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166-衆-教育再生に関する特別委…-9号 平成19年05月10日

○保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。とかしきなおみ君。

○とかしき委員 おはようございます。
 きょうは、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 ここ数日間、ずっとこの教育再生委員会に参加させていただきまして、議論の方を拝聴させていただいております。きょうは、細かい話ではなくて、むしろ、本質的なお話、目指すべきゴールはどこなのか、教育によって育てていく人間とは、どういう人間になっていってほしいのか、そのための教育の中身はどうしていったらいいのか、今の教育が一体どこが問題なのか、その辺のお話をさせていただきたいと思います。
 実は、私、地方議員のときに商店街の活性化というのをさせていただきまして、このときに体験したんですけれども、いろいろ地方自治体が行っている政策は、現象に対応してしまう政策が結構多いわけでございます。
 特に、商店街の活性化といいますと、商店街が空き店舗が多いというと空き店舗に補助金を出したりとか、古くて汚くなったといえば道路をつくったり照明灯をきれいにしたりとか、大型店舗が出るというと進出しないように話しに行ったりとか、そしてイベントの補助をしたりとか、そういった、現象に対応していくとなかなか効果が出てこない。
 むしろ、本質的な問題が一体どこなのか、ここをしっかり見ていかなくてはいけないということで、そのときに商店街の皆さんに聞きましたところ、原因が、全部外側に責任を転嫁してしまう商店街の人たちの気持ちの方に問題があるということがわかってまいりまして、町おこしをしていくのには人の気持ちを興していくのが大切だということで、その方向で政策を組み立てていきましたら、効果が出てまいりまして、町を再生することができました。
 今教育で起こっております、いじめとか、落ちこぼれ、不登校、ニート、フリーターとか、教育の質の低下などの問題、これも、対処療法的な方法ではなくて、やはり、本質をしっかり見ていかないと効果は期待できないのではないかと思います。こうした現象が生まれる背景、ここをしっかり分析していきたいと思います。
 ということできょうは御質問させていただきたいんですけれども、現在の教育の荒廃の原因の根本は一体どこにあるとお考えでしょうか、そして、今回御提案いただいている教育三法の法案のどの部分がこの原因に対応しているのか、これは、政府側と、あわせて民主党案の提出者の方にも御答弁の方をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○伊吹国務大臣 非常に本質的な、大切な、まずみんなで確認しておかなければならないところからの御質問だと思います。
 どの国も、領土とそこにいる人間とで成り立っておりますので、その人間がしっかりしていなければ、今おっしゃった現象面での失敗はいろいろ出てきます。ですから、その現象面の失敗にモグラたたきのようなことをやっていくということも大切なんだけれども、主役が人間であり国民である限りは、国民のどこに欠陥があるんだということをはっきりとただしていかねばなりません。それは、随分と私は時間がかかることだと思いますが、とりあえず、学校現場をどう直していくのかということと、どのような人間を長い時間をかけてつくっていくのかという二つの観点が必要だろうと思います。
 そこで、これは豊かになった国ではどこにでも生ずる現象ですけれども、例えば、家族、地域社会、会社、国に頼らなくとも、何か制度があり、関係者が扶養してくれて生きていけるという状況になるんですね。そうすると、自分一人で生きていけるという気持ちにやはりなっていくわけです。ここのところをどう考えていくのかということが一つ。
 それから、もう一つ大切なことは、社会がやはり豊かになってきている中で、今のことが現象面にあらわれてきていることなんですけれども、三家族同居ということはほとんど難しくなって、核家族化になっております。同時に、人口が都会に集中しますから、地域社会というものではなくて、マンション、アパート社会というものになりますね。こういう中で、お互いの連帯感とかというものは非常に低下してきます。
 これが、長い目で見て日本という国をどういう国にしていくのかということはやはり考えていかなければなりませんし、日本という国がおかしな国になったときには、個として生きている日本国民一人一人の自主性を持った価値観というものを本当に維持しながら生きていけるだけの余裕のある国に将来なるんだろうかということも考えなければならない。
 したがって、何を教えるかということをまずはっきりとさせておかねばなりませんので、改正教育基本法を受けて、教える内容についてまず学校教育法の改正をお願いしているということです。それを教える先生の資質を維持したいということで、免許法と教育公務員特例法の改正を一本にしてお願いをしている。その全体を統括している文部科学省から学校現場に至るまでの行政の責任体制を明確にするために地教行法をお願いしている。こういう三法の構成でございます。

○藤村議員 とかしき委員からの御質問は、まず、教育が荒廃していると。荒廃というのが、少し具体的に挙げられたのは、いじめや不登校や、落ちこぼれという言葉もありましたか、教育力低下などなどと。ですから、荒廃と言ってしまうと、これはちょっとどうなっているんだと我々の責任を問われかねないので、荒廃とまで決めつけるわけにはいかないんですが、教育におけるさまざまな問題があることは事実であります。
 その問題の根本的な原因というのが一体どこにあるかということで、今、伊吹文科大臣もお答えのとおりで、やはり時代が大きく変わっている、その中で、もちろん、今お話しのとおり、日本が経済的に大変豊かになってきている、あるいは生活の様態、形式が核家族化している、あるいは子供の数が減っている、そしてITなどの大変な科学技術の進展、それら幾つかの大きな問題による教育にあらわれるさまざまな現象、これが、荒廃とは言わないまでも、大きな問題点が幾つもある、こういうことであろう、認識はそのように考えております。
 我々は、それらの根本原因を、もちろんこれは教育の法律だけで正すことはできませんが、今回お出ししている我々の教育力向上三法というもので、一つは、やはり、何より最も子供たちに身近な先生の質をある意味では相当高くまで上げてほしい、この時代の変遷に十分に追いつける、あるいは追い越せる、そしてそれをリードできる先生をつくりたいということを教員免許法で我々の方では提示したところであります。
 それから、地域の教育力あるいは家庭の教育力というときに、これは、中央の国が幾ら太鼓をたたきリードをしたところでなかなかそれは難しいわけで、やはり地域でできることということで、我々の地教行法において、一番学校の現場に近いところが、地域の、そして学校を中心とする教育をみんなで考えていく。そういう意味では、学校理事会という制度、これは非常に画期的だと思います。そこでその地域の問題をさまざま解決していっていただきたいなということ。
 それからもう一つ、三本目ですが、我々は、環境整備法という法律で出しているのが、ここは多分この委員会の皆さんが同意される、しかし難しいともおっしゃるが、つまり、やはりお金をきちんとかけないといけない、環境を整備しないといけない、このことを我々はこの法律にきちっと盛り込んで、そして、特にお金の手当てについては、まさに国の責任ということをはっきりさせてこのさまざまな現象の解決に取り組んでいきたい。
 これが我々の法案でございます。

○とかしき委員 御答弁ありがとうございました。
 私も同じように考えておりまして、実は、今の教育現場の一番の問題は、小さなコミュニティーの喪失、例えば、自分と他者との関係をどうとっていっていいのか、生徒と先生の関係とか、親子の関係とか、友達との関係とか、あと、自分が社会の中でどんな位置づけなのかとか、何のために生きているのかとか、そういったことがわからなくなっている。多分これは、心の問題ではなくて、道徳や公民の授業でもこれは解決しない問題で、もっと自分たちの位置づけ、コミュニケーションのとり方、そこら辺に問題があるのではないかと思います。
 実際、私も子供たちと話をしていると、何のために勉強しているのかと言うと、全然答えられなくなってしまうわけです。そして、教員の中にも、何のためにこの教育をして、実社会でこの教育はどの程度どういうふうに役に立つのかというのが具体像が見えないということで、逆に、それがまた子供たちにも混乱を起こしている部分がある場合もあります。
 ということで、やはり、教員に社会の現場について語っていただくというのが、教員だけに任せておくのもちょっと今は無理な時代になってきている。どちらかというと、社会全体が、みんなが総がかりで教育にかかわっていくぐらいの気持ちを持っていかないと、今、未来を担う子供たちの教育にはみんなで協力していかないとだめな体制なのではないかというふうに思っております。
 ということで、実際、社会に立った人たちが教育にかかわって、何でクラスメートと仲よくしなきゃいけないのか、五年後、十年後、自分たちの人間関係がどうなっているのか、社会になると友達というのがどういうふうになっていくのか、そして、社会人としての責務とか権限は何なのかとか、そういったことを、具体的な経験を持った社会人の人たちがもっと教育の現場に入っていって子供たちと一緒に語っていく、そういった場所が必要ではないかというふうに思います。あの先生の一言が今につながったという、そんな教育を目指していくべきではないかというふうに思います。
 そこで、では、教育現場で今求められている教員の理想像とは具体的にどんなものなのか、そして、今回御提案いただきました免許更新制度等、この教員の理想像に近づけるのにどんな効果が期待できるのか、お伺いしたいと思います。政府側と民主党提出者の両方にお願いいたします。

○伊吹国務大臣 教員の資質あるいは知識、技能という言葉をよく使いますけれども、まず、免許法を出した最大のポイントは、やはり、十年ごとに、刻々と変わる客観情勢の中で生徒に教えるべき最新の知識をきちっとマスターしていただく、これは知識ですね、同時に、生徒を把握して、そしてその生徒に教え込む技術、技能ですね、これが両々相まって教師の資質というものになりますから、これをしっかりと身につけていただく。
 幾ら知識ばかりあっても、生徒を把握できない人はだめですし、生徒に人気があっても、教える内容がわかっていない先生じゃ困るわけですから、その辺のバランスがとれた教師像が理想だと思います。

○藤村議員 教員の理想像という言葉もありましたが、しかし、国が教員はこうあるべしということを、もちろん、期待するという言葉では構わないと思いますが、国が押しつける教員の理想像にみんなはまってもらいたいということではいけないと思います。共通して求めるものは、それは、やはり基本的な資質の問題であろうと思います。
 我々は、その基本的なベースになる資質を格段にアップさせたいというのが私どもの教員免許法の改正でありまして、政府は、今、大臣答弁のとおり、十年ごとにリニューアルしてもらうというところにのみ注目をされたんですが、実は、資質の基礎は養成段階でございますので、そういう意味では、相当これは理想的に過ぎるという批判もありますが、しかしこの際、教員にはその基本的資質の部分で格段に高めていきたいというのが我々の免許法で、養成段階に、より注目をした。もちろん、十年ごとの講習というものも我々はこの免許法で入れたところでございます。

○とかしき委員 ありがとうございました。
 私は、日本という国は資源が乏しい国でしたので、人によって国を成り立たせていこうといったことを命題にして、人間を非常に大切にして、有為な人材を育成していくことを伝統的に大切にしてきた国だというふうに思っております。ということで、気高い精神と卓越した指導力と、そしてもう一つ教師に求められるのは、人間力の豊かな教師であると考えます。
 この人間力というのは、最も崇高な仕事であるという強い使命感を持って子供の能力を引き出して人間性をはぐくんでいける、これが人間力だと思うんですけれども、この人間力を醸成するには、もちろん免許更新制は、最低ラインの資質を持った人をカットして、ある程度の資質を維持していくには非常に有益な方法だとは思うんですけれども、もっと伸びようという教師にはもう少し自主的な研修を設けていく、そういったものとセットで動かしていった方が効果的ではないかというふうに考えます。
 これをちょっと御質問しようと思っていたんですが、時間がないので御提案させていただきますと、例えば、ある程度働いた段階で、自分の足りないスキルとかいうのは大体気づいてくるものでございます。そのときに、自分で自主的に研修する、そういった応用力をもっとつけてもらう。自分が気がついたところ、人によって足りないところというのは必ず違ってくるわけですから、教師としてその足りない部分を自分の力で補っていく、そういった自主研修を、もうちょっとゆとりを持たせて、例えば一年間有休で自分で自分を育てる研修を考えていくとか、そういったことを組み合わせていく。だから、強制力と自主的なものとセットでいった方が私は教師の資質自身は向上していくのではないかというふうに考えております。
 時間がどんどんなくなってまいりましたので最後の質問にさせていただきたいと思いますけれども、最後のゴールでは、教育を施した後、では、一体どんな人間に育っていってほしいのか、世界で活躍できる人間とは一体どのような人間なのか、その辺について、こういう人間に育っていってほしいというその明確なゴールをお示しいただければと思います。伊吹大臣、お願いいたします。(発言する者あり)

○伊吹国務大臣 今、筆頭理事から、前段の提案にもお答えしてという不規則発言がございましたが、確かにいい御提案だと思います。授業のスケジュールその他がありますから、それを見ながら人のやりくりはしなければならないと思いますが、しかし同時に、人間、随所に師があり、こうしてとかしき先生のお話を伺っている中にも私は足らざるものを教えていただいている、こういう気持ちを持ってやはりやるということだと思います。
 そこで、本題についてお答えをいたしたいと思いますが、先般の教育基本法の改正の第一条では、人格の完成と国家社会の形成者としての心身ともに健康な国民の育成というのを教育の目的に置いております。この目的を受けて、第二条に目標として、幅広い知識と教養、豊かな情操と道徳心、健やかな身体、能力の伸長、自主及び自律の精神、公共の精神、伝統文化の尊重云々云々と、他国を尊重する態度というのがありますが、結局、どこへ出しても恥ずかしくない、人間としての自己抑制と品性を持っている知識人、最低限の知識を持っている日本人を育てていく。そのためには、やはり日本人としてのパスポートというかアイデンティティーを持っていない限り外国人とは渡り合えませんので、そういうことが理想の国際社会の日本人だと私は思います。

○とかしき委員 ありがとうございました。私も、アイデンティティーというのがやはり非常に重要だと思います。
 今の教育は、残念ながら、暗記と受験に非常に傾いてしまった教育になっております。しかし、世界の中で考えてみますと、むしろ、考えていく力、答えのない世界で自分で自分なりの答えを見出していく力、これが必要なんではないかと思います。日本の教育は、どうもここの部分がまだ力が及んでおりません。論理的な思考能力とか、リーダーシップとか、新しいことを発想する力とか、だれもやったことのないことに挑戦していくような勇気とか、そういったことがこれからの人材としては必要なんではないかと私は思っております。
 自治体の方もいろいろ試みをして、師範塾というような形で教師にこういった人間力、考える力をつける、教師自身にも、みずから論理的思考、アイデンティティーを持って、子供たちに自信と誇りを持って教育をしてもらうような、そういった教育システムを設けております。ということで、地方自治体の方も最近頑張って、教育で地域を栄えさせていこう、そういうふうに積極的に取り組んでいるところも多数出てきておりますので、政府の方からもそういった動きにぜひお力添えいただければと思います。
 ということで、これで終わりにしたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。