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議会報告:議事録

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190-参-内閣委員会-13号 平成28年04月28日

○牧山ひろえ君 民進党・新緑風会の牧山ひろえです。
 子ども・子育て支援について御質問させていただきたいと思います。
 一億総活躍といいながらも、この春も子供の認可保育所の入所が認められなかった方々がたくさんおられます。そして、一体これのどこが一億総活躍なのかと悲鳴が上がっております。政府は、事業所内保育所あるいは病児保育の拡充のための法案を今国会に提出するなど、保育の受皿拡大に取り組んではいますけれども、どれだけ受皿が増えるかは未知数だと思うんですね。そこで、政府の待機児童解消加速化プランにも位置付けられている箱、それから人の問題についてお伺いしたいと思います。
 教育や保育の提供に携わる人材の確保ですとか資質の向上を図るために、平成二十七年四月から措置されている三%の処遇改善加算、これを始めとする保育士の処遇改善に向けた取組が行われております。それにもかかわらず、賃金センサスによりますと、平成二十六年に全百二十九職種のうち百十九位だったんですね、保育士の給与。これは、平成二十七年には何と百二十位に落ちているんですね。政府による処遇改善に向けた今までの取組は不十分であったと言わざるを得ないと思うんです。
 最近のブログで有名になりました、保育園落ちた日本死ねというブログがありましたけれども、やはりこれは保育所不足に世論の注目が集まっている、そして、その保育所の問題について世論の注目が集まりますと、この問題について当局はにわかに対策に乗り出しているかと思うんですけれども、安倍総理は、四月二十六日に一億総活躍社会に関する国民会議で、保育士の賃金を来年度から月額六千円引き上げる方針を表明したと報じられております。
 この措置で保育士の待遇改善としては十分とお考えでしょうか。また、これによって保育士不足の解決に向かうという現実味も考えて御判断なんでしょうか。大臣、お答えいただければと思います。

○国務大臣(加藤勝信君) 今委員からもお話がありました。これまでも、政権スタートして、待機児童解消加速化プラン等々で受皿の拡大に努めてきているところでございますが、しかし、現下においても待機児童の方々がおられる、あるいは先般、潜在的な待機の方の議論もございまして、引き続き、こうした保育所の整備等、また、そのためにも保育士の確保を含めてしっかりと取り組んでいきたいというふうに思います。
 今御指摘ありました一億総国民会議、四月二十六日に開かれた会議で、総理からは、保育士の処遇改善については、新たに二%相当の処遇改善を行うとともに、キャリアアップの仕組みを構築し、保育士としての技能、経験を積んだ職員について、競合他産業との賃金差がなくなるよう処遇改善を行います、そして、それらは財源を確保しつつ二〇一七年から実行します、こういうお話がありました。
 したがって、今御指摘ありますように、保育士の処遇改善については、消費税引上げ時の三党合意で五%上げると、そして、既に三%実施している残りのまず二%について、約六千円ということになる、月額六千円ということになりますが、これをしっかり行っていく。これに加えて、キャリアアップの仕組みを構築し、保育士として技能、経験を積んだ職員の方については、全産業の女性労働者との差が月額四万円程度であることも踏まえて、そうした賃金差がなくなるよう追加的な処遇を行っていくということも考えていきたいと、こういうふうに考えております。

○牧山ひろえ君 子供の面倒を見てもらっている先生方が自分の家族が持てない、そのぐらい低い給料だという声が上がっているんですね。目指すべきはやはり他業種並みの賃金水準のはずだと思うんです。政府案では、私が思うには焼け石に水だと思います。
 我々は、保育士の処遇改善の第一歩として保育士給与の月額五万円引き上げる議員立法を提出しております。やっぱり現実的に考えてこのぐらい上げないと保育士にならない、あるいは保育士として戻ってこないと思うんですね。もうそもそものお話をすると、働きたいお母さんたちを応援する、それから応援するに当たって安心して子供を預けるためには十分な保育士を確保する、これが原点だと思うんですね。そのためには、やはり現実的にどのぐらい賃金を上げれば保育士が戻ってくるか、あるいは保育士という職業を選ぶかということから考えなくてはいけないと思うんです。待機児童の解消という共通の目標に向けて、是非とも政府・与党にも党派を超えて成立に御協力いただきたいと思います。
 保育士の有効求人倍率ですけれども、今年一月の時点で調べましたところ、全国で二・四四倍でした。東京の方では六・二四倍でした。圧倒的な保育士不足だということが分かります。一方で、低賃金を始め業務負担などの問題で保育士を辞めて、そしてほかの業種に移ってしまっている、そういった潜在保育士がたくさんいらっしゃるんですね。保育士自身の仕事と家庭の両立もできる環境をやはり実現しなければ、保育士総活躍といった状況は生まれないと思うんです。
 御承知のとおり、保育士の多くは女性です。結婚などを機に仕事を辞める保育士さんも実に多いんですね。保育士の仕事と家庭の両立というテーマについて、大臣としてどのような御認識を持たれており、どのように取り組んでおられるのか。厚労省にお伺いしたいと思います。

○副大臣(とかしきなおみ君) お答えさせていただきます。
 保育人材の確保、これがとても重要であるというのは厚労省としても認識させていただいております。そして、そのためにはまず保育士の勤務環境を改善すること、これがとても大切であります。平成二十七年度の補正予算とそして平成二十八年度の当初予算におきまして、保育現場の厳しい勤務環境の改善を図ろうということで、保育補助者の雇い上げの支援やICT化の活用によりまして業務の効率化について取り組んでいくというふうにさせていただいております。
 また、この三月末に厚労省の方から発表させていただきました緊急対策におきましても、多様な働き方を可能とする短時間正社員制度の活用の推進をしていただくとか、あと保育士の方々が土曜日、日曜日の出勤をしていただくというのが結構負担だというお声もいただきましたので、土日出勤をできるだけ減らすことができるように、保育士の利用の少ない場合における土曜日の共同保育の推進、これも積極的に取り組もうと考えております。また、これに併せて、保育士の子供を優先的に入園させるような仕組みも取り組んでいこうと考えております。
 ということで、いろんな取組を組み合わせて地方自治体に積極的に取り組んでいただきまして、保育士さんの就業の促進や離職防止、こういったことを取り組み、そして保育人材の確保に向けて総合的に取り組んでいきたいと、このように考えております。

○牧山ひろえ君 東京都が実施しました実態調査によりますと、既に辞めた保育士の退職理由、これを見ますと、妊娠、出産がトップなんですね。また、退職を考えている現役の保育士は、何と約二割に上っています。その理由を調べましたところ、給料が安いですとか仕事量が多いとか労働時間が長い等、職場環境に関する不満が上位を占めています。結婚などのライフイベントを機に退職した保育士が、重い責任、加えて長時間な上に激務という、そういった職場環境のために復帰をためらう現実が浮かび上がっております。報酬面の改善に併せて保育士の仕事の負荷を軽減することについても対策を行わなければ、やはり保育士不足の解消にはつながらないと思うんですね。
 その一方で、三月二十八日に厚労省が発表した待機児童解消に向けての政府の緊急対策、お配りしました資料、これの下の線を引いたところを御覧ください。これを見ますと分かるように、保育士一人が担当する子供の数について触れておりますが、自治体が独自に定めているルールの緩和を要請しているんですね。簡単に言えば、保育士一人が担当する子供の数を増やす方針ということです。お配りした資料を御参照いただければと思うんですけれども、やはり理由があって自治体で、国の基準はこうだけど、いろんなアクシデントがあったりいろんな声があって、それでいろいろ基準を変えていると思うんですけれども、そういうふうに改善していった地域をまた元に戻すというか国の基準に戻すということは、やっぱり保育士一人当たり負担も増えますし、非常に問題だと思います。もちろん保育の質の低下も懸念されますけれども、それだけではなくて、一人一人の保育士の業務負担も増えると思うんですね。
 この対策が実施された場合、保育士の業務負担についてですが、増えると思いますか、それとも保育士の業務負担は減ると思いますか。端的にお答えいただければと思います。副大臣、お願いします。

○副大臣(とかしきなおみ君) 今お話ありましたように、基準の方は国の基準を使ってくださいというふうにお話をさせていただいておりますので、これによって基準が、今回の緊急対策によって変わることではございません。
 ということで、一応、保育士の方々の負担は増える方もいらっしゃるかもしれませんけれども、変わらない方もいらっしゃるかというふうに思います。

○牧山ひろえ君 今の副大臣の御答弁には無理があると思います。当然ですけれども、一人当たりの保育士に対して子供が増えれば、それはもちろん業務量は増えるに決まっていると思います。これは、家庭と仕事の両立というテーマについても反するちぐはぐな措置ではないかと思うんですね。
 少し保育士確保という観点からちょっと離れますけれども、政府の緊急対策について子供の視点から一つ質問させていただきたいと思いますが、この保育士一人が担当する子供の数を増やすという対策によって、子供の安全性は上がると思いますか、それとも子供の安全性は下がると思いますか。副大臣、端的にお願いします。

○副大臣(とかしきなおみ君) 先ほどからお答えさせていただいておりますように、今回、基準は特に動かしておりませんので、国の基準は。それ以上に自治体で厚くしているところ、ここに少し融通を利かせていただきたいというふうに申し上げておりますので、今までと変わりないというふうに考えております。

○牧山ひろえ君 当然下がると思うんですよ、安全性は。やっぱりこれ誰が考えても、子供の人数が増えれば当然安全性は下がりますよ。やっぱりいろんなアクシデントがあったり、いろんなことがあって、そしてやっぱりこの国の基準では足りないと、そして各都道府県で考えて、そして基準を上げていった、そういう過程を御覧になっているんでしょうかね。本当に疑問に思います、今の回答で。
 政府の緊急対策というものは、認可保育園を増やさないままの児童数の受入れ拡大であり、質の低下に直結します。子供の安全と良質な保育環境を守るために、政府は速やかにもっと子供を詰め込めという方針を是非撤回するべきだと私は強く申し上げたいと思います。子供が増えることによって万が一アクシデントが起きたり、子供が例えば大けがをしたり死亡したり、そういうことがあったら今の本当に答弁は問題になると思いますよ。
 保育士が本当にいないわけではないんですね。保育士資格の取得者は累計で百五十万人を超えていますが、その中で潜在保育士は、二〇一五年十一月の時点で調べましたら全国に六十八万人もいると言われています。保育士不足解消の鍵はこの潜在保育士の活用にあるということは以前より私が主張してきたことなんですけれども、この潜在保育士の掘り起こしという課題について、厚生労働省は昨年来、職業準備金の貸付制度、それから保育士の子供が優先して保育所に入園できる仕組み、先ほど副大臣からもお話がありました、保育料の軽減などの対策を取ってきました。これらの対策で潜在保育士がどの程度現場に戻っていただける見込みなんでしょうか。見込み又は目標の御教示を具体的にお願いします。

○副大臣(とかしきなおみ君) お答えさせていただきます。
 保育士資格を持っておきながら残念ながら保育園等に勤務していただけない方、この方々への再就職支援につきましては、平成二十七年度の補正予算におきまして、保育士として二年間勤務することで返済を免除する再就職準備金、今お話しいただきましたものと、あと未就学児がいる場合の保育料の一部貸付け事業を創設させていただきました。
 また、保育士や保育所支援センターにおきまして、保育園を離職した保育士に対しましてセンターへの登録を促すとともに、職業希望の把握、求人の情報の提供、さらに就職に向けての研修を実施するなど、再就職に向けてきめ細やかな対応をさせていただいております。
 これらの潜在保育士の再就職支援だけでは足りませんで、さらに新規の資格取得の確保や処遇改善、勤務環境の改善など含めまして総合的な対策を講じることによりまして、平成二十九年度末まで五十万人分の保育の受皿を拡大に必要としているということで、それに見込みまして九万人の保育士人材の確保を行うと、こういう形とさせていただいております。

○牧山ひろえ君 是非いろんな総合的な取組をお願いしたいと思います。
 多くの保育士が潜在化してしまっている根本的な原因である待遇面ですとか就労環境そのものの改善を行わなければ、抜本的な解消策とはならないと思うんですね。ですから、保育士に対する子供の人数とか、それは改善していかなくてはいけない。後退するんではなくて改善の方向で、今逆のことをやられようとしていますけれども、それは全くやるべきではないですし、撤回するべきだということを重ねて申し上げます。
 保育士不足の抜本的な対策についても、先立つものは財源の確保だと思うんですね。例えば、先ほど質問しました際に触れた処遇改善加算も、本来は五%であるんですが、財源確保の問題で三%に抑えられています。この財源の問題につきましては、民主党政権時代の社会保障と税の一体改革において、子育て支援で一兆円財源を確保すると三党合意でなされているんですね。ですが、そのうちの三千億円、この三千億円は安倍政権成立後三年を経過しても穴が空いたままなんですね。
 こうした現状を解決し、質の向上や量的拡充に取り組むため、残りの三千億円程度の財源を早急に確保すべきと考えますが、この課題に関する政府の取組や方針についてお伺いしたいと思います。

○国務大臣(加藤勝信君) 保育士の処遇改善を含め三党合意で総額一兆円超、そして当面、五%から十%に消費税を引き上げる中で、そのうちの七千億を対応する、そして残りの三千億超については安定的財源を確保して対応していくと、こういう形で三党で合意をさせていただいたというふうに承知をしております。
 そういう中で、まず七千億部分についても、今八%の状況でありますけれども、全てやれることは実施をさせていただいていると。その上で、あとの三千億についてはそれぞれ必要な予算額を確保しながら予算編成過程に引き続き検討していくということでございますけれども、ただ、先ほど申し上げた総理の国民会議での指示における二%というのはまさにその中に入っているということでございますから、そこもしっかり、安定財源をもちろん確保しながら、総理指示に従って引上げが行っていけるように、プランでも、そしてその後の予算編成過程でもしっかり議論をさせていただきたいと、こう思っております。

○牧山ひろえ君 大臣の強い決意には敬意を表したいと思いますけれども、いつまでに実現するという期限のない目標は、やはり私は空手形と一緒ではないかと思うんですね。
 安倍内閣は、二〇一五年度補正予算案で、所得の低い年金受給者の方を対象とした一人三万円の臨時給付金を参議院選挙の前に給付することになっています。この総額は三千九百億円となっております。また、戦後史上最悪の経済愚策とも言われている軽減税率、この財源が一兆円と言われております。子育て支援の三千億というのは、政権に断固たる決意さえあれば確保できる金額だと思うんですね。それをしないということは、安倍政権の消極的な意思表示としか思えないんです。保育士不足は政府の優先順位の誤りが招いている側面もあると思いますよ。
 ちなみに、日本の教育予算は先進国で最低のレベルです。そして、教育費用に関する自己負担率もOECD諸国の中で比較しても就学前教育費で三倍なんですね。先進国中最高レベルとなっているんです。本腰を入れて取り組もうと思ったら、保育や教育などの子育て関係予算は三党合意の一兆円でも不十分ではないでしょうか。まず第一に、課題となり続けている三千億円の財源確保の早期実現を私は図るべきだと思います。
 政府は、待機児童解消加速化プランに基づきまして、平成二十九年度末までの保育の受皿拡大の目標を四十万人から五十万人分に上積みしております。そして、待機児童の解消を図ると言っております。特に平成二十五年度そして二十六年度は緊急集中取組期間と位置付けられております。約二十一・九万人分の受皿が拡大されました。それにもかかわらず、平成二十七年四月の待機児童の数は前年と比べて千七百九十六人増、二万三千百六十七人となっているんですね。五年ぶりに増加しているんです。これは、入所を諦めていた保護者らの潜在的な保育需要が掘り起こされたことが要因とも言われておりますし、待機児童対策の推進に当たっては、この潜在的な保育需要を正確に把握する、このことが必要だと私は考えております。
 お配りした二枚目の資料にもありますとおり、政府では、厚生労働省が平成二十年八月に新待機児童ゼロ作戦に基づくニーズ調査、これを実施し、潜在的な保育需要を八十五万人程度と推計されました。その後、平成二十年に実施されたものと比較可能な同種の調査や実態把握は実際に行われているんでしょうか、大臣。あっ、副大臣。

○副大臣(とかしきなおみ君) お答えさせていただきます。
 今御指摘のありました平成二十年の八月に行いました新待機児童ゼロ作戦に基づくニーズの調査、これは厚生労働省が行わせていただいたのは、これは事実でございます。ただ、この資料のところでございますように、使いたい方が八十五万人という形で入っておりますが、この八十五万人という数字は、実は朝日新聞が独自に行って積み上げていった数字でございまして、これは厚生労働省から発表された数字ではございません。
 ということで、じゃ、今厚生労働省はどういう形で積み上げているかといいますと、保育の受皿確保につきましては、待機児童解消加速化プランに基づいて取り組んでおりますけれども、その目標値である四十万人は、加速化プランの制定時におきまして市町村による潜在ニーズの把握を積み上げていって、それで目標設定をさせていただいております。ということで、現時点での見通しでは、約四十五万六千人分の保育の受皿を確保する見込みとなっております。
 ということで、昨年の十一月の一億総活躍実現に向けての緊急に実施すべき対策では、女性の就業が更に進むことを念頭に考えまして加速化プランを策定させていただきまして、平成二十九年度末までに目標設定を上積みさせていただいて、これを四十万から五十万人というふうにさせていただきました。
 ということで、平成二十七年度の四月の子ども・子育て新制度のスタートに先立ち、自治体が保育等のニーズ量を把握するための調査の開発を目的としたサンプル調査は今は実施はしておりません。ということで、各自治体の状況を把握するだけではなくて、やっぱりこれは自治体によって状況がちょっと異なりますので、平成二十年度のこの調査を比較分析を行う、同じようにしてやっていくというのは困難であるというふうに考えております。

○牧山ひろえ君 要は、国として潜在的な保育需要の定期的な調査は行っていないということだということが分かりました。
 時系列で比較可能な客観的数値の把握が全ての対策の基本だと思うんですね。待機児童の解消は、家庭と仕事の両立支援を目的としています。ですが、現在の政府による待機児童の把握は除外を重ねていて、本当に公的保育サービスを必要としている人を数えていないという側面もあります。家庭と仕事の両立支援という目的から考えますと、希望の保育園に入れない潜在的な保育需要の正確な把握が必要だと思うんです。ですので、潜在的保育需要に関する定期的な調査を実施すべきではないかと思います。
 時間となりましたので、終わりにさせていただきます。