164-衆-環境委員会-1号 平成18年01月27日
○木村委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。とかしきなおみ君。
○とかしき委員 初質問でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
静かな時限爆弾と言われるアスベストは、昨年六月のクボタの発表以降、工場の従事者だけではなく、家族や周辺住民にも患者が出るというショッキングな展開となり、国民は、身近にあるアスベストに対する健康不安や政府の対応のおくれを指摘する声が大きくなっていました。その声を受け、このたび提出されましたアスベスト関連法案につきまして、次の四点、実態把握の強化、過去の被害への対応、国民不安への対応、被害拡大防止について質問をさせていただきます。
まず最初に、実態把握の強化についてお尋ねいたします。
昨年行われましたアスベスト使用実態調査の結果、アスベストについてどの程度の実態把握ができたのでしょうか。内閣官房、お答えください。労働者や家族及び周辺住民のアスベスト暴露における健康被害の状況はどうだったのか。厚労省、環境省、それぞれお答えください。
○宮野政府参考人 お答えをいたします。
建築物におきますアスベストの使用実態でございます。
関係省庁におきまして、その把握のため、公共住宅、学校施設、病院といった公共建築物や、民間の建築物につきまして調査を実施しております。現時点におきまして、調査対象施設におけます調査の回答の状況を見ますと、例えば公共住宅につきましては一〇〇%、学校施設、病院、社会福祉施設につきましては約九割、民間の建築物、これは一定の規模以上のものについて調査をしておりますけれども、約七五%につきまして実態把握がされているところでございます。
いまだ所有者の回答が得られていない建築物につきましても引き続き調査を行うとともに、これと並行をいたしまして、これらの調査結果を踏まえ、暴露等のおそれのある施設について、アスベストの除去等の対応を進めているところでございます。
○森山政府参考人 お答え申し上げます。
労働者の健康被害の状況につきまして、労災保険の支給決定件数を申し上げますと、平成十六年度までの累計で、石綿による肺がんにつきましては三百五十四件、中皮腫につきましては五百二件でございます。
なお、ここ数年の支給決定件数を見ますと、肺がんにつきましては、十四年度が二十二件、十五年度が三十八件、十六年度が五十八件となっておりまして、また中皮腫につきましては、同様に五十六件、八十五件、百二十八件と、いずれも増加傾向にございます。
○滝澤政府参考人 周辺住民等への健康被害でございますが、その健康被害の実態、詳細については明らかとなっておりません。しかしながら、この関連情報収集ということは極めて重要だというふうに認識しております。
このため、環境省におきましては、人口動態調査のデータを活用いたしまして、平成十四年から十六年の三年間に、尼崎市を含みます兵庫県内で中皮腫でお亡くなりになりました方を対象に、遺族の御協力をいただきまして、一般環境経由による石綿の健康被害について、本人、遺族への聞き取り調査でありますとかカルテの調査など、実態調査を現在実施中でございます。専門家の科学的な助言をいただきながら分析を進め、年度内には取りまとめたいと考えております。
○とかしき委員 健康被害の実態把握について調査をしたところ、私の地元の自治体からは、労災認定は国の事業であり情報が得にくい、あと、労働基準監督署に問い合わせたところ、個人情報にかかり開示できないとのことで、被害実態が非常につかみにくいという声が上がっています。
アスベスト対策における関係省庁との連携において、国はどのような指示を行っているのか、窓口の一本化など検討なさっているのか、内閣官房から御答弁をお願いいたします。
○宮野政府参考人 アスベスト問題につきましての関係省庁間の連携でございます。
アスベスト問題につきましては、昨年の七月以来、関係閣僚会合、あるいは局長、課長クラスの関係省庁会議、これを開催いたしまして、関係省庁間の十分な連携を図りつつ、随時、必要な措置を講じてきたところでございます。政府といたしましては、今後とも、それぞれの省庁が責任を持って対応する一方で、閣僚レベルでの十分な調整を含めまして、関係省庁が緊密に連携をしつつ、総合的なアスベスト対策を迅速に実施することができるよう最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
なお、ただいま先生から御指摘がございました労災補償に係る情報でございますけれども、これも個人情報については公表できないというような制約がございますが、一方で、広く国民に情報を提供し、その不安の解消を図るということは非常に重要なことだと考えております。そういった観点で、厚生労働省におきましても、石綿による中皮腫あるいは肺がんの労災認定を受けた労働者が所属していた事業場名の公表、こういった措置を行っているというふうに承知をしております。
○とかしき委員 次に、二点目、過去の被害への対応についてお尋ねいたします。
今回の法案では、アスベスト被害に対して、補償とせずに救済とした理由をお示しください。今回提案の救済とそして労災とでは、大きく処遇に差があります。なぜ、これだけの格差があるのでしょうか。環境省の方、お答えください。
○寺田政府参考人 お答え申し上げます。
石綿、アスベストによりますところの中皮腫及び肺がんというような健康被害につきましては、暴露から発症まで平均で三十から四十年という長い潜伏期間があるという特殊性を持っているところでございます。したがいまして、労災補償対象者以外の被害者の方々につきまして、個別的な因果関係、つまり、どういう暴露の形態で、どこでどういう原因により発症したのかということを特定するということは、極めて困難な状況にあります。
したがいまして、そういった因果関係に基づく補償制度を構築するのは非常に難しい。あるいは、仮に補償制度ということになりますと、そうした困難な中で、一人親方でありますとか、労働者の家族、あるいは施設内の暴露者、周辺住民という、さまざまな方々の暴露形態を特定いたしまして、その原因者を追及して賠償責任を確定する、こういう作業を行わざるを得ないわけでございまして、結果として、迅速な救済も図れませんでしょうし、多くの方々が対象から漏れて、すき間のない救済ができなくなる、こういったことが当然予想されるわけでございます。
そこで、本制度では、民事責任から離れまして、個別の因果関係は問わないで、石綿による健康被害者をすべからく救済するという構造といたしまして、迅速で、すき間のない救済を実現するということとしたものでございます。
なお、こうした構成をとったところから、お尋ねにございましたように、労働基準法上の事業者の災害補償責任を保険の形式で担保する、そういった労災制度と差が生ずるということは、これは制度設計上の問題としてやむを得ないことであるというふうに考えておりまして、その上で、本制度における給付金の支給水準につきましては、他の救済制度とのバランスを勘案いたしまして、十分な水準となるということと考えております。
○とかしき委員 それでは次は、石綿による健康被害の救済のために、政府は、広く事業者に費用負担をさせるために石綿健康被害救済基金を設置し、徴収対象は二百六十三万事業所に及ぶと聞きました。これは世界を見ましても事例のない画期的な挑戦だそうで、評価をしたいと思います。
参考までに、事業者の拠出金は、零細企業の場合、または数千人規模の大企業の場合、年間幾らぐらいの負担になると予想されているのでしょうか。環境省の方、お答えください。
○寺田政府参考人 お答え申し上げます。
事業者が薄く広く負担するという一般拠出金の額についてのお尋ねでございます。
一般拠出金の額につきましては、賃金総額に一定の率を乗じた額ということで考えております。賃金総額に乗じる一定の率というものは、救済給付の支給に要する費用の予想額、あるいは国及び地方公共団体からの拠出金の額、指定疾病の発生状況などを勘案しまして、今後、中央環境審議会の意見を聞いて定めていくということでございますけれども、お尋ねでございますので、今のところの予測と申しますか、数字を申し上げたいと思っております。
実際の所要額、負担額を正確に予測するというのは、これは至難のわざでございますけれども、環境省といたしましては、制度設計上の仮定といたしまして、年間の総所要額を九十億円というふうに見込んでおります。
この九十億円から国の負担する事務費あるいは地方公共団体の拠出金、さらには石綿との関係が特に深い事業主に課される特別拠出金を差し引いた額が一般拠出金の総額となるわけでございますけれども、仮にこの九十億のすべてを一般拠出金で賄うというふうに考えた場合、マックス等を考えるということでございますけれども、その負担率は賃金総額に対しまして一千分の〇・〇六ということになります。
これを具体的な企業に当てはめますと、例えば我が国を代表するような従業員六万人ぐらいの規模の大企業で年三千万円程度、あるいは、零細企業というお尋ねがございましたけれども、従業員十人ぐらいで平均賃金が五百万円というふうな企業を想定いたしますと、年三千円程度という計算になるわけでございます。
○とかしき委員 次に、三点目の国民の不安への対応についてお伺いいたします。
国民のアスベスト関係の健康相談所の実施状況をお知らせください。その場合、都道府県、市区町村の担っている役割は現在どのようにすみ分けされているのでしょうか、あわせてお教えください。厚労省の方、お願いいたします。
○中島政府参考人 アスベストによる健康被害に対してでございますが、労災病院あるいは各都道府県にあります産業保健推進センター等に相談窓口が設置されておりますほか、保健所におきましては、都道府県、指定都市、中核市、特別区等、いずれが設置するものでありましても、相談があれば健康相談業務の一環として広く受け付けているという状況でございます。これらの窓口におきまして、労災病院を中心に、昨年末までに一万八千件を超える相談があったところでございます。
○とかしき委員 アスベストによる健康被害の疑いのある方に対して、現在どのような健康診断が行われているでしょうか。市区町村で行っている例えば肺がん検診にアスベストの調査を組み合わせていくという形で活用する方法とか財源措置をとっていくことはできないでしょうか。厚労省の方、お答えください。
○中島政府参考人 現に石綿作業に従事していらっしゃいます労働者の方については、その雇用主である事業者に健康診断の実施が義務づけられているところでございまして、また、退職された方については、石綿による一定の所見が見られた方に対して無料で健康診断が実施されているところでございます。
また、不安を抱えておられる住民の方に対しましては、無料で相談をこれまた受け付けておりまして、その結果、一定の石綿暴露の可能性があると認められた方については、石綿関連の調査研究の一環といたしまして、自己負担なく必要な検査を受診できるようにすること等につきまして、現在、環境省とともに検討を進めているところでございます。
また、肺がん検診の活用等でございますが、厚生労働省といたしましては、既存の検診の場等さまざまな機会を活用いたしまして、アスベスト関連疾患の診断に活用できます自記式、自分で書ける調査票、こういったものの配付、活用等を通じまして相談窓口の紹介を行うよう努めてまいりたいというふうに考えております。
○とかしき委員 公共施設や住宅などで吹きつけアスベストが使用されていないということが確認できたとき、例えば表示でアスベスト安全表示という制度を創設すれば住民の不安を少しでも解消できるのではと考えますが、取り組みを検討していただくことはできないのでしょうか。国交省の方、お答えください。
○和泉政府参考人 お答え申し上げます。
公共建築物などにつきましては、施設管理者におきまして吹きつけアスベスト等の使用実態を調査しており、学校、病院、駅等の施設名の公表が行われております。
また、今回提出しております建築基準法の改正が行われれば、多数の者が利用する建築物等につきましては、吹きつけアスベストの状況につきまして定期報告が義務づけられることになります。その報告の内容が特定行政庁におきまして一般の閲覧に供されることになります。
加えて、住宅につきましては、今後、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におきまして、既に建築された住宅を対象として、吹きつけアスベストの有無等を表示対象に加えるというようなことを検討しております。これらの制度により住民に対する情報の開示が行われ、先生の御指摘の趣旨も含めて、住民の不安の解消につながるよう努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○とかしき委員 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
それでは、不安を感じた国民の方から依頼のあったアスベストの検査費用とか囲い込み、除去及び解体の助成について、国交省のお考えをお知らせください。
○和泉政府参考人 平成十七年度補正予算及び十八年度予算案におきまして、建築物における吹きつけアスベストの検査、除去等の費用につきまして、日本政策投資銀行等による低利融資制度の創設を盛り込むとともに、多数の者が利用する建築物について、既存の補助制度を拡充しまして、アスベストの検査、除去等の費用について補助できるようにしたところでございます。さらに、住宅につきましては、十七年度に新たに創設した地域住宅交付金の活用が考えられます。
地方公共団体とも連携して積極的に支援するとともに、これらの支援措置について幅広く周知してまいりたいと考えております。
○とかしき委員 では最後に、被害の拡大防止についてお伺いいたします。
大阪府では、アスベスト除去を円滑にするため、中小企業金融公庫等の低金利融資制度を創設することになりました。しかし、実態を調査いたしましたところ、中小零細企業が利用する場合、担保不足で利用が困難になりやすいと判明いたしました。そこで、弾力的な運用制度が必要ですが、自治体側にも財源がなく、苦しい状況に追い込められています。
政府として、中小零細企業へのサポートをいかがお考えになっているのでしょうか。経産省の方、お答えください。
○深野政府参考人 お答えいたします。
融資制度の関係でございますけれども、中小企業が建築物等からのアスベスト除去を円滑に行うことを支援するため、現在、中小企業金融公庫及び国民生活金融公庫に低利融資制度を創設することを進めて、準備をしております。
また、御指摘の無担保の場合でございますけれども、通常、こういったところから無担保でお金を借ります場合には上乗せ金利がございます。しかしながら、今回、無担保の融資を円滑に関係の事業者の方が受けられますように、本年度の補正予算におきまして所要の出資金を計上いたしまして、上乗せ金利なしで融資が受けられるように、今そういう措置の準備をしております。
○とかしき委員 よろしくお願いいたします。
では、海外ではドライヤーを頻度高く使っていた美容師が中皮腫になったとの報告もあります。私の地元の自治体では、市民からの要請により、アスベスト含有家庭用品のドライヤーやこたつなど六十品目を昨年の十一月より回収、保管しております。ところが、その処分に大変困っております。
このような自治体が回収したアスベストを含んだ家庭用品は、一般廃棄物でも産業廃棄物として受け入れ処分をしていただけることはできないのか、環境省の方、お答えください。
○由田政府参考人 お答えします。
アスベストを含有する家庭用品が廃棄される場合にも、通常の家庭用品が廃棄される場合と同様に、市町村が処理を行うことになるわけでありますが、その処理の工程で、万一にもアスベストが飛び散ることのないように対応する必要があるわけであります。
このため、市町村に対しまして、製品に関する情報につきまして提供いたしておりますが、これとともに、当面の対応としまして、飛散防止に留意して、他のゴミと区別して排出してもらい、破損しないように回収すること、あるいは、できるだけ破砕せず、散水や速やかな覆土により最終処分を行うよう、また、保管する場合には他の廃棄物と区別がつくようにすることにつきまして、昨年来指導をいたしているところであります。
また、恒久的な対応といたしまして、より安全な処理方法、システムにつきまして、処理施設におけますアスベストの挙動調査、分析を行いまして、専門家の意見を聞きながら、年度内にも考え方を取りまとめまして、市町村に対して提示したいと考えております。
こうした調査検討の結果、廃棄物処理施設の改造などが必要となった場合には、昨年、改革、創設させていただきました循環型社会形成推進交付金によりまして、しっかりと後押しをさせていただきまして、国と地方が一体となってアスベストが含有する家庭用品の処理を進めてまいりたいと考えております。
このようなアスベストを含む家庭用品の廃棄物につきましては、アスベスト含有スレート製品などの廃建材とは異なりまして、アスベストの含有率が低いということから、市町村の処理施設での対応が中心になるものと考えておりますが、家庭用品の市町村による破砕残渣などが、今回提案させていただいております法案の無害化処理の特例制度に基づきまして、一般廃棄物及び産業廃棄物につきまして認定された産業廃棄物処理業者に委託処理されることは可能だというふうに考えております。
また、都道府県知事から一般廃棄物と産業廃棄物の処理施設の設置許可を受けた無害化処理施設を有する優良な産業廃棄物処理業者に市町村が委託処理することも十分可能であります。
○とかしき委員 では、一般環境におけるアスベスト濃度の環境基準はなぜないのでしょうか。住民の不安解消のため、一般環境におけるアスベストの濃度の調査を、これからアスベストが飛散する可能性の高い地域で継続的に実施していくことは難しいのでしょうか。環境省の方、お答えください。
○竹本政府参考人 現在、アスベストにつきまして環境基準はないわけでございますが、一九八六年に公表されましたWHOの環境保健クライテリアなどを参照いたしまして、健康影響の面も検討した上で、大気汚染防止法に基づきまして、工場、事業場の敷地境界基準値を一リッター当たり十本と定めておるところでございます。
アスベストは、その発生源からの距離に応じまして急速に濃度が減衰するということが知られておりまして、主として、発生源直近で高濃度の汚染が生じる物質でございます。そのために、一般環境における基準を定めるよりも、敷地境界における基準を設定いたしまして、発生源において重点的な対策を講ずる方が、一般環境での健康影響を防止する観点からも、より効果的と考えたところでございます。
また、環境省が実施しております大気環境モニタリングの結果によりますれば、アスベストの環境濃度は当該基準に比べましても極めて低い結果となっておりまして、この結果も踏まえまして、現時点におきましては環境基準を設定する必要はないと考えておるところでございます。
また、モニタリングにつきましては、委員御指摘のとおり、国民の不安解消のため大変重要と私ども考えておりまして、今後とも、昨年秋より緊急環境濃度モニタリング調査というのをやっておりますが、これを継続して、アスベストの飛散の懸念される建築物の解体現場などを中心にこれからも実施をしてまいりたいと思っております。
○とかしき委員 次は、立入検査についてお伺いいたします。
大気汚染防止法で、除去作業前の養生が終了した時点で立入検査が入りますけれども、労働基準監督署は除去作業中が基準の原則として、現場は、立ち入る時期が変わっているということで、大変混乱しているようです。
立ち入りの場合はどちらが適用になるのでしょうか。立入検査の都道府県と市区町村の連携をどのようにとっていらっしゃるつもりなのか。そして、今後、自治体間をつなぐような連絡会議のようなものを持たせる予定はないのでしょうか。環境省の方、お答えください。
○竹下大臣政務官 お答えをいたします。
対策を確実に実施していくためには、自治体と国あるいは自治体と国の機関との連携、さらには自治体内部の部局間の連携というのは非常に大切であると考えております。
このうち、自治体と国の機関との連携につきましては、昨年夏に環境省から関係自治体に通知を発出いたしまして、労働基準監督署と共同で立入検査を実施するなど、連携して規制の徹底を図るよう依頼をしたところでございます。
また、自治体内部の部局間の連携につきましては、昨年九月に取りまとめられました政府の当面の対策を踏まえて、自治体の関係部局間におきまして、石綿の使用実態調査結果などの情報の共有化が図られるよう、国においても関係省庁間で連携を強化しようということにいたしております。
さらに、神奈川県などでは、国の地方支分部局、県及び関係市が協定を結びまして、情報の相互提供や合同の立入検査などを進めております。
環境省といたしましても、地方自治体などが参加して開く会などの場で、こうした先進的な取り組みを他の自治体に紹介することなどによりまして、地域における石綿対策の確実な実施を図ってまいりたい、こう考えております。
○とかしき委員 御答弁ありがとうございました。
アスベストの問題は、政府の対応のおくれが今までこの問題を大きくして、拡大してしまった責任は否めないわけです。それを是正する意味でも早急にこの法案の成立を望みますけれども、さらに、今御答弁いただきましたように、運用の面においても、現場で混乱が生じないように、そして、隠れた被害者を救済できるように、連携のとりやすい体制づくりをぜひ配慮していただきたいと思います。
そこで、最後に環境大臣にお伺いいたします。
今回の法整備を含む対応策でアスベストへの対応は十分とお考えになっていますでしょうか。今後、事態の推移を見ながら、必要とあればさらに補充していく姿勢が大切と考えておりますが、環境大臣の決意をお聞かせください。
○小池国務大臣 御指摘のとおり、この新法、救済策につきまして、スピード感ということも大変重要であるということで、昨年の七月以降に関係閣僚会合などを随時開催いたしました。そして今回の新法を取りまとめをしてきたところでございます。さらに、昨年十二月には、このアスベスト問題に係る総合対策を、その結果として取りまとめることができました。今回、十七年度の補正予算案、そして十八年度の予算案などにおいて必要な措置を講じて、あわせて、法的整備が必要な対策について、今回のこの二法案を国会に提出して、御審議をいただいているところでございます。
今後とも、関係省庁間で密接な連携を図る、情報を共有するなどといった形で連携を図りながら、これら二法案の着実な施行を初めとして、総合的な石綿対策の実施に全力を尽くしてまいりたいと考えております。また、初めての法律でございますので、しっかりと進捗状況を見てまいりたいと考えております。
○とかしき委員 ありがとうございました。
○木村委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。とかしきなおみ君。
○とかしき委員 初質問でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
静かな時限爆弾と言われるアスベストは、昨年六月のクボタの発表以降、工場の従事者だけではなく、家族や周辺住民にも患者が出るというショッキングな展開となり、国民は、身近にあるアスベストに対する健康不安や政府の対応のおくれを指摘する声が大きくなっていました。その声を受け、このたび提出されましたアスベスト関連法案につきまして、次の四点、実態把握の強化、過去の被害への対応、国民不安への対応、被害拡大防止について質問をさせていただきます。
まず最初に、実態把握の強化についてお尋ねいたします。
昨年行われましたアスベスト使用実態調査の結果、アスベストについてどの程度の実態把握ができたのでしょうか。内閣官房、お答えください。労働者や家族及び周辺住民のアスベスト暴露における健康被害の状況はどうだったのか。厚労省、環境省、それぞれお答えください。
○宮野政府参考人 お答えをいたします。
建築物におきますアスベストの使用実態でございます。
関係省庁におきまして、その把握のため、公共住宅、学校施設、病院といった公共建築物や、民間の建築物につきまして調査を実施しております。現時点におきまして、調査対象施設におけます調査の回答の状況を見ますと、例えば公共住宅につきましては一〇〇%、学校施設、病院、社会福祉施設につきましては約九割、民間の建築物、これは一定の規模以上のものについて調査をしておりますけれども、約七五%につきまして実態把握がされているところでございます。
いまだ所有者の回答が得られていない建築物につきましても引き続き調査を行うとともに、これと並行をいたしまして、これらの調査結果を踏まえ、暴露等のおそれのある施設について、アスベストの除去等の対応を進めているところでございます。
○森山政府参考人 お答え申し上げます。
労働者の健康被害の状況につきまして、労災保険の支給決定件数を申し上げますと、平成十六年度までの累計で、石綿による肺がんにつきましては三百五十四件、中皮腫につきましては五百二件でございます。
なお、ここ数年の支給決定件数を見ますと、肺がんにつきましては、十四年度が二十二件、十五年度が三十八件、十六年度が五十八件となっておりまして、また中皮腫につきましては、同様に五十六件、八十五件、百二十八件と、いずれも増加傾向にございます。
○滝澤政府参考人 周辺住民等への健康被害でございますが、その健康被害の実態、詳細については明らかとなっておりません。しかしながら、この関連情報収集ということは極めて重要だというふうに認識しております。
このため、環境省におきましては、人口動態調査のデータを活用いたしまして、平成十四年から十六年の三年間に、尼崎市を含みます兵庫県内で中皮腫でお亡くなりになりました方を対象に、遺族の御協力をいただきまして、一般環境経由による石綿の健康被害について、本人、遺族への聞き取り調査でありますとかカルテの調査など、実態調査を現在実施中でございます。専門家の科学的な助言をいただきながら分析を進め、年度内には取りまとめたいと考えております。
○とかしき委員 健康被害の実態把握について調査をしたところ、私の地元の自治体からは、労災認定は国の事業であり情報が得にくい、あと、労働基準監督署に問い合わせたところ、個人情報にかかり開示できないとのことで、被害実態が非常につかみにくいという声が上がっています。
アスベスト対策における関係省庁との連携において、国はどのような指示を行っているのか、窓口の一本化など検討なさっているのか、内閣官房から御答弁をお願いいたします。
○宮野政府参考人 アスベスト問題につきましての関係省庁間の連携でございます。
アスベスト問題につきましては、昨年の七月以来、関係閣僚会合、あるいは局長、課長クラスの関係省庁会議、これを開催いたしまして、関係省庁間の十分な連携を図りつつ、随時、必要な措置を講じてきたところでございます。政府といたしましては、今後とも、それぞれの省庁が責任を持って対応する一方で、閣僚レベルでの十分な調整を含めまして、関係省庁が緊密に連携をしつつ、総合的なアスベスト対策を迅速に実施することができるよう最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
なお、ただいま先生から御指摘がございました労災補償に係る情報でございますけれども、これも個人情報については公表できないというような制約がございますが、一方で、広く国民に情報を提供し、その不安の解消を図るということは非常に重要なことだと考えております。そういった観点で、厚生労働省におきましても、石綿による中皮腫あるいは肺がんの労災認定を受けた労働者が所属していた事業場名の公表、こういった措置を行っているというふうに承知をしております。
○とかしき委員 次に、二点目、過去の被害への対応についてお尋ねいたします。
今回の法案では、アスベスト被害に対して、補償とせずに救済とした理由をお示しください。今回提案の救済とそして労災とでは、大きく処遇に差があります。なぜ、これだけの格差があるのでしょうか。環境省の方、お答えください。
○寺田政府参考人 お答え申し上げます。
石綿、アスベストによりますところの中皮腫及び肺がんというような健康被害につきましては、暴露から発症まで平均で三十から四十年という長い潜伏期間があるという特殊性を持っているところでございます。したがいまして、労災補償対象者以外の被害者の方々につきまして、個別的な因果関係、つまり、どういう暴露の形態で、どこでどういう原因により発症したのかということを特定するということは、極めて困難な状況にあります。
したがいまして、そういった因果関係に基づく補償制度を構築するのは非常に難しい。あるいは、仮に補償制度ということになりますと、そうした困難な中で、一人親方でありますとか、労働者の家族、あるいは施設内の暴露者、周辺住民という、さまざまな方々の暴露形態を特定いたしまして、その原因者を追及して賠償責任を確定する、こういう作業を行わざるを得ないわけでございまして、結果として、迅速な救済も図れませんでしょうし、多くの方々が対象から漏れて、すき間のない救済ができなくなる、こういったことが当然予想されるわけでございます。
そこで、本制度では、民事責任から離れまして、個別の因果関係は問わないで、石綿による健康被害者をすべからく救済するという構造といたしまして、迅速で、すき間のない救済を実現するということとしたものでございます。
なお、こうした構成をとったところから、お尋ねにございましたように、労働基準法上の事業者の災害補償責任を保険の形式で担保する、そういった労災制度と差が生ずるということは、これは制度設計上の問題としてやむを得ないことであるというふうに考えておりまして、その上で、本制度における給付金の支給水準につきましては、他の救済制度とのバランスを勘案いたしまして、十分な水準となるということと考えております。
○とかしき委員 それでは次は、石綿による健康被害の救済のために、政府は、広く事業者に費用負担をさせるために石綿健康被害救済基金を設置し、徴収対象は二百六十三万事業所に及ぶと聞きました。これは世界を見ましても事例のない画期的な挑戦だそうで、評価をしたいと思います。
参考までに、事業者の拠出金は、零細企業の場合、または数千人規模の大企業の場合、年間幾らぐらいの負担になると予想されているのでしょうか。環境省の方、お答えください。
○寺田政府参考人 お答え申し上げます。
事業者が薄く広く負担するという一般拠出金の額についてのお尋ねでございます。
一般拠出金の額につきましては、賃金総額に一定の率を乗じた額ということで考えております。賃金総額に乗じる一定の率というものは、救済給付の支給に要する費用の予想額、あるいは国及び地方公共団体からの拠出金の額、指定疾病の発生状況などを勘案しまして、今後、中央環境審議会の意見を聞いて定めていくということでございますけれども、お尋ねでございますので、今のところの予測と申しますか、数字を申し上げたいと思っております。
実際の所要額、負担額を正確に予測するというのは、これは至難のわざでございますけれども、環境省といたしましては、制度設計上の仮定といたしまして、年間の総所要額を九十億円というふうに見込んでおります。
この九十億円から国の負担する事務費あるいは地方公共団体の拠出金、さらには石綿との関係が特に深い事業主に課される特別拠出金を差し引いた額が一般拠出金の総額となるわけでございますけれども、仮にこの九十億のすべてを一般拠出金で賄うというふうに考えた場合、マックス等を考えるということでございますけれども、その負担率は賃金総額に対しまして一千分の〇・〇六ということになります。
これを具体的な企業に当てはめますと、例えば我が国を代表するような従業員六万人ぐらいの規模の大企業で年三千万円程度、あるいは、零細企業というお尋ねがございましたけれども、従業員十人ぐらいで平均賃金が五百万円というふうな企業を想定いたしますと、年三千円程度という計算になるわけでございます。
○とかしき委員 次に、三点目の国民の不安への対応についてお伺いいたします。
国民のアスベスト関係の健康相談所の実施状況をお知らせください。その場合、都道府県、市区町村の担っている役割は現在どのようにすみ分けされているのでしょうか、あわせてお教えください。厚労省の方、お願いいたします。
○中島政府参考人 アスベストによる健康被害に対してでございますが、労災病院あるいは各都道府県にあります産業保健推進センター等に相談窓口が設置されておりますほか、保健所におきましては、都道府県、指定都市、中核市、特別区等、いずれが設置するものでありましても、相談があれば健康相談業務の一環として広く受け付けているという状況でございます。これらの窓口におきまして、労災病院を中心に、昨年末までに一万八千件を超える相談があったところでございます。
○とかしき委員 アスベストによる健康被害の疑いのある方に対して、現在どのような健康診断が行われているでしょうか。市区町村で行っている例えば肺がん検診にアスベストの調査を組み合わせていくという形で活用する方法とか財源措置をとっていくことはできないでしょうか。厚労省の方、お答えください。
○中島政府参考人 現に石綿作業に従事していらっしゃいます労働者の方については、その雇用主である事業者に健康診断の実施が義務づけられているところでございまして、また、退職された方については、石綿による一定の所見が見られた方に対して無料で健康診断が実施されているところでございます。
また、不安を抱えておられる住民の方に対しましては、無料で相談をこれまた受け付けておりまして、その結果、一定の石綿暴露の可能性があると認められた方については、石綿関連の調査研究の一環といたしまして、自己負担なく必要な検査を受診できるようにすること等につきまして、現在、環境省とともに検討を進めているところでございます。
また、肺がん検診の活用等でございますが、厚生労働省といたしましては、既存の検診の場等さまざまな機会を活用いたしまして、アスベスト関連疾患の診断に活用できます自記式、自分で書ける調査票、こういったものの配付、活用等を通じまして相談窓口の紹介を行うよう努めてまいりたいというふうに考えております。
○とかしき委員 公共施設や住宅などで吹きつけアスベストが使用されていないということが確認できたとき、例えば表示でアスベスト安全表示という制度を創設すれば住民の不安を少しでも解消できるのではと考えますが、取り組みを検討していただくことはできないのでしょうか。国交省の方、お答えください。
○和泉政府参考人 お答え申し上げます。
公共建築物などにつきましては、施設管理者におきまして吹きつけアスベスト等の使用実態を調査しており、学校、病院、駅等の施設名の公表が行われております。
また、今回提出しております建築基準法の改正が行われれば、多数の者が利用する建築物等につきましては、吹きつけアスベストの状況につきまして定期報告が義務づけられることになります。その報告の内容が特定行政庁におきまして一般の閲覧に供されることになります。
加えて、住宅につきましては、今後、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度におきまして、既に建築された住宅を対象として、吹きつけアスベストの有無等を表示対象に加えるというようなことを検討しております。これらの制度により住民に対する情報の開示が行われ、先生の御指摘の趣旨も含めて、住民の不安の解消につながるよう努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○とかしき委員 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
それでは、不安を感じた国民の方から依頼のあったアスベストの検査費用とか囲い込み、除去及び解体の助成について、国交省のお考えをお知らせください。
○和泉政府参考人 平成十七年度補正予算及び十八年度予算案におきまして、建築物における吹きつけアスベストの検査、除去等の費用につきまして、日本政策投資銀行等による低利融資制度の創設を盛り込むとともに、多数の者が利用する建築物について、既存の補助制度を拡充しまして、アスベストの検査、除去等の費用について補助できるようにしたところでございます。さらに、住宅につきましては、十七年度に新たに創設した地域住宅交付金の活用が考えられます。
地方公共団体とも連携して積極的に支援するとともに、これらの支援措置について幅広く周知してまいりたいと考えております。
○とかしき委員 では最後に、被害の拡大防止についてお伺いいたします。
大阪府では、アスベスト除去を円滑にするため、中小企業金融公庫等の低金利融資制度を創設することになりました。しかし、実態を調査いたしましたところ、中小零細企業が利用する場合、担保不足で利用が困難になりやすいと判明いたしました。そこで、弾力的な運用制度が必要ですが、自治体側にも財源がなく、苦しい状況に追い込められています。
政府として、中小零細企業へのサポートをいかがお考えになっているのでしょうか。経産省の方、お答えください。
○深野政府参考人 お答えいたします。
融資制度の関係でございますけれども、中小企業が建築物等からのアスベスト除去を円滑に行うことを支援するため、現在、中小企業金融公庫及び国民生活金融公庫に低利融資制度を創設することを進めて、準備をしております。
また、御指摘の無担保の場合でございますけれども、通常、こういったところから無担保でお金を借ります場合には上乗せ金利がございます。しかしながら、今回、無担保の融資を円滑に関係の事業者の方が受けられますように、本年度の補正予算におきまして所要の出資金を計上いたしまして、上乗せ金利なしで融資が受けられるように、今そういう措置の準備をしております。
○とかしき委員 よろしくお願いいたします。
では、海外ではドライヤーを頻度高く使っていた美容師が中皮腫になったとの報告もあります。私の地元の自治体では、市民からの要請により、アスベスト含有家庭用品のドライヤーやこたつなど六十品目を昨年の十一月より回収、保管しております。ところが、その処分に大変困っております。
このような自治体が回収したアスベストを含んだ家庭用品は、一般廃棄物でも産業廃棄物として受け入れ処分をしていただけることはできないのか、環境省の方、お答えください。
○由田政府参考人 お答えします。
アスベストを含有する家庭用品が廃棄される場合にも、通常の家庭用品が廃棄される場合と同様に、市町村が処理を行うことになるわけでありますが、その処理の工程で、万一にもアスベストが飛び散ることのないように対応する必要があるわけであります。
このため、市町村に対しまして、製品に関する情報につきまして提供いたしておりますが、これとともに、当面の対応としまして、飛散防止に留意して、他のゴミと区別して排出してもらい、破損しないように回収すること、あるいは、できるだけ破砕せず、散水や速やかな覆土により最終処分を行うよう、また、保管する場合には他の廃棄物と区別がつくようにすることにつきまして、昨年来指導をいたしているところであります。
また、恒久的な対応といたしまして、より安全な処理方法、システムにつきまして、処理施設におけますアスベストの挙動調査、分析を行いまして、専門家の意見を聞きながら、年度内にも考え方を取りまとめまして、市町村に対して提示したいと考えております。
こうした調査検討の結果、廃棄物処理施設の改造などが必要となった場合には、昨年、改革、創設させていただきました循環型社会形成推進交付金によりまして、しっかりと後押しをさせていただきまして、国と地方が一体となってアスベストが含有する家庭用品の処理を進めてまいりたいと考えております。
このようなアスベストを含む家庭用品の廃棄物につきましては、アスベスト含有スレート製品などの廃建材とは異なりまして、アスベストの含有率が低いということから、市町村の処理施設での対応が中心になるものと考えておりますが、家庭用品の市町村による破砕残渣などが、今回提案させていただいております法案の無害化処理の特例制度に基づきまして、一般廃棄物及び産業廃棄物につきまして認定された産業廃棄物処理業者に委託処理されることは可能だというふうに考えております。
また、都道府県知事から一般廃棄物と産業廃棄物の処理施設の設置許可を受けた無害化処理施設を有する優良な産業廃棄物処理業者に市町村が委託処理することも十分可能であります。
○とかしき委員 では、一般環境におけるアスベスト濃度の環境基準はなぜないのでしょうか。住民の不安解消のため、一般環境におけるアスベストの濃度の調査を、これからアスベストが飛散する可能性の高い地域で継続的に実施していくことは難しいのでしょうか。環境省の方、お答えください。
○竹本政府参考人 現在、アスベストにつきまして環境基準はないわけでございますが、一九八六年に公表されましたWHOの環境保健クライテリアなどを参照いたしまして、健康影響の面も検討した上で、大気汚染防止法に基づきまして、工場、事業場の敷地境界基準値を一リッター当たり十本と定めておるところでございます。
アスベストは、その発生源からの距離に応じまして急速に濃度が減衰するということが知られておりまして、主として、発生源直近で高濃度の汚染が生じる物質でございます。そのために、一般環境における基準を定めるよりも、敷地境界における基準を設定いたしまして、発生源において重点的な対策を講ずる方が、一般環境での健康影響を防止する観点からも、より効果的と考えたところでございます。
また、環境省が実施しております大気環境モニタリングの結果によりますれば、アスベストの環境濃度は当該基準に比べましても極めて低い結果となっておりまして、この結果も踏まえまして、現時点におきましては環境基準を設定する必要はないと考えておるところでございます。
また、モニタリングにつきましては、委員御指摘のとおり、国民の不安解消のため大変重要と私ども考えておりまして、今後とも、昨年秋より緊急環境濃度モニタリング調査というのをやっておりますが、これを継続して、アスベストの飛散の懸念される建築物の解体現場などを中心にこれからも実施をしてまいりたいと思っております。
○とかしき委員 次は、立入検査についてお伺いいたします。
大気汚染防止法で、除去作業前の養生が終了した時点で立入検査が入りますけれども、労働基準監督署は除去作業中が基準の原則として、現場は、立ち入る時期が変わっているということで、大変混乱しているようです。
立ち入りの場合はどちらが適用になるのでしょうか。立入検査の都道府県と市区町村の連携をどのようにとっていらっしゃるつもりなのか。そして、今後、自治体間をつなぐような連絡会議のようなものを持たせる予定はないのでしょうか。環境省の方、お答えください。
○竹下大臣政務官 お答えをいたします。
対策を確実に実施していくためには、自治体と国あるいは自治体と国の機関との連携、さらには自治体内部の部局間の連携というのは非常に大切であると考えております。
このうち、自治体と国の機関との連携につきましては、昨年夏に環境省から関係自治体に通知を発出いたしまして、労働基準監督署と共同で立入検査を実施するなど、連携して規制の徹底を図るよう依頼をしたところでございます。
また、自治体内部の部局間の連携につきましては、昨年九月に取りまとめられました政府の当面の対策を踏まえて、自治体の関係部局間におきまして、石綿の使用実態調査結果などの情報の共有化が図られるよう、国においても関係省庁間で連携を強化しようということにいたしております。
さらに、神奈川県などでは、国の地方支分部局、県及び関係市が協定を結びまして、情報の相互提供や合同の立入検査などを進めております。
環境省といたしましても、地方自治体などが参加して開く会などの場で、こうした先進的な取り組みを他の自治体に紹介することなどによりまして、地域における石綿対策の確実な実施を図ってまいりたい、こう考えております。
○とかしき委員 御答弁ありがとうございました。
アスベストの問題は、政府の対応のおくれが今までこの問題を大きくして、拡大してしまった責任は否めないわけです。それを是正する意味でも早急にこの法案の成立を望みますけれども、さらに、今御答弁いただきましたように、運用の面においても、現場で混乱が生じないように、そして、隠れた被害者を救済できるように、連携のとりやすい体制づくりをぜひ配慮していただきたいと思います。
そこで、最後に環境大臣にお伺いいたします。
今回の法整備を含む対応策でアスベストへの対応は十分とお考えになっていますでしょうか。今後、事態の推移を見ながら、必要とあればさらに補充していく姿勢が大切と考えておりますが、環境大臣の決意をお聞かせください。
○小池国務大臣 御指摘のとおり、この新法、救済策につきまして、スピード感ということも大変重要であるということで、昨年の七月以降に関係閣僚会合などを随時開催いたしました。そして今回の新法を取りまとめをしてきたところでございます。さらに、昨年十二月には、このアスベスト問題に係る総合対策を、その結果として取りまとめることができました。今回、十七年度の補正予算案、そして十八年度の予算案などにおいて必要な措置を講じて、あわせて、法的整備が必要な対策について、今回のこの二法案を国会に提出して、御審議をいただいているところでございます。
今後とも、関係省庁間で密接な連携を図る、情報を共有するなどといった形で連携を図りながら、これら二法案の着実な施行を初めとして、総合的な石綿対策の実施に全力を尽くしてまいりたいと考えております。また、初めての法律でございますので、しっかりと進捗状況を見てまいりたいと考えております。
○とかしき委員 ありがとうございました。