186-衆-本会議-13号 平成26年04月01日
○とかしきなおみ君 自由民主党のとかしきなおみです。
私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案について質問させていただきます。(拍手)
我が国は、今後さらに高齢化が進行し、今からおよそ十年後の二〇二五年には、三人に一人が六十五歳以上、五人に一人が七十五歳以上、超高齢社会になると見込まれております。
健康で長生きしたいというのは、多くの人々の願いであろうと思いますし、我が国の健康寿命が、男性七十・六歳、女性七十五・五歳で世界最高レベルであるということは、こうした人々の願いがかなえられた大変すばらしい成果であり、世界に誇るべきことであると思います。
このように、我が国が世界に誇るべき健康長寿国となることができましたのは、戦後、健康増進や予防医療を推進し、公衆衛生の向上に努めるとともに、国民皆保険制度のもとに、誰もが良質な医療を受けることができる医療制度を整備してきたことによるものであります。
今回の法案については、今後の高齢化に対応し、我が国の医療、介護の提供体制を改革していくことによって、これまで以上に、国民の皆様がより健康で、生き生きとしながら、住みなれた地域や自宅で暮らし続けていくことができる、そんな社会を実現するためのものであると考えます。
まず最初に、本法律案によって進めようとする医療と介護の一体的な改革の目的について確認したいと思います。
二〇二五年に向けた今後の高齢化を見据えると、我が国の医療と介護の提供体制について、急性期を経過した患者の受け皿となる病床が整備されていない、住みなれた地域や自宅での本人や家族の生活を支える在宅医療や介護サービス、生活支援サービスなどが十分に提供されていないという課題が指摘されております。
現在でも、救急患者の受け入れが十分でない地域もありますし、また、特別養護老人ホームの申込者が全国で五十万人を超える状況にもあります。一方で、なるべく自宅で、自分らしく、家族とともに暮らしたいと考える国民の皆様がたくさんいらっしゃいます。
現在の我が国の医療・介護サービスの提供体制のままでは、こうした国民の期待に十分対応することができません。
このため、未来を見詰めて、必要な医療と介護の提供体制の改革を敢然と行わなければなりませんが、重要なことは、地域において、患者や住民を中心として、医療と介護が切れ目なく継続的に提供される体制を構築することではないかと考えています。
今回の法律案は、医療と介護が一体的に提供される体制を構築するために提案されると考えていますが、この法律案において、医療と介護を一体的に改革しようとするその趣旨をどのように考えているのでしょうか。また、どのようにして一体的な改革を実現しようとするのか、厚生労働大臣にお伺いします。
次に、医療提供体制の改革の内容についてお伺いします。
今後の高齢化の進展に伴う医療需要の増加に対応するためには、病床の機能分化、連携を進め、高度急性期から在宅医療まで、患者が状態に見合った病床で適切な医療が受けられる、質の高い効率的な医療提供体制を構築する必要があります。
こうした改革を実現するため、今回の医療法の改正案が提出されているわけですが、当然ながら、医療法だけではなく、診療報酬が大きな役割を担うことになります。
医療法による仕組みと診療報酬、この両方で、病床の機能分化、連携、在宅医療の充実を進めていかなければなりませんが、どのようにして進めようと考えているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
次に、医師、看護師等の医療従事者の確保対策、チーム医療の推進についてお伺いします。
今後の高齢化に対応するために、病床の機能分化、連携は大変重要なことですが、地域において、医師、看護師等の医療従事者の確保が喫緊の課題となっています。
また、医療従事者の確保のみならず、より質の高い医療の提供ということを考えますと、現場で働く多種多様な医療従事者が、それぞれの専門性を発揮しつつ、連携することによって、チーム医療を推進していかなくてはいけません。
今回の法律案において、どのように医療従事者の確保、チーム医療の推進を図ることとしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
次に、介護サービスの提供体制を論じる上で欠かすことのできない地域包括ケアシステムの構築についてお伺いします。
多くの高齢者の皆様が、住みなれた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることを望まれています。そのためには、医療、介護、住まい、予防、生活支援が身近な地域で包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築が必要不可欠であります。
その場合には、日本の高齢化の進展状況に地域差があることにも目を向ける必要があります。
東京都や大阪府、埼玉県などの都市部では、今後、七十五歳以上の人口が急激に増加していきます。他方、町村部では、七十五歳以上の人口の増加は穏やかですが、総人口が着実に減少していきます。また、地域のつながりや、事業者、町内会、ボランティアの活動などにも、地域ごとに相違があります。
このため、地域包括ケアシステムを構築するためには、全国一律に画一的に設計して実現を目指すのではなく、地域の特性に応じて、地域ごとにオーダーメードでつくり上げていくことが非常に重要であると考えます。
政府は、この法案を通して、どのように地域包括ケアシステムの構築を図ることとしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
次に、介護保険制度の持続可能性を高める施策についてお伺いします。
高齢化の進展により、介護費用が増加し、介護保険料の上昇が見込まれています。介護保険制度の創設時には、全国の平均で月額二千九百十一円だった保険料が、現在は約五千円となり、二〇二五年には八千二百円になると見込まれています。
高齢者や現役世代の生活を維持し、企業の負担を可能な限りふやさないためには、保険料の上昇をできるだけ抑えるためにも、効率的な施策が求められます。
もちろん、低所得者の方への配慮もあわせて実施する必要があると考えますが、今回の法案では、持続可能な介護保険制度の構築に向けて、どのように取り組むこととしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
最後に、総理大臣にお伺いします。
本日四月一日、消費税が五%から八%に引き上げられました。これは、私たち自民党の議員も悩みながら多くの議論を交わしましたが、最終的には、昨年の秋、総理は消費税率の引き上げを決断なされました。
私は、日本の、世界に例のない高齢化、歴史的に見ても厳しい財政状況、地域や家族の変化を真正面から見据えれば、必要なことであったと思いますが、同時に、社会保障制度の改革や財源確保の必要性について、国民の皆様には丁寧な説明を行うことが大事であると思っています。
急速な少子高齢化が進む中で、受益と負担の均衡のとれた持続可能な社会保障制度を確立するためには、制度ごとの見直しにとどまらず、国、都道府県、市町村の役割のあり方の見直しなど、制度横断的な議論が必要です。社会保障制度の改革が、これで終わるわけではありません。
社会保障制度全体の改革の中で、今回の医療、介護の一体改革をどのように位置づけるお考えなのでしょうか。
また、総理は、昨年の十一月にカンボジアを訪問された際、日本の協力による国立母子保健センターを訪問され、日本から派遣されて活躍している医師や看護師の方々にもお会いされました。その際、カンボジア王国保健省との医療分野に関する覚書が締結され、医療保険制度に係る経験の共有、医療サービスの強化、先進的な医療機器、医薬品の導入といった分野において両国が相互に協力を行うことが確認されました。
また、このほかにも、ミャンマー、トルコ、ベトナム、ラオス、バーレーン、トルクメニスタンの六カ国と医療分野に関する覚書が締結されました。
今後、世界に冠たる日本の医療保険制度、すぐれた医療技術や予防医療を世界に広めていく必要があると考えますが、こうした医療の国際展開や、今後行われる医療保険制度の改革も含めて、我が国の今後の医療制度についてどのような展望を持っておられるのか、また、国際社会に向けてどのように貢献しようとお考えなのか、総理大臣にお伺いして、私の質問を終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) とかしきなおみ議員にお答えをいたします。
医療、介護の制度改革の位置づけについてお尋ねがありました。
急速な少子高齢化のもと、世界に冠たる社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくためには、消費税の引き上げにより安定財源を確保しつつ、制度の充実と重点化を同時に行う必要があります。
特に、医療や介護は、高齢化の進展等に伴い、ニーズの多様化や費用の増大が見込まれます。
このため、今回の法案では、患者の状態に応じた適切な医療が提供されるよう、医療提供体制の見直しを行うとともに、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備し、所得の低い方々に配慮しつつ、介護保険の負担のあり方を見直すなどの改革を行うこととしており、受益と負担の均衡のとれた制度としてまいります。
医療制度の今後の展望と国際社会への貢献についてのお尋ねがありました。
高齢化の進展等に伴う医療ニーズの増大が見込まれる中、まずは、今回の法案により、効率的かつ質の高い医療提供体制を確保していくとともに、医療保険制度についても、安定的な財政運営を図るため、国民健康保険に対する財政支援の拡充や運営のあり方等、必要な検討を進めてまいります。
また、今後の医療の展望については、再生医療など先端医療の分野で世界に先駆けた取り組みを進めていくとともに、長年培ってきた日本の経験や知見を生かし、国際貢献を果たしていくことが重要と考えています。
医療の国際貢献については、先端医療の移転や医薬品、医療機器の供給だけではなく、国民皆保険制度など、制度の整備を含めて、パッケージ輸出で、相手国のニーズに応じた支援を行ってまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣田村憲久君登壇〕
○国務大臣(田村憲久君) とかしきなおみ議員から、五問御質問をいただきました。
まず、医療と介護を一体的に改革する趣旨や実現方策についてのお尋ねがございました。
急速な少子高齢化のもとで、地域で安心して医療や介護サービスを受けられるようにするためには、救急医療などの急性期の医療や急性期後の受け皿病床の整備、退院後の生活を支える在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に確保する必要がございます。
このため、今回の法案では、国が医療、介護の総合的な確保のための基本的な方針を作成するとともに、医療、介護の両方を対象とした新たな財政支援制度を創設することとしており、このような取り組みを通じて、効率的かつ質の高い医療提供体制や地域包括ケアシステムを構築することといたしております。
次に、医療法による仕組みと、診療報酬の連携についてのお尋ねがございました。
今回の法案では、病床機能報告制度により報告された情報等を活用し、都道府県で、地域に必要な将来の病床数等を地域医療構想として策定するとともに、病床の機能分化、連携や、在宅医療・介護を推進するための基金を都道府県に設けることといたしております。
また、平成二十六年度診療報酬改定では、七対一入院基本料の要件の見直しや、急性期後の患者の受け皿病床、在宅医療の評価とともに、複数の慢性疾患を持つ患者に対し、継続的かつ全人的な医療を行う主治医機能の評価等に重点的に取り組むことといたしております。
今回の法案による改革と診療報酬を車の両輪として、医療提供体制の改革を実行してまいります。
次に、医療従事者の確保と、チーム医療の推進についてのお尋ねがございました。
地域における医療従事者の確保を着実に実施していくため、今回の法案では、医療確保について、地域医療支援センターが担う機能の法律への位置づけ、医療機関における勤務環境改善の取り組みによる離職防止・定着対策の推進、ナースセンターを活用した看護師等の復職支援の強化等の必要な施策を盛り込んでおります。
また、効率的かつ質の高い医療の実現に向けて、チーム医療の推進を図るため、医師の判断を待たずに、手順書により、一定の診療の補助を行う看護師に対する研修制度の創設、診療放射線技師、臨床検査技師、歯科衛生士の業務範囲または実務実施体制の見直し等の内容を盛り込んでおります。
続きまして、地域包括ケアシステムの構築についてのお尋ねがございました。
地域包括ケアシステムの構築に向けては、人口や高齢化の状況、地域の結びつきの強さ、サービスの整備状況等、地域の実情がさまざまであることから、市町村が医療、介護の専門職などと協働しながら、地域課題を共有し、解決に向け主体的に取り組んでいくことが必要と考えております。
国といたしましては、市町村の取り組みを最大限支援することが必要と考えており、在宅医療・介護サービスの充実や、多職種が連携する体制の構築など、本法案による制度改正を通じて、効率的かつ質の高い医療・介護サービスが提供されるよう、しっかりと取り組んでまいります。
次に、持続可能な介護保険制度の構築についてのお尋ねがございました。
今後のさらなる高齢化の進展に伴い、介護費用の増加が見込まれる中で、保険料の上昇を可能な限り抑え、介護保険制度の持続可能性を高めていくことが必要であります。
このため、今回の法案では、一定以上の所得のある方の利用者負担を二割とすること、施設入所者への補足給付について、一定額を超える預貯金等のある方を対象外とすることといった給付の重点化、効率化を図るとともに、新たに公費を投入し、所得の低い方々の保険料軽減を強化することといたしております。
以上でございます。(拍手)
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○とかしきなおみ君 自由民主党のとかしきなおみです。
私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案について質問させていただきます。(拍手)
我が国は、今後さらに高齢化が進行し、今からおよそ十年後の二〇二五年には、三人に一人が六十五歳以上、五人に一人が七十五歳以上、超高齢社会になると見込まれております。
健康で長生きしたいというのは、多くの人々の願いであろうと思いますし、我が国の健康寿命が、男性七十・六歳、女性七十五・五歳で世界最高レベルであるということは、こうした人々の願いがかなえられた大変すばらしい成果であり、世界に誇るべきことであると思います。
このように、我が国が世界に誇るべき健康長寿国となることができましたのは、戦後、健康増進や予防医療を推進し、公衆衛生の向上に努めるとともに、国民皆保険制度のもとに、誰もが良質な医療を受けることができる医療制度を整備してきたことによるものであります。
今回の法案については、今後の高齢化に対応し、我が国の医療、介護の提供体制を改革していくことによって、これまで以上に、国民の皆様がより健康で、生き生きとしながら、住みなれた地域や自宅で暮らし続けていくことができる、そんな社会を実現するためのものであると考えます。
まず最初に、本法律案によって進めようとする医療と介護の一体的な改革の目的について確認したいと思います。
二〇二五年に向けた今後の高齢化を見据えると、我が国の医療と介護の提供体制について、急性期を経過した患者の受け皿となる病床が整備されていない、住みなれた地域や自宅での本人や家族の生活を支える在宅医療や介護サービス、生活支援サービスなどが十分に提供されていないという課題が指摘されております。
現在でも、救急患者の受け入れが十分でない地域もありますし、また、特別養護老人ホームの申込者が全国で五十万人を超える状況にもあります。一方で、なるべく自宅で、自分らしく、家族とともに暮らしたいと考える国民の皆様がたくさんいらっしゃいます。
現在の我が国の医療・介護サービスの提供体制のままでは、こうした国民の期待に十分対応することができません。
このため、未来を見詰めて、必要な医療と介護の提供体制の改革を敢然と行わなければなりませんが、重要なことは、地域において、患者や住民を中心として、医療と介護が切れ目なく継続的に提供される体制を構築することではないかと考えています。
今回の法律案は、医療と介護が一体的に提供される体制を構築するために提案されると考えていますが、この法律案において、医療と介護を一体的に改革しようとするその趣旨をどのように考えているのでしょうか。また、どのようにして一体的な改革を実現しようとするのか、厚生労働大臣にお伺いします。
次に、医療提供体制の改革の内容についてお伺いします。
今後の高齢化の進展に伴う医療需要の増加に対応するためには、病床の機能分化、連携を進め、高度急性期から在宅医療まで、患者が状態に見合った病床で適切な医療が受けられる、質の高い効率的な医療提供体制を構築する必要があります。
こうした改革を実現するため、今回の医療法の改正案が提出されているわけですが、当然ながら、医療法だけではなく、診療報酬が大きな役割を担うことになります。
医療法による仕組みと診療報酬、この両方で、病床の機能分化、連携、在宅医療の充実を進めていかなければなりませんが、どのようにして進めようと考えているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
次に、医師、看護師等の医療従事者の確保対策、チーム医療の推進についてお伺いします。
今後の高齢化に対応するために、病床の機能分化、連携は大変重要なことですが、地域において、医師、看護師等の医療従事者の確保が喫緊の課題となっています。
また、医療従事者の確保のみならず、より質の高い医療の提供ということを考えますと、現場で働く多種多様な医療従事者が、それぞれの専門性を発揮しつつ、連携することによって、チーム医療を推進していかなくてはいけません。
今回の法律案において、どのように医療従事者の確保、チーム医療の推進を図ることとしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
次に、介護サービスの提供体制を論じる上で欠かすことのできない地域包括ケアシステムの構築についてお伺いします。
多くの高齢者の皆様が、住みなれた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることを望まれています。そのためには、医療、介護、住まい、予防、生活支援が身近な地域で包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築が必要不可欠であります。
その場合には、日本の高齢化の進展状況に地域差があることにも目を向ける必要があります。
東京都や大阪府、埼玉県などの都市部では、今後、七十五歳以上の人口が急激に増加していきます。他方、町村部では、七十五歳以上の人口の増加は穏やかですが、総人口が着実に減少していきます。また、地域のつながりや、事業者、町内会、ボランティアの活動などにも、地域ごとに相違があります。
このため、地域包括ケアシステムを構築するためには、全国一律に画一的に設計して実現を目指すのではなく、地域の特性に応じて、地域ごとにオーダーメードでつくり上げていくことが非常に重要であると考えます。
政府は、この法案を通して、どのように地域包括ケアシステムの構築を図ることとしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
次に、介護保険制度の持続可能性を高める施策についてお伺いします。
高齢化の進展により、介護費用が増加し、介護保険料の上昇が見込まれています。介護保険制度の創設時には、全国の平均で月額二千九百十一円だった保険料が、現在は約五千円となり、二〇二五年には八千二百円になると見込まれています。
高齢者や現役世代の生活を維持し、企業の負担を可能な限りふやさないためには、保険料の上昇をできるだけ抑えるためにも、効率的な施策が求められます。
もちろん、低所得者の方への配慮もあわせて実施する必要があると考えますが、今回の法案では、持続可能な介護保険制度の構築に向けて、どのように取り組むこととしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。
最後に、総理大臣にお伺いします。
本日四月一日、消費税が五%から八%に引き上げられました。これは、私たち自民党の議員も悩みながら多くの議論を交わしましたが、最終的には、昨年の秋、総理は消費税率の引き上げを決断なされました。
私は、日本の、世界に例のない高齢化、歴史的に見ても厳しい財政状況、地域や家族の変化を真正面から見据えれば、必要なことであったと思いますが、同時に、社会保障制度の改革や財源確保の必要性について、国民の皆様には丁寧な説明を行うことが大事であると思っています。
急速な少子高齢化が進む中で、受益と負担の均衡のとれた持続可能な社会保障制度を確立するためには、制度ごとの見直しにとどまらず、国、都道府県、市町村の役割のあり方の見直しなど、制度横断的な議論が必要です。社会保障制度の改革が、これで終わるわけではありません。
社会保障制度全体の改革の中で、今回の医療、介護の一体改革をどのように位置づけるお考えなのでしょうか。
また、総理は、昨年の十一月にカンボジアを訪問された際、日本の協力による国立母子保健センターを訪問され、日本から派遣されて活躍している医師や看護師の方々にもお会いされました。その際、カンボジア王国保健省との医療分野に関する覚書が締結され、医療保険制度に係る経験の共有、医療サービスの強化、先進的な医療機器、医薬品の導入といった分野において両国が相互に協力を行うことが確認されました。
また、このほかにも、ミャンマー、トルコ、ベトナム、ラオス、バーレーン、トルクメニスタンの六カ国と医療分野に関する覚書が締結されました。
今後、世界に冠たる日本の医療保険制度、すぐれた医療技術や予防医療を世界に広めていく必要があると考えますが、こうした医療の国際展開や、今後行われる医療保険制度の改革も含めて、我が国の今後の医療制度についてどのような展望を持っておられるのか、また、国際社会に向けてどのように貢献しようとお考えなのか、総理大臣にお伺いして、私の質問を終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) とかしきなおみ議員にお答えをいたします。
医療、介護の制度改革の位置づけについてお尋ねがありました。
急速な少子高齢化のもと、世界に冠たる社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくためには、消費税の引き上げにより安定財源を確保しつつ、制度の充実と重点化を同時に行う必要があります。
特に、医療や介護は、高齢化の進展等に伴い、ニーズの多様化や費用の増大が見込まれます。
このため、今回の法案では、患者の状態に応じた適切な医療が提供されるよう、医療提供体制の見直しを行うとともに、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備し、所得の低い方々に配慮しつつ、介護保険の負担のあり方を見直すなどの改革を行うこととしており、受益と負担の均衡のとれた制度としてまいります。
医療制度の今後の展望と国際社会への貢献についてのお尋ねがありました。
高齢化の進展等に伴う医療ニーズの増大が見込まれる中、まずは、今回の法案により、効率的かつ質の高い医療提供体制を確保していくとともに、医療保険制度についても、安定的な財政運営を図るため、国民健康保険に対する財政支援の拡充や運営のあり方等、必要な検討を進めてまいります。
また、今後の医療の展望については、再生医療など先端医療の分野で世界に先駆けた取り組みを進めていくとともに、長年培ってきた日本の経験や知見を生かし、国際貢献を果たしていくことが重要と考えています。
医療の国際貢献については、先端医療の移転や医薬品、医療機器の供給だけではなく、国民皆保険制度など、制度の整備を含めて、パッケージ輸出で、相手国のニーズに応じた支援を行ってまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣田村憲久君登壇〕
○国務大臣(田村憲久君) とかしきなおみ議員から、五問御質問をいただきました。
まず、医療と介護を一体的に改革する趣旨や実現方策についてのお尋ねがございました。
急速な少子高齢化のもとで、地域で安心して医療や介護サービスを受けられるようにするためには、救急医療などの急性期の医療や急性期後の受け皿病床の整備、退院後の生活を支える在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に確保する必要がございます。
このため、今回の法案では、国が医療、介護の総合的な確保のための基本的な方針を作成するとともに、医療、介護の両方を対象とした新たな財政支援制度を創設することとしており、このような取り組みを通じて、効率的かつ質の高い医療提供体制や地域包括ケアシステムを構築することといたしております。
次に、医療法による仕組みと、診療報酬の連携についてのお尋ねがございました。
今回の法案では、病床機能報告制度により報告された情報等を活用し、都道府県で、地域に必要な将来の病床数等を地域医療構想として策定するとともに、病床の機能分化、連携や、在宅医療・介護を推進するための基金を都道府県に設けることといたしております。
また、平成二十六年度診療報酬改定では、七対一入院基本料の要件の見直しや、急性期後の患者の受け皿病床、在宅医療の評価とともに、複数の慢性疾患を持つ患者に対し、継続的かつ全人的な医療を行う主治医機能の評価等に重点的に取り組むことといたしております。
今回の法案による改革と診療報酬を車の両輪として、医療提供体制の改革を実行してまいります。
次に、医療従事者の確保と、チーム医療の推進についてのお尋ねがございました。
地域における医療従事者の確保を着実に実施していくため、今回の法案では、医療確保について、地域医療支援センターが担う機能の法律への位置づけ、医療機関における勤務環境改善の取り組みによる離職防止・定着対策の推進、ナースセンターを活用した看護師等の復職支援の強化等の必要な施策を盛り込んでおります。
また、効率的かつ質の高い医療の実現に向けて、チーム医療の推進を図るため、医師の判断を待たずに、手順書により、一定の診療の補助を行う看護師に対する研修制度の創設、診療放射線技師、臨床検査技師、歯科衛生士の業務範囲または実務実施体制の見直し等の内容を盛り込んでおります。
続きまして、地域包括ケアシステムの構築についてのお尋ねがございました。
地域包括ケアシステムの構築に向けては、人口や高齢化の状況、地域の結びつきの強さ、サービスの整備状況等、地域の実情がさまざまであることから、市町村が医療、介護の専門職などと協働しながら、地域課題を共有し、解決に向け主体的に取り組んでいくことが必要と考えております。
国といたしましては、市町村の取り組みを最大限支援することが必要と考えており、在宅医療・介護サービスの充実や、多職種が連携する体制の構築など、本法案による制度改正を通じて、効率的かつ質の高い医療・介護サービスが提供されるよう、しっかりと取り組んでまいります。
次に、持続可能な介護保険制度の構築についてのお尋ねがございました。
今後のさらなる高齢化の進展に伴い、介護費用の増加が見込まれる中で、保険料の上昇を可能な限り抑え、介護保険制度の持続可能性を高めていくことが必要であります。
このため、今回の法案では、一定以上の所得のある方の利用者負担を二割とすること、施設入所者への補足給付について、一定額を超える預貯金等のある方を対象外とすることといった給付の重点化、効率化を図るとともに、新たに公費を投入し、所得の低い方々の保険料軽減を強化することといたしております。
以上でございます。(拍手)
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