま御答弁いただきましたように、今回の改正では、仕事と介護の両立支援制度について大幅な拡充が図られております。介護を抱えながら働く方々にとって、前にも増して利用しやすいものとなったのではないでしょうか。
忘れてはならないことは、育児・介護休業法は、業種や規模を問わず、全ての企業に義務づけられるものです。だからこそ、制度が拡充されると、中小企業にとっては労務管理の負担が大きくなるという苦しい課題がございます。円滑な施行に向けて、特に中小企業への支援策を講ずる必要があると思いますが、どのような対応を行う予定でしょうか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
仕事と介護の両立支援制度の見直しは、これは企業において円滑に実施していただくためには、改正の内容を周知徹底、これがとても大切になってまいります。
ということで、平成二十八年度の予算案では、企業が、社内研修の実施やリーフレットの配付、介護休業制度の周知、こういったことを徹底した場合に、介護支援取組助成金ということで、一企業当たり六十万円、これは企業規模に関係なく支給をさせていただきます。
さらに、これに加えて、中小企業につきましては、労働者の介護休業の取得や、その後の円滑な職場復帰に関する介護支援プラン、これを策定して導入していただきますと、そして、その方々が介護休業を取得した場合は、一企業二回までですけれども三十万円、そして、取得した方が復帰した場合は、一企業二回までですが三十万円ということで、助成措置等を盛り込ませていただいております。
このような取り組みによって、中小企業でも円滑に利用していただけるように支援していきたいと考えております。
以上です。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
そろそろ時間が参りますので、最後の質問に移らせていただきます。
制度が充実しても、介護を理由とする離職を防ぐためには、働く方や事業主の方が介護休業制度や介護サービスについて十分御理解いただき、正しい情報を得ることができるようにすることが重要ですが、どのように取り組んでいくのでしょうか。特に、企業を通じた働く方への周知が重要だと考えますが、いかがでしょうか。
○香取政府参考人 先生お話ありましたように、育児休業と比べますと、介護休業は必ずしも認知度が高くないということもありまして、労働者の方が仕事と介護の両立を円滑に進めるためには、きちんとこういった介護等に関する情報が従業員の方に届いているということ、それから、何かあったときの相談の窓口がきちんとしているということが重要でございます。
この点に関しましては、一つは、市町村に地域包括支援センターというのがございます、こちらでさまざまな相談に応じているわけですけれども、こちらでの対応。それから、労働局においても対応しておりますが、今般、介護サービスでありますとか介護休業、福祉の側の制度と労働政策の制度ですが、共通のパンフレットというのをつくりまして、それを使って市町村サイドあるいは労働局サイドから情報提供したり、あるいは御相談に応じたりという体制を用意しようと思っております。
それからもう一つは、先生お話ありましたように、やはり直接相談するとなると、普通、大体、企業の中の人事部局ですとかいうところに御相談をされるということになりますので、それぞれの企業におかれまして、自社のさまざまな両立支援制度について従業員に周知をする、あるいは相談窓口を設置するということを積極的にやっていただくということをお願いしようと。
また、こういった取り組みをして、さまざまな形で事業主に対して、両立支援の取り組みをされた企業に関しましては一定の助成措置を講じるということで、そういったものを通じて企業の取り組みも支援して、市町村サイド、労働局そして企業、それぞれからさまざまな情報発信、相談を受けることでこの利用の促進を図ってまいりたいと思っております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございました。
時間になりますので、これで終わらせていただきます。今回の改正によって、アベノミクスの果実が実りつつある中、一億総活躍、老いも若きも、老若男女、活躍できる社会になることを祈って、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○井坂委員 井坂信彦です。
皆様、遅い時間までお疲れさまです。あと三十分、おつき合いをいただきたいと思います。
本日は、政府が目指す失業なき労働移動ということについて、そして、後半、時間があれば、高齢者の今後想定される新しい働き方についてお伺いをしたいと思います。
まず、政府が目指す失業なき労働移動、これは成熟産業から成長産業への労働移動ということを意味しているのか、お伺いいたします。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
第四回の産業競争力会議におきまして、安倍総理の発言でございますけれども、成熟産業から成長産業へ失業なき円滑な労働移動を図る、このために、雇用支援策を雇用維持型から労働移動支援型へ大きくシフトさせていきたい、こういうふうに発言をなさいました。
これを受けまして、政府といたしましては、産業構造の転換に対応して労働者のスキルアップを図っていこうということで、成熟産業から人材を必要とする成長産業へ円滑な労働移動を行っていくこと、これがとても大切だというふうに考えております。
○井坂委員 ところが、今国会で問題になっている労働移動支援助成金、これは、平成二十六年度中に再就職支援を開始した、そして年度末までに無事に再就職できた方、六百五十一人、このデータをきょうは議論したいんですけれども、この六百五十一人は、結局同じ産業分類、つまり、同じ業界の会社に再就職した人が三百六十八人おられます。要は、半数以上が労働移動をしていないということになっているわけでありますが、大臣、これは、お伺いしますが、労働移動支援助成金の名前のとおりに、残念ながらなっていないのではないでしょうか。
○塩崎国務大臣 これは、個別に、子細に見てみないと、どういう企業に行ったのか、どういう業種のお仕事に行かれたのかは、今のざっくりした産業分類ではよくわからないんだろうというふうに思います。
例えば、同じ電機産業でもいろいろでございますし、企業はそれぞれございます。それぞれの企業が付加価値をどう上げて、収益力を上げ、生産性を上げていくかということが問われているわけでありますので、我々としては、全体としての生産性あるいは収益力を上げて競争力を増して、そして、そこで働く人たちの賃金を上げてもやっていけるだけの強い企業になってもらうことが大事なので、今お話がございましたけれども、同じ製造業の中でも、同じ産業分類の中でも、いろいろなケースがあり得るのではないかなというふうに思います。
いずれにしても、さっき申し上げたように、今回の助成金があるがためにリストラになったということではないということは、改めて申し上げたいというふうに思います。
○井坂委員 大臣、そうまでおっしゃるのであれば、同じ産業分類の中でも望ましい移動はあるかもしれない、逆にそういうデータはとっておられるんですか、労働移動がちゃんと果たされたというデータはとっておられるんですか。
○塩崎国務大臣 今のところは大分類で見ているので、細かなところは私どもとして持ち合わせていませんが、いずれにしても、労働組合との話し合いの中で再編計画ができるということを前提にスタートしたこの制度でございます。
〔委員長退席、秋葉委員長代理着席〕
○井坂委員 大分類では労働移動したかどうかはかれないと答弁されながら、大分類以外では成果測定をしていないということであります。
私は、やはり役所の仕事は、一事が万事、こういうことが多いと思うんですけれども、成果測定、ちゃんと政策の当初の目的が果たされているのかどうか、大分類で測定できないとおっしゃるのであれば、小分類で測定をすべきでありますし、それをしていないのであれば、大分類じゃわからないという答弁はされるべきじゃないというふうに思います。
加えて、別の政策ですけれども、求職者支援のための職業訓練受講給付金というものがあります。これは、実践コースというところで成長分野が指定されて、例えば、ITの訓練を受けた求職者は、就職に成功した人の七七%がIT分野に実際に就職している、医療事務は七八%が医療事務へ、介護福祉コースの人は九一%が介護福祉へ、デザインの人は六四%、トータル平均で七八%の人が訓練した分野に就職をしている。一方でこういう政策もあるわけであります。
私は、これはある程度狙った効果が出ているというふうに思いますが、にもかかわらず、平成二十三年、二十四年には利用者が年間十万人ペースだった政策が、徐々に減って、平成二十七年度は年間四万人ペースしか利用されていない。
大臣にちょっとお伺いしますが、これは細かい具体の政策の話はお伺いしませんが、要は、労働移動ということを真剣に目指すのであれば、私はやはり職業訓練を充実させるのが王道だというふうに思います。職業訓練なしで、早く再就職しろとだけやっていても、これは成長産業への労働移動は不可能だというふうに思いますが、大臣の政治家としての御所見を伺います。
○塩崎国務大臣 職業能力を新たにつけて転職していく、新天地に赴くということは、大変大事な論点だと思います。
私はそのとおりだと思いますし、これからは、よく言われているAIとかIoTとかいう時代の中では、今では想像できないような働き方の変化が出てくると思いますので、そういうときには、やはりみずからの能力を新たにつけるということは年齢にかかわらずやっていかなきゃいけないことだろうというふうに思いますので、御指摘はそのとおりだというふうに思います。
○井坂委員 私は、なるべく早い再就職というのはもちろん大事だというふうに思います。ただ、私は実は労働移動ということも大事だと思っておりますので、真剣にそれをやるならば、先ほど申し上げた成果測定もしっかりしながら、やはり、違う分野に移るということは、その間に新たな技術、能力の獲得というものは必ずあるはずですから、そこを抜きに再就職支援奨励金のようなやり方だけでやっていくと、あおられて早くは就職するけれども、結局もとの産業へというような形に、これは論理的にもそうだし、結果としてもそうなっているというふうに思うわけであります。
もう一点、この労働移動支援助成金についてですが、これは、再就職に成功した人、先ほど申し上げた六百五十一人でも、以前の給料よりふえたという人はわずか一一%、給料が八割以下になってしまった人が何と六五%、給料が六割以下というとんでもない状態になった人も二四%いらっしゃるわけであります。
この再就職先の賃金が平均で退職前の七五%という現状は、これは労働移動という何か横滑り、横移動のイメージとは随分違って、むしろ、一人一人の人生を真面目に見れば、人生を破壊しかねない大幅降格ではないかというふうに思いますが、大臣、問題は感じられませんか。
○塩崎国務大臣 先ほども申し上げさせていただいたわけでありますけれども、この制度自体は、もちろん失業をつくるためのものでもないし、むしろ移動を応援するということが主眼であるわけでございます。
今お話がありましたように、助成金による再就職支援の対象となった方で二十六年度末までに再就職された方の賃金、七五%程度ということがございますが、雇用保険を受給して再就職した方のうち、いわゆる一般の、失業されて再就職された方、この労働移動支援助成金の対象者と大体同じぐらいのもとの賃金水準の方について比較をしてみました。
そうしますと、離職前賃金に対する再就職後の賃金の割合というのは七一%となっておりまして、これが一般の、雇用保険をもらっていらっしゃる方が再就職した場合の数字でありますけれども、これだと七一でございますので、約七五というのは、若干それよりも高いということだと思います。
これらの賃金のデータは、離職前の賃金に超過勤務手当が含まれて、再就職後の賃金には含まれていないわけで、減少幅が大き目にやはり出てしまうということはあろうかと思いますが、現時点で、平成二十六年度の労働移動支援助成金による再就職支援の対象者のうちで、労働移動に伴って賃金が上昇した方が一一・一%おられるということで、決して多いというわけではございませんけれども、そういうケースもあって、産業構造転換に向けた政府全体のいろいろな施策の推進と相まって、賃金が上昇する形での労働移動の拡大を図っていくことが大事だというふうに思っているところでございます。
○井坂委員 平成二十六年度中に再就職支援を開始して二十六年度末までに再就職できた方、六百五十一名について、これまでデータを挟んで議論してまいりましたが、実は、平成二十六年度に労働移動支援助成金の対象となった方は三千三百四人おられます。そのうち、年度末までに再就職できたのが六百五十一人で、わずか一九%、正社員になれたのはわずか一四%という数字です。さらにもう一年たって平成二十七年十二月末になっても、いまだ非正規にすらなれていない未就職者がいまだ一八%残っているという状態であります。
先ほどは、無事にちゃんと二十六年度末までに再就職できた方のお給料も平均七五%まで下がっていますよという議論でありましたが、そもそも再就職自体もはかばかしくない。一年以上、一年半、二年近くたってもまだ一八%未就職者がいる、この政策において、いるということであります。
大臣、これは、失業なき労働移動とおっしゃいますが、失業なきという部分も結果としては看板倒れになっているのではないか。また、労働移動という部分も、残念ながら、大半は同じ産業に再就職をしておられ、こちらの部分も看板倒れになっているのではないか。このダブル看板倒れで、私は、狙った成果が出ているとは言いがたい状況だというふうに思います。
この政策、私は労働移動は必要だという立場でありますが、全く成果は出ていない、少なくとも狙ったとおりには出ていない、根本的に考え直す必要があるのではないでしょうか。
○塩崎国務大臣 何度も申し上げておりますけれども、我々は、やはり労働移動は産業構造の転換にとって不可欠であって、そのためにこそ、先ほど御提案をいただいたように、技能を磨く、新たに取得する、そういうこともやはり支援策としてセットでやるということも、もっと力を入れないといけないということで、基本的な方向性は、さらにこれは加速をしないといけないぐらいだろうというふうに思っています。
今の井坂先生からのお話も、先ほど来のお話も、この制度なかりせば、単純にリストラをされることになって、御自分でお仕事を、次の職場を探さないといけないということになっているわけでありますけれども、我々は、それをやはりバックアップして、できる限り早く次の職場を得られるようにする。
当然、御自分のエクスパティーズを大事にするようにすれば、大体同じようなところに、同じようなというのは、同じ自分のエクスパティーズが使える産業に行くのが普通でございますので、全然、全く違うところに行くということは余りないんだろうというふうに思います。
そういう意味で、私は、六百一人残っているじゃないかということで、これが失敗だということでありますけれども、しかし、むしろそれは、ポジティブな面も御評価をいただいて、八割の方が再就職できておられるということも大事な一面であるということをお考えいただき、いまだに再就職が決まらない方々については目いっぱいの応援をしていくということが、厚生労働省としても大事なんだろうというふうに思います。
○井坂委員 一年目で再就職が決まった人は一九%、二年目でようやく八割方決まってくる、こういう数字だというふうに思います。要は、失業なき労働移動とおっしゃるには看板倒れではないですかということであります。
加えて、労働移動というところで、先ほど、ほかの、ITとか介護とか別の政策とも比べましたけれども、大臣がやはりおっしゃるように、何もしなければ、それは、自分の能力の生きる、もとの産業に就職するというのが、これは当たり前の選択になってしまいますから、労働移動とおっしゃるのであれば、やはりその間には、きちんと明確な意図と、しっかり効果を持った職業訓練が必須であるというふうに思います。
そんな中で、今回、この労働移動支援助成金が、厚労省みずから適切ではないと今後通達を出さざるを得ないような使われ方をしたわけであります。今退職したら退職金を上乗せする、ただし、断ったら、あなたの次の仕事はあなた自身の職探しですよ、こういうふうに言われて、どちらを選んでも、結局、次の仕事を探さなければならない、こういうことが実際に起こったわけであります。
ここで大臣にお伺いいたします。
業務命令で職探しをさせられ、そして、仕事が見つからないと、業務の成績が悪いといって、それこそ解雇される。しかし、労働者みずからが自分の次の職探しを行うということは、これは労働契約法上の労務の提供にはどう考えても当たらないのではないかというふうに思います。これはもう言わずもがなで法律には書いていないと思いますけれども、実際、法律を幅広に解釈してこういうことが行われたわけで、この法律の中に、みずからの次の職探しというのは労働契約法上の労務の提供、労働には当たらない、入り得ないということを明記すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
〔秋葉委員長代理退席、委員長着席〕
○塩崎国務大臣 前回も近い御提案があったかというふうに思いましたが、働く人がみずからの次の職探しを命じられて職探しを行っても労務の提供に当たらない旨を労働契約法に明記するという御提案だったと思いますが、労働契約法というのは、釈迦に説法でございますけれども、民法に由来をいたします労働契約、民民の労働契約の原則や、確立をいたしました判例法理、いろいろな法理がありますけれども、これを定める基本法というふうに考えるべきではないかというふうに思います。
判例法理が確立をしていない事項についてどこまで規定できるか、慎重にこれは検討をしないと、みずからの次の職探しという言葉でも、なかなかこれはいろいろなケースがあり得るんだろうというふうに思いますので、これは労使双方の十分な合意形成をしていただくということが必要なのではないかというふうに思いまして、さまざまな課題があって、率直に申し上げると、なかなか一筋縄ではいかないというふうに考えているところでございます。
○井坂委員 大臣の今の御答弁ですと、自分の次の職探しというのが、レアケースであっても、場合によっては労務の提供に当たるケースもあり得るからということでしょうか。
○塩崎国務大臣 いや、そのようなことを申し上げたつもりは全くございません。
先ほど、これは岡本先生のときにお答え申し上げましたけれども、私どもは労働者保護を使命とする役所でございますので、当然、労働者の立場というものを守りたい、こう思っているわけであります。
先ほども申し上げたとおり、自分の再就職先を探せ、あるいは、先ほど、出向先を探せというようなことも含めてというお尋ねがございましたけれども、こういうことを人事権を濫用して命じるということは、これは明らかに不適切ではないのかというふうに思われますので、企業の労務管理が適切に行われて、働く方々が安心して働けるように、私どもは、啓発指導に用いられるパンフレットを既に改定することとしておりますし、企業に対する啓発指導はしっかりと行っていかなければなりませんし、もう既に、先ほど来、理事会提出資料の中での対象企業についても、二回にわたって啓発指導を行ったところでございます。
○井坂委員 大臣、その出向先を探せというのは、自分の、あなたの次の仕事を探しなさいというのとは、もう一段階、私は違うと思うんですよ。出向先を探せというのは、本当にごくごくまれに、ある種の営業活動みたいな要素が入り得る可能性は私はゼロではないかなというふうに思いますけれども、少なくとも、あなたの次の仕事、あなたがこの会社をやめて次に行く仕事を探しなさいというのは、これはもうどう考えたって労務の提供になり得ないし、もしそれが労務の提供になり得るんだったら、求職者イコール労働者ということになって、とてもおかしなことになってくるというふうに思います。
ですから、出向先とまぶされましたけれども、出向先の話はきょう議論しておりませんので、あなたがこの会社をやめて次に行く仕事、次に行く職場を探しなさいというのは、これは労務の提供、労働には当たらない、これは多分、もうこの中で誰もがそう思っている、言わずもがなの当たり前だから法律に書いてないんですけれども、今回、法律が悪読みされてこういうことが起こっているわけですよ。立法事実があるので、いっそ書いたらどうですかというふうに思うわけです。これは判例法理がなきゃわからないとかの話じゃないと思います。大臣、いかがですか。
○塩崎国務大臣 これは、言うまでもないことで、釈迦に説法でございますけれども、この労働契約法というのは、先ほど申し上げたとおり、労働契約の原則とか判例法理を定めたものでありまして、もともと、この労働契約は民民の契約でございます。その中で、どういう形で、人事権を濫用までして、今先生は労務ではないことを強要しているということをおっしゃっていますが、そういうことをやっているのかということは、それぞれの状況に応じて、やはり会社側と働く方御本人との間でいろいろなやりとりがあろうかと思います。
それを、今先生が表現をされた言葉で全て法律になれるかというと、なかなかそれは、そういうことにはなりませんので、やはりここは、民民のことは司法に判断をいただくというのが大原則でございますので、そこは、我々は逃げているわけでも何でもないわけで、必要なときに啓発指導は間違いなくやるということが私たちとしてのとるべき政策手段だというふうに考えております。
○井坂委員 ちょっと話が戻ってしまったんですけれども、要は、最後、ケース・バイ・ケースで司法の判断だとおっしゃるということは、大臣の頭の中には、次の仕事を探すのが労務だ、労務の提供だ、労働だと言い得るケースがあり得るというふうに思っておられるからそういう答弁になるんですね。
○塩崎国務大臣 全くそんなことは申し上げておりませんで、先ほど申し上げたように、人事権を濫用して自分の再就職先を探せと命じることは不適切だということを申し上げているわけでありまして、ただ、いろいろなケースがあり得るわけでありまして、それは行政の私ども厚生労働省が判断をして決め込む立場にはないということで、民民の問題について行政がいきなりやるような官僚統制、社会主義国家では日本はないというふうに思います。
○井坂委員 民民の契約でも、法律でちゃんと最低限の枠が定められて、その中で契約が行われるわけですよ。そんなことを言い出したら無法地帯になってしまいますから。
普通はこんな言わずもがなのことは書かなくたっていいわけでありますけれども、実際こういうことが起こって、ちょっと大臣の御答弁だと、そういう職探しが労務に当たるケースもあるということが念頭に多分おありでそういう答弁になるんだろうというふうに思いますけれども、私はやはりいろいろ考えてもあり得ないというふうに思いますから、あり得ないことはあり得ない、これは労務の提供ではないと書いても、はなからあり得ないことをただ要は確認のために書くだけの条文になりますから、民間を縛る要素は一切ないというふうに私は思いますよ。
あと二点議論したいんですけれども、大臣は、では、実際、厚労省に責任があるなしは別にして、こういう王子ホールディングスさんのような、中で納得のいかない退職ということになってしまった方に何か手だてはないのかとお尋ねをすると、個別労働関係紛争ということで、それの紹介、説明ぐらいならできますというふうに答弁をされました。
この個別労働関係紛争の法律第三条には、都道府県労働局長は、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者、事業主に対して、情報提供、相談その他の援助を行うものとするというふうに書いてあります。
この「その他の援助」というところを読んで、王子ホールディングスに、今後ほっておいたら個別のあっせんが多発しますよ、そんな個別あっせんを労働者一人一人とするよりも、企業として一定の方針をまず示されたらどうですか、こういうアドバイス、これは何ら法に違反しないので、厚労省が王子ホールディングスに私はできるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第三条について御説明いただきましたけれども、これは、働く方や事業主から照会があった場合に、その照会内容に応じて法令や裁判例の情報提供をしたり相談に乗ったりするということで、関係する機関に取り次いだり、そういった趣旨の規定でございます。
現在、御指摘の会社から退職された方から相談がなされているということはございませんけれども、相談が仮になされた場合は、必要な情報提供を行うとともに、個別労働紛争解決制度の助言や指導、あっせんを促していきたいというふうに考えております。
また、このたび、御指摘の会社から退職された方に対するヒアリングの検討を行っているところであります。その中で、個別労働紛争解決制度について周知を行うとともに、御本人がこの制度の利用を望まれる場合は、お一人お一人丁寧に対応していきたい、このように考えております。
○井坂委員 この法律をよく読むと、別にあっせん制度を使ってください使ってくださいと紹介する趣旨ではなくて、むしろ個別労働紛争の未然防止、それから当事者間での自主解決が目的になっているわけですね、この第三条の部分は。何か、窓口に来ないとこれが発動しないなんと読める部分は私は一個もないと思います。
まず、窓口に来なきゃ何で発動しないのか。別に制度の紹介だけなんて全く書いていなくて、要は未然防止のための援助をしたらいいと思うんですよ。いかがですか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の三条のところなんですけれども、やはり、これは積極的にこちらから働きかけるということではなくて、ある程度、照会内容に応じて、相談に乗ったり、関係機関に取り次いだり、情報提供をしたりということで、未然に防ぐということでこちらがアクションを起こして、どういった形でアクションを起こしていっていいのかという基準もはっきりしないところでございますので、まずは御相談を受けて、それで対応を考えさせていただくということになると思います。
○井坂委員 同じく、四条に、都道府県の労働局長は、個別労働関係紛争に関して、当事者の双方または一方から解決につき援助を求められた場合は、必要な助言または指導をすることができると書いてあります。
これは、仮に労働者側から相談があった場合も、企業側、労働者側、どっちにも指導助言ができるという内容だというふうに伺っておりますが、そのときに、指導助言の内容が、要は、Aさんが何か助言を求めたときに、Aさんとこの王子ホールディングスとの一対一の関係の、ここだけを指導助言しなければいけないというふうには特に読めないというふうに思います。類似の、要は、Bさん、Cさん、何十人も同じことを王子ホールディングスはやっているわけで、Aさんから相談があったら、王子ホールディングスに対して、まずは対Aさんのことを指導助言すべきだと思いますが、同時に、あなた、Bさん、Cさん、何十人も同じことをやっているでしょうと。
ここの部分は、また別途、別に訴えがなくても企業としてちゃんと真面目に対応してくださいよ、私、これぐらいの指導助言は現行法でできるというふうに思いますが、大臣、これは通告どおりですが、いかがですか。
○塩崎国務大臣 まず第一に、今の個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の第一条には、「この法律は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争について、あっせんの制度を設けること等により、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。」こうなっておって、今の三条、そして四条で、「双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、」ということで、「個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をする」ということになっているわけで、この助言指導は、法違反の是正を図るために行われる行政指導とは性格が異なるわけでございまして、個別労働関係紛争は、先ほど来ずっと申し上げているように、民民、私人間の問題でございまして、当事者の求めに基づいて実施をすることが前提というふうになっています。
個々の労働者からの申し出を受けてということが基本だろうと思いますけれども、あらかじめ行政が事業主に予防的な助言指導をすることは、この法律の枠組みの中では予定をされておりません。
ただ、何もしないのかといったら、そんなことはなくて、既に二回にわたって、この会社には啓発指導も、呼んで、やっているわけでございまして、これは行政法規に基づく指導とはやはり違うわけでございます。
このたび、今御指摘の会社から退職された方に対するヒアリングを検討しているところでありますので、その中で、先ほど来申し上げているように、まずADRの制度を周知するとともに、制度の利用を望まれる方にはやはり丁寧に対応をして、何が一番いい方法かということも含めて、御相談にあずかっていきたいというふうに思っております。
○井坂委員 もう終わりますが、昨晩、すごくがっかりしたことがありました。当局の方にこういう質問を投げかけたら、いや、難しいと思います、ただ、難しいと言える根拠が思い当たらないので、ちょっと根拠をきちんと調べてお答えしますと、電話口でそういうやりとりだったんですね。
それは、法律を、できない理由を探そうと思えば幾らでも見つかるというふうに思います。ただ、一方で、特に強制性のない指導助言ですから、なるべく幅広に解釈をして、やろうと思えばできることだっていっぱいあるというふうに思うんです。ぜひ、法律を最大限解釈して、できない方向じゃなくて、本件は、何ができるか、何ならできるかという、親身になって救済に当たっていただきたい、このことだけお願い申し上げて、終わりにいたします。
どうもありがとうございます。
○堀内(詔)委員 本日は、質問をする機会をいただきまして、ありがとうございます。自由民主党の堀内詔子です。
今回の質問は、雇用保険法等の一部を改正する法律案が議題であります。まずは、雇用保険制度が日本の働く方々を守る制度として果たしてきた重要な役割について確認させていただきたいと思います。
我が国は、敗戦の焦土の中、復興に向け、厳しいインフレと社会不安の中にあって、生きんがためにも職がない、そういった状況のもと、失業問題が国を左右する極めて重要な政策課題でありました。昭和二十二年、その苦難の中で、失業保険制度が創設されました。
それから、幾多の時代の変遷に沿ってこの法律は順次拡充を重ね、今では、育児休業や介護休業の際の給付、自分磨きのための訓練を受けるための教育訓練給付なども創設され、失業のみならず、出産、子育て、介護など、働く方々の一生涯を通じた困難を乗り越えるため、雇用に関する広範囲で総合的な機能を有する保険制度として確実に進んでまいりました。
この雇用保険制度は、強制加入であります。四千万人以上の働く方と事業主とが保険料を拠出し、支え合う制度です。
近年、いわゆるアベノミクスの経済成果が現実のものとなってきつつあります。雇用保険の受給者が減少を続けております。平成二十六年度の受給者数は約四十七万人となっているとともに、積立金の残高も六兆円を超える最高水準にあるとお聞きしております。
これらを踏まえ、これまで一・〇%の負担を〇・八%に、労使ともに保険料負担を引き下げることとしています。このことは、これまでの政府の経済政策のいわば果実であり、心から歓迎したいと思っています。
一方、少子高齢化が進展する中で、高齢者の方や女性の活躍は喫緊で大切な課題であります。その際、転職や子育て、介護などに直面する働く方お一人お一人をしっかりサポートするため、雇用保険制度はさらに制度の充実を目指していくべきと考えます。
今回の改正における雇用保険制度の見直しの趣旨及びその内容について、お伺いしたいと思います。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
今回の雇用保険制度の見直しは、少子高齢化の進展に伴いまして労働人口が今減少する傾向の中で、高齢者や女性の方々を初め働く方々がその希望に応じて就業促進や雇用継続を図って、国民一人一人が活躍できる社会、これをつくっていきたいということで法整備させていただきました。
その内容といたしましては、重点的なものが四点ございます。
まず一つ目が、高齢者の雇用が進展しているこの状況を踏まえまして、六十五歳以降に新たに雇用された方への雇用保険の適用を拡大するということ。
そして二番目に、介護を理由とする離転職を防止するために、介護休業給付の給付率を引き上げるということで、これを四〇%から六七%に引き上げていこうと考えております。現在、介護休業給付、これを受けていらっしゃる方は九千六百人いらっしゃいます。
そして、三番目のポイントは、早期再就職のインセンティブを強化して、再就職手当を拡充していこう、このように考えております。
そして、この四番目なんですが、これはなかなか議論していただけないんですけれども、円滑な求職活動を支援するために、面接に際して子供の一時預かりを利用する場合の費用を支援する求職活動支援費、これを創設させていただいております。子育て中の方にも求職活動に積極的に取り組んでいただけるような環境を整えていこうと考えております。
今回は、育児・介護休業法、男女雇用均等法等においても、働く女性の就業支援や離職防止のためのさまざまな措置、これを組み合わせることによりまして、雇用保険制度の改正とあわせて、希望する方が働き続けられる環境、これをしっかりと整えていきたい、このように考えております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございました。
現在、三百六十万人もの六十五歳以上の方々が働いておいでです。雇用する企業の負担やハローワークの機能強化など、特に、高齢者のニーズも踏まえ、多様な就業機会を確保するため、シルバー人材センターがより一層多くの働く機会を提供することが重要だと考えております。
今後の六十五歳以上の方は、御自身の生きがいのためにも、健康で御長寿でいていただくためにも、従来より一層雇用の場を必要とされていると思います。これからの六十五歳以上の方々の雇用対策の方向性について、お伺いします。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
意欲ある高齢者の方が、年齢にかかわりなく、そして活躍することができる場、生涯現役社会、これを実現することが何よりも重要だと考えております。人口が減少していく中で、我々の国の成長力を確保していくためにも、これはとても大切なことだと考えております。
先ほど委員にもお話しいただきましたけれども、六十五歳以上の雇用者の数は、現在、平成二十七年で三百六十万人と、これは平成二年のときは八十一万人でして、ここからすごく勢いよく伸びておりまして、平成二十六年、三百二十万人ということで、一年余りで四十万人も伸びているということで、高齢者の皆様の活躍の場をどれだけ提供できるかというのが、我が国の力を伸ばしていく上では大きな力となってまいります。
これまでも、企業に対して、希望者全員の六十五歳までの雇用確保措置、これを義務づけるとともに、高齢者雇用の積極的な企業への支援、これをやっていこうということで、高齢者が働き続けることができる環境の整備を今までも進めてまいりました。
今回の法律の中では、六十五歳以上の方への雇用保険の適用の拡大、そして、先ほどお話に出ました就労時間規制の緩和によるシルバー人材センターの業務拡大、これに取り組んでまいります。
また、このほかには、ハローワークに高齢者向け求人専用の求人開拓員を置くことによる再就職支援の強化、これにも取り組んでいこうと考えております。
現在、実は、高年齢者総合相談窓口、これは平成二十七年で七十七カ所、全国的にもう既に設置されておりますけれども、平成二十八年度より、この名前を、今仮称でございますけれども、生涯現役支援窓口というふうにさせていただきまして、六十五歳以上の高齢者の再就職支援を重点的に取り組んでいこうと考えております。
ということで、六十五歳以上の高齢者の雇用、就業支援を充実させて強化していきたい、このように考えております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
今回の改正で、ますます高齢者の方々が元気で輝く社会がつくられることを祈っております。
続きまして、女性の方々についての問題です。
近年、働く女性の数はふえてきておりますが、出産、育児により離職する女性は約六割もいると言われております。出産、育児を経て、子育てをしながら仕事を続けたいという希望をお持ちの方が働き続けられる環境をつくっていくことは、女性活躍推進や少子化対策にとっても非常に大切な問題となってきております。
育児休業を取得する方もふえてきてはおりますが、育児休業を取得して継続就業している方の割合は、正規職員の方が四三%に対して、パートや派遣といった非正規雇用の方は四%と低い現状にあります。この現状の改善のためには、特に有期契約労働者の方が育児休業を取得しやすくしていくことが必要であると考えております。
今回の改正では、有期契約労働者の育児休業の取得要件を見直しておりますが、改正の趣旨と見直し内容についてお伺いいたします。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
育児休業は、育児を理由とする離職をすることを防ぎ、働き続けることができるようにすること、これが大切な制度であります。
現行の要件のうち、実は、子供が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることという要件については、これは労政審の方で、事業主にとっても労働者にとっても非常にわかりにくいという御指摘を受けました。有期契約労働者の育児休業の取得が進まない一因ではないか、こういう指摘も受けましたので、ここを今回改善していくことにいたしました。
ということで、子供が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれることという要件を廃止させていただきまして、育児休業は原則として一歳まで取得できる権利であることを踏まえ、休業から復職した後、一定期間、六カ月の雇用継続の可能性のある方、すなわち、一歳六カ月までの間に労働契約が終了することが明らかではない者であれば育児休業の対象とするということにさせていただきました。
一歳六カ月までの間に契約が更新されないことが確実でない方については育児休業を取得することができるように、このように配慮をさせていただきました。
このような取り組みによりまして、有期契約労働者の方々が安心して子供を産み育てながら継続就業できるような環境をこれからも積極的につくっていきたいと考えております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
働く女性のうち約六割、五六・三%の方が非正規雇用となっている現状を見ますと、今回の改正は大変意味があるものと思います。
また、お母さんになっても女性が働き続けられるようにするためには、単に制度があるだけでなく、制度を利用しやすい職場の雰囲気づくりがとても大切になってきていると思います。そのためには、妊娠、出産、育児休業を取得したことなどにより、いわゆるマタニティーハラスメントなどの精神的負担が女性にかからないようにしていくことが重要です。
今日まで、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法によって、妊娠、出産、育児休業を取得したことなどにより事業主が不利益な取り扱いをすることははっきりと禁止されていましたが、今回の改正では、それに加え、いわゆるマタニティーハラスメントの防止のための取り組みを事業主に義務づけることとしています。どのような効果を期待しているのでしょうか。
○香取政府参考人 御答弁申し上げます。
今先生御案内いただきましたように、妊娠、出産、育児休業等を理由とする事業主による解雇でありますとか、あるいは降格といった不利益取り扱い、これはもう既に法律で禁止をされております。
ですが、これもまた先生お話がありましたように、近年は、こういった事業主ではなくて職場の同僚ですとかあるいは上司ですとか、そういった方々からいわゆるハラスメントの行為があって職場の環境が非常に害される、そのことで就業継続が困難になったり、あるいは育児休業を取得することがいわば控えられるといったような事例があって、これが大変問題になっているということです。
今回の改正では、こういったことのために、妊娠、出産、育児休業等をした者の就業継続が困難とならないように、上司、同僚からの嫌がらせについてもこれを防止しようということで、いわば職場の環境をきちんと整えるという意味において、事業主が一定の防止措置を講ずるということを義務づけるということにいたしました。
もとより、一億総活躍社会の中では、妊娠、出産、子育てをしながら働いている方々、男性も女性もそうですが、そういった方々が就業継続できる環境をつくっていくということは極めて重要なことでございまして、その意味では、職場環境を害する行為、いわゆるマタニティーハラスメントはやはり非常に大きな問題になります。したがいまして、この防止措置をきちんと講ずることによって職場環境の改善を図っていくということを私どもとしては期待しているところでございます。
これにつきましては、法案成立後に、事業主に対するさまざまな指針等による指導も含めて徹底をしてまいって、こういった方々が就業継続しやすい職場環境というものを整備してまいりたいと思っております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございました。
マタニティーハラスメントの経験がありますかとお尋ねしますと、約二割の方が経験しているとの調査結果があります。それを雇用形態別に見てみますと、正社員の方が二二・三%となっている一方、派遣労働者の方は四五・三%となっています。このように、派遣労働者の方がマタニティーハラスメントの経験率が高くなっているという現状があります。
派遣労働者の方についても、派遣元、派遣先とマタニティーハラスメントが起こらないようにしていくことが重要と考えております。どのようにその実効性を確保していくのでしょうか、お伺いいたします。
○香取政府参考人 今先生御指摘いただきましたが、昨年、労働政策研究・研修機構におきまして調査をいたしました。
その調査結果によりますと、今先生お話がありましたように、雇用形態別の不利益取り扱い等の経験率を見ますと、派遣労働者は他の雇用形態に比べて非常に高い、四五%強の方が経験をされているということで、派遣の方についての就業環境の整備というのはかなり重要だということで、今般の改正案では、先ほど申し上げた上司、同僚からの嫌がらせを防止する措置、これについては、雇用している派遣元だけじゃなくて、派遣先の事業主にもこれを義務づけていくということ、それから、育児・介護休業法に基づいて行われております育休等の取得を理由とする不利益取り扱い、これにつきましても派遣先にも適用するということで、派遣労働者についても通常の直用の労働者と同じような措置を講じるということを盛り込んだところでございます。
この点に関しましては、二十八年度の予算案の中で、全国マタハラ未然防止対象事業、こういう名前の事業を私どもは盛り込んでおるんですが、この中で、事業主の方でありますとか人事担当者の方に対して説明会など集中的な広報を行うということで、法案成立の後、ちょっと集中的な啓発活動をやろうと思っております。
それから、さらに、本年四月から、各都道府県に置かれております労働局の組織の見直しを予定しておりまして、この中で、雇用環境・均等部という新しい組織を設けることとしております。
この組織を中心として、マタハラ等のハラスメントについての相談対応を行う、あるいは問題のある企業に対する指導、あるいは個別の問題についての紛争解決援助というものを労働局の中で一体的に行うという形で、こういったことが未然に防げるように、ハラスメント対策を総合的に進めていくということで取り組んでまいりたいと思っております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
子供と母を見守る地方自治、子供と母親を支え理解してくださる職場、子供とお母さんに優しい家庭と家族、利益追求という企業の宿命の中でも必ずこの考え方は伝わり、広がっていくものと確信しております。
次に、介護と仕事について質問を移らせていただきます。
人は年を重ねる中で、父や母の介護をしながらも、離職しないで済むようになってくれたらいいな、そういう働く方々の願いの声は大変大きなものがあります。今回は制度を大きく改正したと伺っております。
一方、介護はいつまで続くのか本当に先が見えないことや、介護の原因、疾患の程度、家族の状況など、人はそれぞれの事情を持っていらっしゃいます。さまざまであることから、仕事と介護を両立していくためには、柔軟に対応できるような制度が必要であると考えますが、今回の改正ではどのように対応しておられますでしょうか。
○香取政府参考人 介護休業制度でございますが、介護休業制度は、介護保険制度という公的な介護の制度があるということを前提に、御家族の方が休んでみずから直接介護をやり続けるということをいわばサポートするということではございませんで、介護保険その他さまざまな公的サービスを利用しながら、自分の仕事の継続と介護を両立させることができるようにということで準備をした制度でございます。
お話ありましたように、家族によって状態も違いますし、要介護される方の状態も違う、あるいは働き方も違うということで、介護サービスの利用の仕方や働き方についてはかなりそれぞれ状態が違うということもありますので、仕事と介護を両立させるという意味で用意しておりますこの介護休業制度側は、できるだけそういった多様なニーズに対応できるように、できるだけ柔軟なものにするということで、今般、かなり大きな見直しを御提案しております。
一つは、現在、介護休業は通算九十三日ということになっておりまして、一回とると、そこから九十三日ということになっているんですが、介護期間が長期化している、あるいは介護保険を使いながら介護をやり続けるということで、これを分割して取得する、介護が終わるまでの間で分割して使うことができるようにということで、三回まで分割してできるようにするということにいたしました。
それと、介護休業のほかに、年間五日、介護休暇というのがとれるんですが、これは今、一日単位ということになっておりますが、これも半日単位でとれるようにする。
あるいは、選択的措置義務というのがございまして、介護のために、短時間勤務でありますとか、あるいは柔軟な働き方でありますとか、先ほどの九十三日の休業とは別に、事業主側が何がしかの措置を講ずるという義務がございますが、これにつきましては、従来、この九十三日の間の代替措置だったものを、三年間の間に取得できるという形で延ばすということにいたしました。
もう一つは、介護が終わるまでの期間については残業の免除をする、申請によって残業の免除ができるという措置を講ずるということで、措置をいたしました。
これらの措置につきましては、いずれも労政審で議論いたしましたが、事業主側でいろいろな雇用管理等で対応できる範囲内でということでお願いしましたが、かなり今回は使用者側も理解を示していただきまして、かなり大幅な内容の改正ができたかというふうに思っております。
今後は、この制度をうまく使いながら、介護サービス等とあわせて、できるだけ多くの方々が介護離職をしないで、介護サービスを利用しながら就労を継続できるようにということで、我々も取り組んでまいりたいと思っております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
ただいま御答弁いただきましたように、今回の改正では、仕事と介護の両立支援制度について大幅な拡充が図られております。介護を抱えながら働く方々にとって、前にも増して利用しやすいものとなったのではないでしょうか。
忘れてはならないことは、育児・介護休業法は、業種や規模を問わず、全ての企業に義務づけられるものです。だからこそ、制度が拡充されると、中小企業にとっては労務管理の負担が大きくなるという苦しい課題がございます。円滑な施行に向けて、特に中小企業への支援策を講ずる必要があると思いますが、どのような対応を行う予定でしょうか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
仕事と介護の両立支援制度の見直しは、これは企業において円滑に実施していただくためには、改正の内容を周知徹底、これがとても大切になってまいります。
ということで、平成二十八年度の予算案では、企業が、社内研修の実施やリーフレットの配付、介護休業制度の周知、こういったことを徹底した場合に、介護支援取組助成金ということで、一企業当たり六十万円、これは企業規模に関係なく支給をさせていただきます。
さらに、これに加えて、中小企業につきましては、労働者の介護休業の取得や、その後の円滑な職場復帰に関する介護支援プラン、これを策定して導入していただきますと、そして、その方々が介護休業を取得した場合は、一企業二回までですけれども三十万円、そして、取得した方が復帰した場合は、一企業二回までですが三十万円ということで、助成措置等を盛り込ませていただいております。
このような取り組みによって、中小企業でも円滑に利用していただけるように支援していきたいと考えております。
以上です。
○堀内(詔)委員 ありがとうございます。
そろそろ時間が参りますので、最後の質問に移らせていただきます。
制度が充実しても、介護を理由とする離職を防ぐためには、働く方や事業主の方が介護休業制度や介護サービスについて十分御理解いただき、正しい情報を得ることができるようにすることが重要ですが、どのように取り組んでいくのでしょうか。特に、企業を通じた働く方への周知が重要だと考えますが、いかがでしょうか。
○香取政府参考人 先生お話ありましたように、育児休業と比べますと、介護休業は必ずしも認知度が高くないということもありまして、労働者の方が仕事と介護の両立を円滑に進めるためには、きちんとこういった介護等に関する情報が従業員の方に届いているということ、それから、何かあったときの相談の窓口がきちんとしているということが重要でございます。
この点に関しましては、一つは、市町村に地域包括支援センターというのがございます、こちらでさまざまな相談に応じているわけですけれども、こちらでの対応。それから、労働局においても対応しておりますが、今般、介護サービスでありますとか介護休業、福祉の側の制度と労働政策の制度ですが、共通のパンフレットというのをつくりまして、それを使って市町村サイドあるいは労働局サイドから情報提供したり、あるいは御相談に応じたりという体制を用意しようと思っております。
それからもう一つは、先生お話ありましたように、やはり直接相談するとなると、普通、大体、企業の中の人事部局ですとかいうところに御相談をされるということになりますので、それぞれの企業におかれまして、自社のさまざまな両立支援制度について従業員に周知をする、あるいは相談窓口を設置するということを積極的にやっていただくということをお願いしようと。
また、こういった取り組みをして、さまざまな形で事業主に対して、両立支援の取り組みをされた企業に関しましては一定の助成措置を講じるということで、そういったものを通じて企業の取り組みも支援して、市町村サイド、労働局そして企業、それぞれからさまざまな情報発信、相談を受けることでこの利用の促進を図ってまいりたいと思っております。
○堀内(詔)委員 ありがとうございました。
時間になりますので、これで終わらせていただきます。今回の改正によって、アベノミクスの果実が実りつつある中、一億総活躍、老いも若きも、老若男女、活躍できる社会になることを祈って、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○井坂委員 井坂信彦です。
皆様、遅い時間までお疲れさまです。あと三十分、おつき合いをいただきたいと思います。
本日は、政府が目指す失業なき労働移動ということについて、そして、後半、時間があれば、高齢者の今後想定される新しい働き方についてお伺いをしたいと思います。
まず、政府が目指す失業なき労働移動、これは成熟産業から成長産業への労働移動ということを意味しているのか、お伺いいたします。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
第四回の産業競争力会議におきまして、安倍総理の発言でございますけれども、成熟産業から成長産業へ失業なき円滑な労働移動を図る、このために、雇用支援策を雇用維持型から労働移動支援型へ大きくシフトさせていきたい、こういうふうに発言をなさいました。
これを受けまして、政府といたしましては、産業構造の転換に対応して労働者のスキルアップを図っていこうということで、成熟産業から人材を必要とする成長産業へ円滑な労働移動を行っていくこと、これがとても大切だというふうに考えております。
○井坂委員 ところが、今国会で問題になっている労働移動支援助成金、これは、平成二十六年度中に再就職支援を開始した、そして年度末までに無事に再就職できた方、六百五十一人、このデータをきょうは議論したいんですけれども、この六百五十一人は、結局同じ産業分類、つまり、同じ業界の会社に再就職した人が三百六十八人おられます。要は、半数以上が労働移動をしていないということになっているわけでありますが、大臣、これは、お伺いしますが、労働移動支援助成金の名前のとおりに、残念ながらなっていないのではないでしょうか。
○塩崎国務大臣 これは、個別に、子細に見てみないと、どういう企業に行ったのか、どういう業種のお仕事に行かれたのかは、今のざっくりした産業分類ではよくわからないんだろうというふうに思います。
例えば、同じ電機産業でもいろいろでございますし、企業はそれぞれございます。それぞれの企業が付加価値をどう上げて、収益力を上げ、生産性を上げていくかということが問われているわけでありますので、我々としては、全体としての生産性あるいは収益力を上げて競争力を増して、そして、そこで働く人たちの賃金を上げてもやっていけるだけの強い企業になってもらうことが大事なので、今お話がございましたけれども、同じ製造業の中でも、同じ産業分類の中でも、いろいろなケースがあり得るのではないかなというふうに思います。
いずれにしても、さっき申し上げたように、今回の助成金があるがためにリストラになったということではないということは、改めて申し上げたいというふうに思います。
○井坂委員 大臣、そうまでおっしゃるのであれば、同じ産業分類の中でも望ましい移動はあるかもしれない、逆にそういうデータはとっておられるんですか、労働移動がちゃんと果たされたというデータはとっておられるんですか。
○塩崎国務大臣 今のところは大分類で見ているので、細かなところは私どもとして持ち合わせていませんが、いずれにしても、労働組合との話し合いの中で再編計画ができるということを前提にスタートしたこの制度でございます。
〔委員長退席、秋葉委員長代理着席〕
○井坂委員 大分類では労働移動したかどうかはかれないと答弁されながら、大分類以外では成果測定をしていないということであります。
私は、やはり役所の仕事は、一事が万事、こういうことが多いと思うんですけれども、成果測定、ちゃんと政策の当初の目的が果たされているのかどうか、大分類で測定できないとおっしゃるのであれば、小分類で測定をすべきでありますし、それをしていないのであれば、大分類じゃわからないという答弁はされるべきじゃないというふうに思います。
加えて、別の政策ですけれども、求職者支援のための職業訓練受講給付金というものがあります。これは、実践コースというところで成長分野が指定されて、例えば、ITの訓練を受けた求職者は、就職に成功した人の七七%がIT分野に実際に就職している、医療事務は七八%が医療事務へ、介護福祉コースの人は九一%が介護福祉へ、デザインの人は六四%、トータル平均で七八%の人が訓練した分野に就職をしている。一方でこういう政策もあるわけであります。
私は、これはある程度狙った効果が出ているというふうに思いますが、にもかかわらず、平成二十三年、二十四年には利用者が年間十万人ペースだった政策が、徐々に減って、平成二十七年度は年間四万人ペースしか利用されていない。
大臣にちょっとお伺いしますが、これは細かい具体の政策の話はお伺いしませんが、要は、労働移動ということを真剣に目指すのであれば、私はやはり職業訓練を充実させるのが王道だというふうに思います。職業訓練なしで、早く再就職しろとだけやっていても、これは成長産業への労働移動は不可能だというふうに思いますが、大臣の政治家としての御所見を伺います。
○塩崎国務大臣 職業能力を新たにつけて転職していく、新天地に赴くということは、大変大事な論点だと思います。
私はそのとおりだと思いますし、これからは、よく言われているAIとかIoTとかいう時代の中では、今では想像できないような働き方の変化が出てくると思いますので、そういうときには、やはりみずからの能力を新たにつけるということは年齢にかかわらずやっていかなきゃいけないことだろうというふうに思いますので、御指摘はそのとおりだというふうに思います。
○井坂委員 私は、なるべく早い再就職というのはもちろん大事だというふうに思います。ただ、私は実は労働移動ということも大事だと思っておりますので、真剣にそれをやるならば、先ほど申し上げた成果測定もしっかりしながら、やはり、違う分野に移るということは、その間に新たな技術、能力の獲得というものは必ずあるはずですから、そこを抜きに再就職支援奨励金のようなやり方だけでやっていくと、あおられて早くは就職するけれども、結局もとの産業へというような形に、これは論理的にもそうだし、結果としてもそうなっているというふうに思うわけであります。
もう一点、この労働移動支援助成金についてですが、これは、再就職に成功した人、先ほど申し上げた六百五十一人でも、以前の給料よりふえたという人はわずか一一%、給料が八割以下になってしまった人が何と六五%、給料が六割以下というとんでもない状態になった人も二四%いらっしゃるわけであります。
この再就職先の賃金が平均で退職前の七五%という現状は、これは労働移動という何か横滑り、横移動のイメージとは随分違って、むしろ、一人一人の人生を真面目に見れば、人生を破壊しかねない大幅降格ではないかというふうに思いますが、大臣、問題は感じられませんか。
○塩崎国務大臣 先ほども申し上げさせていただいたわけでありますけれども、この制度自体は、もちろん失業をつくるためのものでもないし、むしろ移動を応援するということが主眼であるわけでございます。
今お話がありましたように、助成金による再就職支援の対象となった方で二十六年度末までに再就職された方の賃金、七五%程度ということがございますが、雇用保険を受給して再就職した方のうち、いわゆる一般の、失業されて再就職された方、この労働移動支援助成金の対象者と大体同じぐらいのもとの賃金水準の方について比較をしてみました。
そうしますと、離職前賃金に対する再就職後の賃金の割合というのは七一%となっておりまして、これが一般の、雇用保険をもらっていらっしゃる方が再就職した場合の数字でありますけれども、これだと七一でございますので、約七五というのは、若干それよりも高いということだと思います。
これらの賃金のデータは、離職前の賃金に超過勤務手当が含まれて、再就職後の賃金には含まれていないわけで、減少幅が大き目にやはり出てしまうということはあろうかと思いますが、現時点で、平成二十六年度の労働移動支援助成金による再就職支援の対象者のうちで、労働移動に伴って賃金が上昇した方が一一・一%おられるということで、決して多いというわけではございませんけれども、そういうケースもあって、産業構造転換に向けた政府全体のいろいろな施策の推進と相まって、賃金が上昇する形での労働移動の拡大を図っていくことが大事だというふうに思っているところでございます。
○井坂委員 平成二十六年度中に再就職支援を開始して二十六年度末までに再就職できた方、六百五十一名について、これまでデータを挟んで議論してまいりましたが、実は、平成二十六年度に労働移動支援助成金の対象となった方は三千三百四人おられます。そのうち、年度末までに再就職できたのが六百五十一人で、わずか一九%、正社員になれたのはわずか一四%という数字です。さらにもう一年たって平成二十七年十二月末になっても、いまだ非正規にすらなれていない未就職者がいまだ一八%残っているという状態であります。
先ほどは、無事にちゃんと二十六年度末までに再就職できた方のお給料も平均七五%まで下がっていますよという議論でありましたが、そもそも再就職自体もはかばかしくない。一年以上、一年半、二年近くたってもまだ一八%未就職者がいる、この政策において、いるということであります。
大臣、これは、失業なき労働移動とおっしゃいますが、失業なきという部分も結果としては看板倒れになっているのではないか。また、労働移動という部分も、残念ながら、大半は同じ産業に再就職をしておられ、こちらの部分も看板倒れになっているのではないか。このダブル看板倒れで、私は、狙った成果が出ているとは言いがたい状況だというふうに思います。
この政策、私は労働移動は必要だという立場でありますが、全く成果は出ていない、少なくとも狙ったとおりには出ていない、根本的に考え直す必要があるのではないでしょうか。
○塩崎国務大臣 何度も申し上げておりますけれども、我々は、やはり労働移動は産業構造の転換にとって不可欠であって、そのためにこそ、先ほど御提案をいただいたように、技能を磨く、新たに取得する、そういうこともやはり支援策としてセットでやるということも、もっと力を入れないといけないということで、基本的な方向性は、さらにこれは加速をしないといけないぐらいだろうというふうに思っています。
今の井坂先生からのお話も、先ほど来のお話も、この制度なかりせば、単純にリストラをされることになって、御自分でお仕事を、次の職場を探さないといけないということになっているわけでありますけれども、我々は、それをやはりバックアップして、できる限り早く次の職場を得られるようにする。
当然、御自分のエクスパティーズを大事にするようにすれば、大体同じようなところに、同じようなというのは、同じ自分のエクスパティーズが使える産業に行くのが普通でございますので、全然、全く違うところに行くということは余りないんだろうというふうに思います。
そういう意味で、私は、六百一人残っているじゃないかということで、これが失敗だということでありますけれども、しかし、むしろそれは、ポジティブな面も御評価をいただいて、八割の方が再就職できておられるということも大事な一面であるということをお考えいただき、いまだに再就職が決まらない方々については目いっぱいの応援をしていくということが、厚生労働省としても大事なんだろうというふうに思います。
○井坂委員 一年目で再就職が決まった人は一九%、二年目でようやく八割方決まってくる、こういう数字だというふうに思います。要は、失業なき労働移動とおっしゃるには看板倒れではないですかということであります。
加えて、労働移動というところで、先ほど、ほかの、ITとか介護とか別の政策とも比べましたけれども、大臣がやはりおっしゃるように、何もしなければ、それは、自分の能力の生きる、もとの産業に就職するというのが、これは当たり前の選択になってしまいますから、労働移動とおっしゃるのであれば、やはりその間には、きちんと明確な意図と、しっかり効果を持った職業訓練が必須であるというふうに思います。
そんな中で、今回、この労働移動支援助成金が、厚労省みずから適切ではないと今後通達を出さざるを得ないような使われ方をしたわけであります。今退職したら退職金を上乗せする、ただし、断ったら、あなたの次の仕事はあなた自身の職探しですよ、こういうふうに言われて、どちらを選んでも、結局、次の仕事を探さなければならない、こういうことが実際に起こったわけであります。
ここで大臣にお伺いいたします。
業務命令で職探しをさせられ、そして、仕事が見つからないと、業務の成績が悪いといって、それこそ解雇される。しかし、労働者みずからが自分の次の職探しを行うということは、これは労働契約法上の労務の提供にはどう考えても当たらないのではないかというふうに思います。これはもう言わずもがなで法律には書いていないと思いますけれども、実際、法律を幅広に解釈してこういうことが行われたわけで、この法律の中に、みずからの次の職探しというのは労働契約法上の労務の提供、労働には当たらない、入り得ないということを明記すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
〔秋葉委員長代理退席、委員長着席〕
○塩崎国務大臣 前回も近い御提案があったかというふうに思いましたが、働く人がみずからの次の職探しを命じられて職探しを行っても労務の提供に当たらない旨を労働契約法に明記するという御提案だったと思いますが、労働契約法というのは、釈迦に説法でございますけれども、民法に由来をいたします労働契約、民民の労働契約の原則や、確立をいたしました判例法理、いろいろな法理がありますけれども、これを定める基本法というふうに考えるべきではないかというふうに思います。
判例法理が確立をしていない事項についてどこまで規定できるか、慎重にこれは検討をしないと、みずからの次の職探しという言葉でも、なかなかこれはいろいろなケースがあり得るんだろうというふうに思いますので、これは労使双方の十分な合意形成をしていただくということが必要なのではないかというふうに思いまして、さまざまな課題があって、率直に申し上げると、なかなか一筋縄ではいかないというふうに考えているところでございます。
○井坂委員 大臣の今の御答弁ですと、自分の次の職探しというのが、レアケースであっても、場合によっては労務の提供に当たるケースもあり得るからということでしょうか。
○塩崎国務大臣 いや、そのようなことを申し上げたつもりは全くございません。
先ほど、これは岡本先生のときにお答え申し上げましたけれども、私どもは労働者保護を使命とする役所でございますので、当然、労働者の立場というものを守りたい、こう思っているわけであります。
先ほども申し上げたとおり、自分の再就職先を探せ、あるいは、先ほど、出向先を探せというようなことも含めてというお尋ねがございましたけれども、こういうことを人事権を濫用して命じるということは、これは明らかに不適切ではないのかというふうに思われますので、企業の労務管理が適切に行われて、働く方々が安心して働けるように、私どもは、啓発指導に用いられるパンフレットを既に改定することとしておりますし、企業に対する啓発指導はしっかりと行っていかなければなりませんし、もう既に、先ほど来、理事会提出資料の中での対象企業についても、二回にわたって啓発指導を行ったところでございます。
○井坂委員 大臣、その出向先を探せというのは、自分の、あなたの次の仕事を探しなさいというのとは、もう一段階、私は違うと思うんですよ。出向先を探せというのは、本当にごくごくまれに、ある種の営業活動みたいな要素が入り得る可能性は私はゼロではないかなというふうに思いますけれども、少なくとも、あなたの次の仕事、あなたがこの会社をやめて次に行く仕事を探しなさいというのは、これはもうどう考えたって労務の提供になり得ないし、もしそれが労務の提供になり得るんだったら、求職者イコール労働者ということになって、とてもおかしなことになってくるというふうに思います。
ですから、出向先とまぶされましたけれども、出向先の話はきょう議論しておりませんので、あなたがこの会社をやめて次に行く仕事、次に行く職場を探しなさいというのは、これは労務の提供、労働には当たらない、これは多分、もうこの中で誰もがそう思っている、言わずもがなの当たり前だから法律に書いてないんですけれども、今回、法律が悪読みされてこういうことが起こっているわけですよ。立法事実があるので、いっそ書いたらどうですかというふうに思うわけです。これは判例法理がなきゃわからないとかの話じゃないと思います。大臣、いかがですか。
○塩崎国務大臣 これは、言うまでもないことで、釈迦に説法でございますけれども、この労働契約法というのは、先ほど申し上げたとおり、労働契約の原則とか判例法理を定めたものでありまして、もともと、この労働契約は民民の契約でございます。その中で、どういう形で、人事権を濫用までして、今先生は労務ではないことを強要しているということをおっしゃっていますが、そういうことをやっているのかということは、それぞれの状況に応じて、やはり会社側と働く方御本人との間でいろいろなやりとりがあろうかと思います。
それを、今先生が表現をされた言葉で全て法律になれるかというと、なかなかそれは、そういうことにはなりませんので、やはりここは、民民のことは司法に判断をいただくというのが大原則でございますので、そこは、我々は逃げているわけでも何でもないわけで、必要なときに啓発指導は間違いなくやるということが私たちとしてのとるべき政策手段だというふうに考えております。
○井坂委員 ちょっと話が戻ってしまったんですけれども、要は、最後、ケース・バイ・ケースで司法の判断だとおっしゃるということは、大臣の頭の中には、次の仕事を探すのが労務だ、労務の提供だ、労働だと言い得るケースがあり得るというふうに思っておられるからそういう答弁になるんですね。
○塩崎国務大臣 全くそんなことは申し上げておりませんで、先ほど申し上げたように、人事権を濫用して自分の再就職先を探せと命じることは不適切だということを申し上げているわけでありまして、ただ、いろいろなケースがあり得るわけでありまして、それは行政の私ども厚生労働省が判断をして決め込む立場にはないということで、民民の問題について行政がいきなりやるような官僚統制、社会主義国家では日本はないというふうに思います。
○井坂委員 民民の契約でも、法律でちゃんと最低限の枠が定められて、その中で契約が行われるわけですよ。そんなことを言い出したら無法地帯になってしまいますから。
普通はこんな言わずもがなのことは書かなくたっていいわけでありますけれども、実際こういうことが起こって、ちょっと大臣の御答弁だと、そういう職探しが労務に当たるケースもあるということが念頭に多分おありでそういう答弁になるんだろうというふうに思いますけれども、私はやはりいろいろ考えてもあり得ないというふうに思いますから、あり得ないことはあり得ない、これは労務の提供ではないと書いても、はなからあり得ないことをただ要は確認のために書くだけの条文になりますから、民間を縛る要素は一切ないというふうに私は思いますよ。
あと二点議論したいんですけれども、大臣は、では、実際、厚労省に責任があるなしは別にして、こういう王子ホールディングスさんのような、中で納得のいかない退職ということになってしまった方に何か手だてはないのかとお尋ねをすると、個別労働関係紛争ということで、それの紹介、説明ぐらいならできますというふうに答弁をされました。
この個別労働関係紛争の法律第三条には、都道府県労働局長は、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者、事業主に対して、情報提供、相談その他の援助を行うものとするというふうに書いてあります。
この「その他の援助」というところを読んで、王子ホールディングスに、今後ほっておいたら個別のあっせんが多発しますよ、そんな個別あっせんを労働者一人一人とするよりも、企業として一定の方針をまず示されたらどうですか、こういうアドバイス、これは何ら法に違反しないので、厚労省が王子ホールディングスに私はできるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第三条について御説明いただきましたけれども、これは、働く方や事業主から照会があった場合に、その照会内容に応じて法令や裁判例の情報提供をしたり相談に乗ったりするということで、関係する機関に取り次いだり、そういった趣旨の規定でございます。
現在、御指摘の会社から退職された方から相談がなされているということはございませんけれども、相談が仮になされた場合は、必要な情報提供を行うとともに、個別労働紛争解決制度の助言や指導、あっせんを促していきたいというふうに考えております。
また、このたび、御指摘の会社から退職された方に対するヒアリングの検討を行っているところであります。その中で、個別労働紛争解決制度について周知を行うとともに、御本人がこの制度の利用を望まれる場合は、お一人お一人丁寧に対応していきたい、このように考えております。
○井坂委員 この法律をよく読むと、別にあっせん制度を使ってください使ってくださいと紹介する趣旨ではなくて、むしろ個別労働紛争の未然防止、それから当事者間での自主解決が目的になっているわけですね、この第三条の部分は。何か、窓口に来ないとこれが発動しないなんと読める部分は私は一個もないと思います。
まず、窓口に来なきゃ何で発動しないのか。別に制度の紹介だけなんて全く書いていなくて、要は未然防止のための援助をしたらいいと思うんですよ。いかがですか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の三条のところなんですけれども、やはり、これは積極的にこちらから働きかけるということではなくて、ある程度、照会内容に応じて、相談に乗ったり、関係機関に取り次いだり、情報提供をしたりということで、未然に防ぐということでこちらがアクションを起こして、どういった形でアクションを起こしていっていいのかという基準もはっきりしないところでございますので、まずは御相談を受けて、それで対応を考えさせていただくということになると思います。
○井坂委員 同じく、四条に、都道府県の労働局長は、個別労働関係紛争に関して、当事者の双方または一方から解決につき援助を求められた場合は、必要な助言または指導をすることができると書いてあります。
これは、仮に労働者側から相談があった場合も、企業側、労働者側、どっちにも指導助言ができるという内容だというふうに伺っておりますが、そのときに、指導助言の内容が、要は、Aさんが何か助言を求めたときに、Aさんとこの王子ホールディングスとの一対一の関係の、ここだけを指導助言しなければいけないというふうには特に読めないというふうに思います。類似の、要は、Bさん、Cさん、何十人も同じことを王子ホールディングスはやっているわけで、Aさんから相談があったら、王子ホールディングスに対して、まずは対Aさんのことを指導助言すべきだと思いますが、同時に、あなた、Bさん、Cさん、何十人も同じことをやっているでしょうと。
ここの部分は、また別途、別に訴えがなくても企業としてちゃんと真面目に対応してくださいよ、私、これぐらいの指導助言は現行法でできるというふうに思いますが、大臣、これは通告どおりですが、いかがですか。
○塩崎国務大臣 まず第一に、今の個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の第一条には、「この法律は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争について、あっせんの制度を設けること等により、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。」こうなっておって、今の三条、そして四条で、「双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、」ということで、「個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をする」ということになっているわけで、この助言指導は、法違反の是正を図るために行われる行政指導とは性格が異なるわけでございまして、個別労働関係紛争は、先ほど来ずっと申し上げているように、民民、私人間の問題でございまして、当事者の求めに基づいて実施をすることが前提というふうになっています。
個々の労働者からの申し出を受けてということが基本だろうと思いますけれども、あらかじめ行政が事業主に予防的な助言指導をすることは、この法律の枠組みの中では予定をされておりません。
ただ、何もしないのかといったら、そんなことはなくて、既に二回にわたって、この会社には啓発指導も、呼んで、やっているわけでございまして、これは行政法規に基づく指導とはやはり違うわけでございます。
このたび、今御指摘の会社から退職された方に対するヒアリングを検討しているところでありますので、その中で、先ほど来申し上げているように、まずADRの制度を周知するとともに、制度の利用を望まれる方にはやはり丁寧に対応をして、何が一番いい方法かということも含めて、御相談にあずかっていきたいというふうに思っております。
○井坂委員 もう終わりますが、昨晩、すごくがっかりしたことがありました。当局の方にこういう質問を投げかけたら、いや、難しいと思います、ただ、難しいと言える根拠が思い当たらないので、ちょっと根拠をきちんと調べてお答えしますと、電話口でそういうやりとりだったんですね。
それは、法律を、できない理由を探そうと思えば幾らでも見つかるというふうに思います。ただ、一方で、特に強制性のない指導助言ですから、なるべく幅広に解釈をして、やろうと思えばできることだっていっぱいあるというふうに思うんです。ぜひ、法律を最大限解釈して、できない方向じゃなくて、本件は、何ができるか、何ならできるかという、親身になって救済に当たっていただきたい、このことだけお願い申し上げて、終わりにいたします。
どうもありがとうございます。