Report

議会報告:議事録

TOP > 議会報告 > 議事録

164-衆-財務金融委員会-3号 平成18年02月24日

○小野委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。とかしきなおみ君。

○とかしき委員 自由民主党のとかしきなおみでございます。
 私は、財務金融委員会で今回初めての質問でございますので、初心者らしく素朴な国民の視点で、法案審議に際しまして基本的な内容で質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
 今の日本の債務、これは世界一になってしまいまして、そして高齢化の進捗状況も世界一、下がってきたとはいえ物価もまだまだ高い。このような国民にとって高負担社会の状況下、日本が新たな繁栄の道を歩き始めるためには、新しい時代に合った税制をもう一度検討し直すときがそろそろ訪れているように感じます。
 そこで、谷垣財務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、現在日本で生活している人にとって、そして将来の日本人にとりまして、最もよい税制というのはどのようなものとお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

○谷垣国務大臣 財金委員会、最初の質問で基本的なことを聞くとおっしゃいましたが、基本的なことというのは一番難しいんですね。
 ただ、現在の社会の状況に応じたあるべき税制は何かということになりますと、今、日本社会が直面している状況は何なのかということに関連してまいります。
 それで、それは午前の質疑でも申し上げましたけれども、一つは、日本は人口減少社会に入っているということだろうと思いますし、もう一つは、これは冷戦が終結したということでありますけれども、かつての社会主義国が市場経済にどんどん参入してきている、また、BRICsのような新興市場国もどんどんあらわれてきているという大きな競争条件の変化の中で、日本がきちっとやっていけるかどうか、この二つにこたえていかなきゃいけない。恐らく税制も、あるべき税制ということになると、この課題にこたえられる税制をどうつくっていくかということになると思うんですね。
 それを考えていきます場合に、幾つかやはり、じゃ、どういう、税に特化して考えますと、何が問題かというと、やはり高齢化等々でいろいろな経費がふえてまいりますし、必要な支出もふえてまいりますから、それを安定的に支えられる、不安定な税制じゃ困ります、安定的に支えられる税制というのは何だろうという問題意識がなきゃいけない。
 それからもう一つ、高齢化してまいりましたときに、一部の世代だけに負担が偏るような税制はやはりよくないんだろうと思うんですね。若い方から高齢者まで、幅広く公平に負担を分かち合っていただくにはどうしたらいいかというような視点も必要じゃないかと思います。
 それから、先ほどのような競争条件の変化の中で、個人や企業が持っている力を発揮できないような税制では困りますし、個人や企業が力を発揮していこうというときにそれをゆがめるような税制であってもいけないんじゃないかというふうに思います。就労とか企業の行動をゆがめないことという視点ですね、そういう視点も大事じゃないかというふうに思っておりまして、そういったものを経済状況を踏まえながらどう具体的にしていくかということだろうと思います。
 午前中の審議でも、歳出歳入一体改革、ことしの半ばまでに選択肢を示すということを申し上げておりますが、いろいろな課題を頭に入れながら、所得課税、資産課税、法人課税、それから消費課税も含めまして、そういったものをやはりバランスよく考えていかなければいけないというふうに思っております。

○とかしき委員 ありがとうございました。
 安定的そして公平に、そして国民が力を出せる税制、そういう税制をつくっていきたいと私も思います。
 ということで、今大臣にお答えいただきましたけれども、新しい時代に合った税制を構築していくために、経済社会の構造変化を踏まえながら、所得、消費、資産といったさまざまな課税対象にどのような負担を求めていくべきか、きょうはこういった問題意識から質問させていただきます。
 まず最初、道具を持ってまいりまして、こちらのグラフをごらんになっていただきたいということで、これは民間の給与所得の総額なんですけれども、実は一九九〇年から後半になってきますと、ピークを迎えまして、だんだん下がってきているわけです。
 これがなぜ下がってきているのか。もちろん、これは労働人口が減ってきた、高齢化によって減ってきたという理由もあります。そして、雇用体系が、パートですとか、あとそれから派遣社員といった形で二極化してきまして、所得が少ない方も多くなってきたということで、ピークを迎えて、だんだんこういうふうに少なくなってきているわけです。
 これに反しまして、こちらは資産の方なんですけれども、この資産の方は実は一九九〇年以降全く変化なく、減っていない状況にあるわけです。ということは、これは資産がだんだんふえてきているという状況があるわけです。
 そうしますと、この二つのグラフを見ていただきますと、ストックとフローのことになるわけですけれども、今日本は、フローの、所得の方に税金をかけておりますけれども、フローの方に税金をかけていくという考え方もできるのではないかというふうに思うんですけれども……(発言する者あり)ストックですね、失礼いたしました、そのとおりでございます。ストックの方に税金をかけていく選択肢もあるのではないかというふうに考えられますけれども、谷垣財務大臣はどのようにお考えになられますでしょうか。

○谷垣国務大臣 今、グラフをお示しになって御意見の開陳がございました。税をかけていく対象は、所得、消費それから資産というふうにあるわけですが、今、所得と資産を比べての御議論ですね。
 それで、それぞれやはり、資産に税をかけていく場合、それから所得に税をかけていく場合、メリット、デメリットがあるんだろうと思うんですね。
 それで、資産にかけていくというのは、今まさにおっしゃったように、経済社会がフローからストックへということでストック化してきている、その流れに合ったという面は確かにあるわけですね。それで、資産格差の是正、それから垂直的公平、ストックが豊かになってきた時代で、そういう役割に資することができるという面がございます。それから、勤労世代に税負担が偏らない、こういう税体系がつくりやすいということがあるわけですね。これはメリットだと思います。
 他方、デメリットというわけではないんですが、難しい点が一つありまして、それは、キャッシュフローがないのに税をいただかなきゃならない。そうすると、これは抵抗感も相当あるんですね、納税者の方にしますと。つまり、実質以上に負担感を生んでしまいかねないというところがございまして、そこをどう考えていくかという問題点があろうかと思います。
 それから、それに対して所得に税をかけていくということになると、どういう点があるかといいますと、今申し上げたことの逆で、その年その年の所得にかけるわけですから、キャッシュフローはあるわけですので、比較的その難しさが、抵抗感が薄いという表現がいいかどうかわかりませんが、そういう面があると思います。そういうことで、歳入確保とか、それから特に所得再分配というようなことでは、やはり基幹的な役割を果たせるということがあるのではないかと思います。
 他方で、負担が重過ぎると勤労意欲とかそういったものに水を差してしまうということがこれはございます。事業意欲に水を差すとか、そういうことがあろうかと思いますので、それぞれのメリット、デメリットをうまく組み合わせていく必要があるのではないかと考えているところでございます。

○とかしき委員 ありがとうございました。
 もう私の質問の先の方まで答えていただいてしまいまして、どうしようかとちょっと戸惑っておりますけれども、先に進めさせていただきます。
 ということで、私も、今大臣お答えいただきましたように、両方うまく組み合わせていく必要があると思います。しかし、今までのように所得に課税をするだけではなくて、むしろ資産の方に課税をシフトしていった方がいいのではないかというふうに考えております。
 というのは、就労人口もふえて、給与所得がウナギ登りの高度成長期であればフローに課税するのは当然の考え方だと思います。増加するフローに伴って税収をふやして、成長に必要な設備投資に回していく。しかし、成長期を終えて現在の日本のような成熟期に入りますと、グラフでも先ほどお示ししましたように、ストック大国になってまいりますので、フローが減ってくるわけです。これは高度成長を終えた経済大国の宿命のようなものだと思います。この現状を見誤って、成熟期に入ってもなおフローに偏った税体系を維持すれば、将来の財源が枯渇していくおそれもあると私は考えております。
 そして、先ほど大臣も先にお答えいただきましたけれども、資産の方に課税をしていくというメリットなんですが、先ほどお話しいただきましたように、勤労意欲をわかせる、もう一つ私はあると思うんですけれども、資産の流動化を促す、これも考えられるのではないかと思います。
 勤労意欲の方をお話しいたしますと、個人にしろ企業にしろ、今は所得を頑張って上げたら祝福されるのではなくて、むしろ稼げば稼ぐほど税額が高くなっていく、お金を稼ぐ意欲が非常に落ちる傾向にあります。そして、企業の方も、事業を日本で立ち上げないで、税金の優遇措置のある海外の方で事業を立ち上げていこうという気持ちに自然になってしまうことも考えられます。
 さらに、もう一つは、先ほどお話ししました資産の流動化の方なんですけれども、これは資産が動かないと経済の活性化を阻害してしまうことになるわけです。これは人間の体で例えますと、血液がうまく循環しない状況になっているとも言えると思います。現状を見ますと、土地は遺産相続でもない限りは塩漬け状態になり、今有効な土地利用ができにくくなっております。そこで、資産の保有の課税を重点化すれば、要らない資産はどんどん市場に出てくるわけですし、若い人たちであっても資産を有効に活用できるチャンスが生まれてくるわけです。
 このように、資産保有への課税をすれば、資産の固定化という弊害をなくし、経済が発展するとともに、人の気持ちも活性化し、さらに財政の健全化、そして税収も上がるということが考えられると思います。もちろんそれは組み合わせ、ウエートの問題だと思いますけれども、こういったことを今後少し御配慮いただくことはできないでしょうか。お答えいただければと思います。

○谷垣国務大臣 先ほど申しましたように、あるべき税制をつくる上で、消費税がどうかという点が非常に興味の関心になるわけですけれども、消費税だけではなくて、所得税、それから資産課税、法人税、全体のバランスを考えなければなりませんので、今委員のおっしゃったような視点でもう一回資産課税というものをよく見ていくということは必要だろうと思います。
 先ほどメリット、デメリットを申し上げましたけれども、メリットという点でさらに申し上げるならば、先ほど私が申し上げなかった点がもう一つございまして、それはやはり高齢者の扶養が個人あるいは家庭からだんだん社会にある程度ウエートがかかっていく中で、そういう社会が支える費用をどうやって分かち合っていくかという場合に、高齢者の持っている資産というものに着目して税体系をつくるという考え方もあるんだろう。そういう議論もあるんだと思うんですね。そういう観点も私は必要だと思います。
 ただ、どこまで資産課税にウエートを移せるかということになりますと、今それもまさに組み合わせの問題なんですが、所得課税が果たしているような基幹的な役割を資産課税に任せられるかどうか。
 それから、もう一つの問題として、今流動化ということもおっしゃいましたけれども、金融資産等に余り重い課税をしますと海外に逃げていってしまうというようなことも今日では考えておかなきゃいけない。
 それから、もう一つ、この議論をしますときによく考えていかなければいけないことは、資産課税を重くしていった場合に、資産価額というようなものにどういう影響が出てきて、それが経済あるいは企業の行動にどういう影響を与えていくかというようなことも頭に入れておかなければならないことだろうと思います。
 それから、流動化の中で、相続でも起きない限り資産というものがなかなか出てこないということもおっしゃいまして、そういう面も確かにあろうかと思いますが、そういう点を解決するために、贈与税と一緒になって生前に動かすことを可能にしようということで、相続税と贈与税と一体的に考えていけないかというような改正も私どもやったところでございまして、そのあたりも総合的に考えて資産課税のあり方を今後よく議論していきたいと思っております。

○とかしき委員 ありがとうございました。
 ということで、いろいろ所得に今までかけているんですけれども、そういう資産の組み合わせもぜひ検討課題に入れていただければと思います。
 それでは、ちょっと次の質問に行かせていただきます。
 一九九五年、阪神大震災の被害額はおよそ十兆円であり、地震保険で支払われた金額はわずか三千億円でした。一方、一九九四年に起こりましたアメリカのノースリッジの地震の被害額はおよそ四兆円であり、地震保険で支払われた金額は一兆六千億円でありました。つまり、阪神大震災の地震保険での支払いは被害額のわずか三%、ノースリッジの地震の場合は四〇%だったわけです。
 今回の法改正素案に上っておりますけれども、地震保険料の控除の創設や耐震改修に関する税制措置を講じておりますけれども、どのような効果を期待しておられますでしょうか。谷垣財務大臣、そして櫻田内閣府副大臣、それぞれお答えいただきたくお願いいたします。

○竹本副大臣 先生おっしゃるとおり、地震が起こりますと、日本の場合ですと、公共施設等は政府がしっかりしておりますからすぐ回復するんですけれども、個人の失われた資産というのはなかなか回復できない。ですから、今お話ありましたように、わずか三%というような例は間々あるわけでございまして、そのためはどうしてもあらかじめ地震保険に入っておいていただく必要がある。
 そういう考えのもとに、今回、地震災害に対する備えということで、自助努力を支援するという考え方から所得税の地震保険料控除を創設いたそうとしております。限度額は五万円ですけれども、控除をすればどんどん地震保険に入っていただく、これが一つ。
 もう一つは、あらかじめ住宅の耐震構造化を進めようという、この努力に対しても、やはりそれがもっと促進されるような税制上の備えをつくらなきゃいけないということで、既存住宅を耐震改修した場合に所得税額の特別控除制度を創設することといたしております。
 このようにして、国民の安全、安心の確保ということをいろいろな税制面で人々に促していこう、こういう考え方を持っておるわけであります。

○櫻田副大臣 お答えさせていただきます。
 地震保険の普及促進につきましては、これまでも加入限度の引き上げや建物の構造に応じた各種割引制度の導入といった商品性の改善を行ってきたところでございます。また、民間の保険業界に対しましても、普及促進に向けて積極的な広報活動を実施してきたところでございます。現在、平成十七年三月末におきましても、普及率は一八・五%にとどまっているところでございます。
 こうした中、現在御審議いただいている所得税法等改正法案においては、地震保険料にかかわる新たな所得控除を創設することとされているところでございます。これにより、保険契約者にとっては保険料負担が実質的に軽減されることになることから、普及率の一層の向上が図られるものと期待しているところでございます。
 また、金融庁といたしましては、今後とも、各種の取り組みを通じまして地震保険の普及等に努めてまいりたいと思っております。
 以上でございます。

○とかしき委員 ということで、地震保険というのは私たちの生活の基盤になる大切な保険だと思いますので、それが整うことによって国民の皆さんが安心して生活できる、そういった環境をぜひ整えていっていただきたいと思います。
 ということで、これらの法案、審議させていただきましたけれども、国民が負担に見合うサービスの向上が将来約束され、そして明るい未来の見えるわかりやすい税体系の一歩となることを願いまして、私の質問を終わらせていただきます。
 本日は、どうもありがとうございました。