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議会報告:議事録

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190-衆-厚生労働委員会-3号 平成28年03月09日

○初鹿委員 おはようございます。維新の党の初鹿明博です。
 安倍政権は、女性の活躍ということを言っておりますが、女性が活躍をしている、そういう職場である美容業界、また、女性の方が活躍するためにきれいになりたいということで通う美容業界の件で一つ質問をさせていただきます。
 お手元に新聞の記事をお配りしているんですが、まつげエクステについてです。
 結構この委員会は女性の委員の方が多いので、女性の方はまつげエクステは知っていると思いますが、とかしき副大臣はやったことありますか。

○とかしき副大臣 私、化粧品メーカーに勤めておりましたけれども、残念ながら、したことはございません。

○初鹿委員 やったことないということですが、恐らく議員さんの中でも経験したことがある方はいるんじゃないかと思いますが。
 この記事にありますけれども、二〇〇八年から、それまでは特に資格なくやっていたものが、健康被害が多いということで、美容師免許を義務づけるということがされたわけです、通達が出されて。それ以降、かなり厳しく取り締まりがされて、無許可でやっているような、美容師免許を持たないで施術をしているようなサロンはなくなったんです。
 ところが、この記事にあるとおり、最近、考える人がいるんですね、セルフ方式といって、自分でつけるやり方を教えますよと。教えるだけだから、さわらないから美容師法に抵触しませんよなどと言ってやり始めている。
 しかも、本当は資料を添付したかったんですが、いろいろ問題があって添付をしてないんですが、ある、協会と称しているんですが恐らく一般の事業者なんですが、そこは、インストラクター養成講座といって、教える講座を、やる人を養成する講座をつくっているんですよ。そこのホームページにはしっかりと、当協会はセルフまつエク、自分でつけられるようになるための技術を教える講座ですので、講座内でインストラクターがお客様に触れることは一切ありません、よって美容師免許も不要です、二〇一四年十二月二十六日、保健所確認済みと書いてあるんですよ。これは、一日、たった四時間講習を受けるだけで教える側になれますよ、そういう講座を開いているんですよ。
 私は、これは不適切だと思うんですよ。少なくとも、美容師免許を取るのには、学校に行って、それなりの時間と労力をかけて試験に受かって、美容師になって、それでまつげエクステの施術を行っているわけですよね。そういうきちんと資格を取った方がやっている一方で、こうやって抜け道的にやるのを認めるのはいかがなものかと思います。
 先般、質問主意書を出したんですけれども、非常にそっけない答弁だったので、改めてここでもう一回質問させていただくんですけれども、このように、教える行為、そしてさらに、素人が教えて、教わった人がまた教える側に回る、これがずっと続いていったら、そのうち、自己流のやり方で教えて健康被害が出てしまうんじゃないかなと懸念するんですよ。確かに、自分でやるわけだから自己責任かもしれないけれども、でも、やはりその可能性があるんだったら、とめるのが私は厚生労働省の仕事じゃないかなと思うんです。
 美容師養成施設指定規則というのがあって、美容師の免許を取るために養成機関に行く、その規則によると、美容理論や美容実習の先生になるためには、美容師免許を受けた後、三年以上の実務に従事した経験のある者であって、厚生労働大臣の認定した研修の課程を修了した者、もしくは、美容師の免許を受けた後、九年以上実務に従事した経験のある者と。教える先生は、実務経験、かなり厳しく言っているわけですよね、美容師になる人に教える先生は。ところが、素人に教える人は素人でいいというのはやはり理屈に合わないような気がするんです。
 ですので、この講座を教える人は美容師に限るというふうにしないといけないんじゃないかと思いますが、大臣、御見解を伺います。

○塩崎国務大臣 今先生御指摘のような講師、個人に教えるという講師でありますが、これが美容師免許を必要とするかどうかということについて、質問主意書も頂戴をして、お答えをしているわけでありますけれども、個々の営業する行為が、美容を業とする者が行う行為である施術に該当するかどうかを個別に判断する必要がございます。
 となると、一概にお答えすることは難しいということだと思いますが、大事なことは、健康被害が起きるかどうかとか、そういうことが私ども厚生労働省としては一番大事なことで、美容師の免許にしても、これは生活衛生の観点から、国民を守るということでやるわけでございますので、そういう点については、もちろん絶えず感覚を鋭くしていかなければいけないと思っています。
 今、消費生活センターというのがございますが、現時点において、セルフまつげエクステンションの講座での健康被害が消費生活センターに報告された事例はないと聞いているわけでございます。
 健康被害情報を注視して、消費者庁とやはり我々厚生労働省は連携をして、必要に応じて国民への情報提供に努めなければならないと思いますが、まず一つは、法治国家である日本としては、法律の枠の中でどういうふうな整理ができるのかということを考えてみると、今申し上げたようなことで、一概にお答えすることはなかなか困難であるということで、美容を業とする者に当たるかどうかということについて、個別に判断すべきではないかというふうに考えているところでございます。

○初鹿委員 一つ一つ見て、それで仮にさわっていたら、これは美容業に触れるということでアウトですよ、そういう趣旨のことを今説明されたんだと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、やはり、教える行為自体も、資格を持っている人がやる必要があると私は思いますし、このような脱法行為をして、資格を持っていなくても同様のことがやれるというのを認めてしまったら、一生懸命勉強して資格を取った人の仕事をやはり侵害していることになると思うので、私はもう少しきちんと検討していただきたいと思います。
 確かに、消費生活センターにまだ苦情がないということですけれども、これは講座で直ちに健康被害があるわけじゃなくて、やり方を教えているわけですから、自宅に帰って自分でやり出して、そこで健康被害が出てくるわけですから、そのときに、講座が原因だったのか、自分が技術が足りなかったからこうなったのかということになったら、恐らく後者でそういう申し立てをしていないのではないかなと推測もできますから、必ずしも、今の時点で報告がないから健康被害が起こっていないということではないということを指摘させていただいて、もう少し何らかの方法はないか検討をお願いして、次の質問に移ります。
 次は、今度はタトゥーなんですよ。タトゥーが今問題になっております。
 彫り師の方が略式起訴をされたんです。何でかといったら、タトゥー、入れ墨を入れる行為は、厚生労働省が、医業だと。医療だから、医師法違反だということで起訴をされました。
 この彫り師の方、そのまま罰金を払ってもよかったんだけれども、いや、このままだとタトゥーの文化が廃れていってしまう、それに、今まで法律に明文規定もないものが、ある日突然、一枚の通達で仕事が全くできなくなるというのは職業選択の自由に反するんじゃないか、また、芸能人やスポーツ選手でも、今はタトゥーを入れている人はたくさんいますから、そういうファッションとして入れたい方の、それこそ幸福追求権を侵害するんじゃないか、憲法違反の疑いがあるんじゃないかということで、これは訴訟を起こしているんですね。
 お伺いしたいんですけれども、大臣、医療というのは何ですか。

○塩崎国務大臣 大変広い概念であろうと思いますけれども、狭義に考えれば、やはり、人体に侵襲を加えるということが医療の本質ではないかというふうに思います。

○初鹿委員 辞書で調べると、「医術・医薬で病気やけがを治すこと。治療。療治。」と書いてあるんですよ。要は、病気やけがを治すことが医療だと思いますし、多くの人はそう思っていると思いますよ。
 入れ墨を彫るという行為は、何か病気を治している行為でしょうか。治している行為じゃないと思います。治していることではないと思います。
 古代の時代から、これは卑弥呼の時代からずっと世界じゅうでやり続けられている行為であって、そして、また最近のタトゥーとか、見ていただければわかりますけれども、非常に芸術的なわけですよ。これを医療だといって、では、お医者さんがタトゥーを彫れますか。彫れますか、彫れないですよ。なぜなら絵を描けないからですよ。ですよね。絵が描けないわけですよ。要は、だから、医者の世界と別に競合しているわけでも何でもないわけですよ。それを医療だといって規制をするのは、私は少しやり過ぎではないかというように思うんです。
 海外の例を調べてみました。そうしたら、海外は、私が調べた限りでは、医療としているところは一つも見つかりませんでした。ただ、例えば、アメリカだと、州によって異なるんですが、ライセンス制にしていて、きちんと規制をかけております。イギリスは登録制で、衛生環境等で規制が定められていて、監督官庁に立ち入り権限が認められているわけですね。また、イタリアも、これは規制はないんですけれども、法律はないんですが、ガイドラインがある。フランスは届け出制だということですし、また、オランダもライセンス制。また、オーストラリアもそうなんですね。
 そういうことを考えると、医療として規制をするんじゃなくて、海外の例のように、きちんと法律を別個つくって、それで届け出制なり許可制なり、または免許制でもいいですけれども、きちんと管理をするようにしたらどうなのかなと思うんですよ。
 一部、和彫りの彫り師の方が暴力団と関係があるとか、そういうことが過去、事件になったり指摘をされたりしたこともありますが、ちゃんと許可制にすれば、そういうことは要件にしてこれを排除することもできると思うんですよ。今このまま医療だといってそのままにしていると、どんどん地下に潜ってやるようになります。
 実際に、これはもともと、発端はアートメークなんですが、アートメークから始まっているんですが、アートメークをやっているエステサロンに二十件ぐらい電話をかけてみました。アートメークをやっているところに、私じゃなくてスタッフにかけてもらいましたが、ほとんどのところが、アートメークはやっておりまして、医者じゃないけれども経験をした人がやるので大丈夫ですと答えていました。
 結局、こういう、規制をしてもそのとおりになっていないわけですよ。それを追っかけていって全部取り締まりをするのではなくて、別個の法律をつくればいいじゃないですか。例えば、医療と似たような行為で、はり、きゅう、あんま、マッサージや柔道整復というのは、それぞれ別の法律をつくって、医業類似行為だということで法律で認めていますよね。それと同じような観点に立って、入れ墨の彫り師についても何らかの法律をつくって、きちんと許可制にして、業としては認めていくという方向を検討してもいいのではないかと思いますが、大臣の御見解を伺います。

○塩崎国務大臣 先生からこの御質問をいただくということで、私も厚労省の中でいろいろ議論をしました。
 個別の事案は、もちろん、私は判断をする、コメントする立場にはございませんが、今の解釈は、入れ墨行為というのは、針先に色素をつけて皮膚の表面に墨などの色素を入れ込むという、侵襲をする、そういう行為であって、当然、保健衛生上の問題が起こり得る、感染症になる、そういうおそれがありますから、全く医師免許を有しない者が業として行えば、医師法第十七条に違反するものと考えるという考え方自体はあり得ることだということだと思います。
 今はそういう理解で行われているということでございますが、しかし、おっしゃるように、一つの言ってみれば文化的な側面もあると考えられるわけで、もちろん、銭湯なんかに行きますと、入れ墨をした人は入ってもらったら困ると書いてあるような社会的位置づけでもあるということでありますが。
 いずれにしても、私どもとしては、国民的にどういう考えで整理すべきなのかということを議論していただき、また、先ほど、柔道整復師とかそういうことの例が取り上げられましたが、それぞれの方々はそれぞれの団体としての声を上げられていろいろ議員立法などがなされたということも考えてみると、どういうニーズがあるのかということは、当事者あるいは関係者、こういった方々がどういうふうに考えているのかということを押さえるとともに、社会の中で今申し上げたような位置づけになっているということも含め、しかし一方で、今、先生が御指摘のように、世界でもいろいろ扱いがそれぞれの国によってあるように、それぞれの文化で対処しているわけでありますから、そこのところは議論を深めていただくということが大事なのかなと私は個人的にも思いますし、きょう、厚生労働省の中で議論したときも、そのようなことだというふうに思いました。

○初鹿委員 恐らく、初めてこういう質問を受けたので即答できないと思いますが、この質問をきっかけに、少し検討していただきたいと思うんですよ。
 これから二〇二〇年に向けて、オリンピックを招致することで外国人もたくさん来るわけですよね。オリンピックの選手でも、入れ墨をしている選手はたくさんいますよ。日本の芸能人でも、ちょっと調べたんですけれども、宮沢りえさんだとか浜崎あゆみさんだとかもしているわけですよ。サッカー選手の澤穂希さんもしているし、ベッカムとかもしているわけですよ。
 そういう方が来て活躍をしたら、ではこのワンポイントの入れ墨をしてみたいなという人がふえてくる可能性も高いわけじゃないですか。それに、そういう観光客の人たちが、では温泉に入るだ何だといったときに、入れ墨だからだめですよといつまでも言っている時代じゃなくなってきていると思うので、これを一つのきっかけとして議論を深めていって、できればきちんとライセンス制みたいなものをつくって、衛生管理や、また、暴力団などが排除できるような仕組みをつくっていただきたいということをお願いさせていただきます。
 では、次の質問に移ります。
 次の質問は、先般から問題になっております労働移動支援助成金についてでございます。
 きのうも岡本充功議員から本会議場で質問をしておりますが、私も、この事案を聞いたとき、本当にびっくりいたしました。人材会社が、企業に対して、こうやってやったら退職させられますよという指南をして、そのやめた人を自分のところで職業紹介をする、そして国から助成金を受け取る、こんなマッチポンプみたいなことが行われている。本当に驚きですよ。まさに国がリストラの後押しをしたと言われてもおかしくない、そういう事業だと思うんですね。
 この助成金が拡大をしていった発端は、先般、大西委員も予算委員会で指摘しましたけれども、二〇一三年三月十五日に産業競争力会議で、人材派遣会社最大手のパソナグループの会長である竹中平蔵氏がこうやって発言しているんですよ。今は、雇用調整助成金と労働移動への助成金の予算が千対五くらいだが、これを一気に逆転するようなイメージでやっていただけると信じていると。少なからず、この発言は一つのきっかけになって、雇用調整助成金の予算が減らされ、労働移動支援助成金の予算がふやされていくことになっていった、これは間違いない事実だと思います。
 私は、厚生労働省がこれまで、リーマン・ショックや大不況があったときに、雇用調整助成金という制度をつくって、雇用を守ろう、特に中小企業の方を頑張って支えて、首を切らないでくださいと頑張ってきた、これは物すごく評価をしていますよ。ところが、今回、この発言から見ると、雇用を守るということはもうやらなくして、やめる方向にして、今後は、やめることはもうしようがない、やめた後の再就職の支援をしようということに完全に転換したというふうに感じるんですね。
 この点について、大臣はどう考えているんですか。もう雇用を守るということは必要ない、とりあえず一回やめてもらってその後再就職先が見つかればいいんだ、そういう判断をしているということでよろしいんでしょうか。

○塩崎国務大臣 私も、日本銀行に勤めて長らく経済政策をやって、連鎖倒産防止とかいろいろなことをやってまいりましたが、経済の局面によって必要な政策というのはそれぞれあるんだろうというふうに思います。
 実際、リーマン・ショックの際に、私も地元で工業団地なんかを一軒一軒歩いてみて、またその中の私の友人などの経営者から聞いてみて、雇用調整助成金がああいう際に機能するということは十分あり得る、つまり、緊急避難的に雇用を守るということに役立つということは、私もあの際にもよくわかりました。その後、努力をして、その会社は、調整助成金から脱して、そして別な方向で新しいフロンティアを開いて、今隆々と事業を展開しているということになって、それにはまた別な政策的な支援を使っているというふうに思います。
 したがって、雇用調整助成金的な、緊急避難的に雇用を守るという政策は当然持ち合わせていないといけないと思いますが、しかし、それに頼り過ぎて産業構造の転換ができないという反省が大きかったということが問題なので、リーマン・ショックみたいなところから脱した後は、これからは、失業なき労働移動で、むしろ付加価値の低い産業から高い産業に、産業構造も移り、同時に、働く人たちもスムーズな形で移行していく、それを応援していくということが大事だねということなので、いずれも大事なものだというふうに思います。
 今、決定的に私どもが大事なのは、やはり、他の国には絶対負けない産業構造を新たにつくり直していくという、かつて、第三の矢、新三本の矢じゃなくて古い方の三本の矢の三本目についてこの政策を進めていくことが大事で、その中の一つとして、失業なき労働移動ということでこの労働移動支援助成金というのが考案されたというふうな理解だというふうに私は思います。

○初鹿委員 そうではなくて、やはり、雇用を継続していくということは私は最優先に考えるべきだと思うんですよ。確かに、今、景気がある程度好転して雇用状況が改善しているから、雇用調整助成金を使う必要がなくなっていると思いますが、また再びリーマン・ショックのような大きな不況が来たときに、私はやはり、雇用調整助成金のような仕組みというのは非常に有効だと思うんですよ。これを、竹中氏が言っているように、千対五くらいの力の入れ方を変えろと言っているわけですから、逆に、千対五になって労働移動支援助成金だけにシフトをしていってしまうと、私はどこかで間違うのではないかなというふうに思いますので、その辺は少し考えていただきたいと思います。
 不況になったときはきちんと雇用調整助成金を増額して対応する、まずは雇用を守るということを中心に考えるということをしていただきたいと思いますが、いかがですか。

○塩崎国務大臣 それは、先ほど私が全く同じことを申し上げたとおりで、局面によって政策というのは使い分けていかなきゃいけないのであって、中長期的に労働移動をして付加価値の高い産業構造に移っていくということは必ず大事なことであって、ただ雇用を守るということだけでその雇用が長い間守れるかどうかということを考えてみると、それは必ずしも、全てを守れば全てがそのままずっと中長期的にも守られるということには決してならないというふうに思います。
 そこは局面ごとに使い分けるということで、雇用調整助成金を廃止したわけでも何でもありませんから、リーマン級のものが来たら、我々は雇用を守るためにあらゆる手を尽くすということは当然でありますけれども、同時に、中長期的にも雇用が守れるような産業構造にしていくための労働移動を支援していくということは、必ずやらなければいけないことだというふうに思っております。

○初鹿委員 きのうの質問の答弁についてちょっと伺いますけれども、きのう岡本議員から、民間人材ビジネス会社が、この制度を利用して、企業に退職勧奨を行うことを提案しています、このようなリストラ提案型営業は、民間人材ビジネス会社の仕事として適正なものでしょうか、見解を求めます、そういう質問に対して、大臣は、職業紹介事業者がみずから退職者をつくり出すようなことは事業の趣旨に反するものであり、働く方に対して自由な意思の決定を妨げるような退職強要を実施することは適切ではないと言っておるんですね、まず一点目で。その次に、企業に対して積極的に退職勧奨の実施を提案することも好ましくないこと等の通知を発出すると答弁しています。
 最初の方は、退職強要を実施することは適切でないと、適切でないという言葉を使っているんですが、次は、退職勧奨の実施を提案することは好ましくないという表現になっているんですよ。これは、不適切、適切ではないんじゃないんですか。
 厚労省が好むか好まないか、それはどうでもいいでしょう。好ましくないけれども、不適切だとは言われていないから、別に厚労省に好まれたいと思わないからやりますよという企業が出てきてもそれは構わないということですか。私は、ここは適切ではないという通知にしないとならないのではないかと思いますが、いかがですか。

○塩崎国務大臣 ここは表現の問題で、今先生おっしゃるように、適切ではないというふうに言いかえても構わないというふうに思っております。

○初鹿委員 適切ではないというふうに大臣も判断をしているということですよね。そういう理解をさせていただきました。
 その適切ではないことを行って、今回は助成金をもらっていたわけですよね、人材派遣会社、そして王子ホールディングス。今回の例は王子ホールディングスですが。
 この後、ではどういう対応方針にするんですかと言ったら、こういう人材派遣会社と積極的にかかわっていた企業がわかった場合は助成金の支給をやめるということを決めたということですが、そういうことですよね。助成金は支給しないということでいいんですよね。

○塩崎国務大臣 退職強要するような会社が助成金を受け取るというようなことがあれば、それは対象としないということにしたい、不支給とするということにしようと思っています。
 この助成金の支給に当たっては、再就職支援会社が、退職者をつくり出すという一方で、その方に対する再就職支援サービスを受託するということがないように、これまでももちろん、再就職支援会社から退職勧奨を受けなかった点について退職者本人に確認署名を求めるということ、それから、企業が作成した再就職援助計画について労働組合等の同意を得るということは支給要件としてやってきたわけでありますが、さらに、来年度からは、この趣旨、目的を一層明確にするために、再就職支援会社が退職コンサルティングと再就職支援サービスを行う場合については不支給とする旨を要件として定めて、支給申請書上でこれを確認していく方針としたところでございます。

○初鹿委員 その方針自体はいいと思うんですけれども、でも、これまでやってしまったところはやり得だと思うんですよ。これからもらえなくなるけれども、今までもらっていなかったものがもらえないだけで、別に痛くもかゆくもないわけですよ。でも、もう既にもらっている分はそのままもらえるわけですよね。
 退職を強要された労働者の方は、強要されて仕事がなくて大変な思いをしているわけですよ。ところが、こういう不適切、違法に近いような退職強要をして労働者の首を切った会社、また、それをマッチポンプのように後押しした人材会社は何のペナルティーもないというのは、私は解せないんですよ。
 これは、ペナルティーなしでいいんですか。紹介事業会社は許可事業ですよ。国の許可事業ですから、例えば、許可を取り消すとか、それが難しいというなら、更新の際に更新をしない事由にするとか、何らかのペナルティーを科さないと、やり得で終わっちゃっているんですよ。これでよろしいんでしょうか。

○塩崎国務大臣 一つ申し上げておかなければいけないことは、先ほど先生おっしゃるマッチポンプのようなことをやった場合のこの助成金の扱いについては不支給とするということを要件に明確にするということが大事であって、今まで要件にそのことが明確に書いていなかった。ですから、言ってみれば、この制度を、私どもの政策意図、政府の政策意図と反する形で使われてしまったということで、ですからそれを、言ってみれば、そういう間違った使い方をしていただかないように要件を明確にするということが第一だというふうに思います。
 したがって、根拠なく免許を取り上げるとかなんとかいうようなことにはなかなかなりにくいのではないかというふうに思うわけでございます。
 私どもは、やはりこういうことが、何が好ましくないのかということをしっかり明確にしていかなければならないというふうに思うわけでありまして、この再就職支援会社というものが退職強要に該当するような行為のマニュアルを企業に提供したりすることは適切ではないということ、それから、企業の労働者に対して、みずから直接退職勧奨を実施するということも再就職支援会社として好ましくないということなどを通知として明確にすることで発出を今検討中でございまして、その内容の周知徹底を図ることでこのような事案の発生の防止に努めるということ、それから、それらの行為を把握した場合にはしっかりと指導をしてまいらなければならないというふうに考えているところでございます。

○初鹿委員 先般、部門会議に出席していただいた労働弁護団の棗弁護士が指摘をしておりましたけれども、有料職業紹介事業の許可基準を規定している職業安定法第三十一条一項三号に、申請者が、当該事業を適正に遂行できる能力を有することとあるんですね。
 適正に遂行するということですが、不適正なことをやっていたら、やはりここに抵触するということで許可の取り消しとかをしても私はいいのではないかと思うんですよ。ちょっとその辺もぜひ検討していただいて、このまま何にもペナルティーなしということはしないでほしいなということを指摘させていただきます。
 次に、では、退職強要をした企業の側についても同様だと思うんですよ。何のペナルティーも今のままだとないんですよ。
 この企業、王子の場合はひどいですよ。早期退職、ここで退職するんだったら退職金は上乗せしますよ、会社都合にしますよ、でも、ここで認めないんだったら、テンプスタッフに出向してもらって、自分の仕事を探す業務をやってもらいますよと言っているんですよ。
 自分の仕事を探す業務、これは適正な業務命令ですか、雇用契約上認められるんですか、大臣。

○塩崎国務大臣 リストラ企業の行為について今お尋ねがあったわけでございますが、一般に、企業というのは、従業員に対して無限定に業務を命ずるということはできるわけではなくて、必要性あるいは合理性のない業務を命令することは、これは労働契約法や、その大もとは民法でありますが、権利の濫用ということで無効になるわけです。
 他方で、労働者保護を使命とする厚生労働省としては、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を労働者に一方的に押しつけるというような人事権の濫用は不適切であると考えておりまして、企業における適切な労務管理を促すために、今般、啓発指導に用いているパンフレットに、参照すべき、今お話があったようなものに関連するような裁判例、判例を新たに追加する、それで、これを通達の上でも広く周知をしていくということを考えておりますし、企業に対する啓発指導、これもさらにしっかりと行っていかなければならないと思っております。
 退職勧奨が違法なものかどうかということについては、これは、退職勧奨に関する裁判例にも示されている幅広い観点から、個々の事案ごとに司法において判断をされるものであって、行政が民事上違法か否かを断定するということはふさわしくないのではないかというふうに考えているところでございます。
 民事上の問題ということなので、私どもとしては、労働政策を預かる立場として、明確な立場を明らかにしていくということだと思います。

○初鹿委員 裁判で決着しろ、そういう趣旨なんだと思いますけれども、少なくともこれは、国の政策によって首を切られる、退職強要をさせられて仕事を失っているわけですから、やはり国にも一定の責任はあると思いますよ、このような仕組みをつくってしまって。意図はそうじゃなかったと言うのかもしれないけれども、それを悪用されたわけですよ。これで、首を切られた人はそのまま、あとは裁判でやりなさい、企業側には何のペナルティーもありませんということにはならないんじゃないかと思うんですよ。
 私は、せめて、この労働移動支援助成金を支給するために、支給をすることでやめさせられたような人は、何らかの救済措置を設けるべきだと思います。裁判でやれといっても、やはり裁判や個別労働紛争でやったら何年もかかるし、仕事を探しているのに、そんなことに構っていられないわけですよ。そして、子供が例えば受験を控えている、そういった場合に、仕事がなくて、では、大学進学は諦めようか、私立の高校に行きたいけれどもやめようか、そういうふうになって、首を切られたその労働者だけじゃなくて、子供の人生まで狂わせることになるんですよ。
 そのこともちゃんと考えて、私はきちんと救済措置をとるべきじゃないかということを申し上げさせていただいて、質問を終わります。